Rokid Max に手を出した

ゲームや動画用にメガネ型ディスプレイが欲しかったので、Rokid Max と、それに接続して Android TV として利用できる Rokid Station を購入しました。
6 m 先に 215 インチ相当の画面と謳われていますが、個人的にはデスクに24インチ相当のディスプレイを置いたサイズ感。それでも、それをいつでもどこでも、どのような体勢でも利用できるのは便利です。

Rokid Max | XR対応製品 | 製品 | NTTドコモ

細かい仕様などや数あるメガネ型ディスプレイから Rokid Max を選んだ理由は後回しにして、先ずはファーストインプレッションから。

動画を見るのに最適でゲームにも悪くはない

画面は明るく、屋外でも使えなくはないくらいです。使うことはないと思いますが。
部屋の中なら輝度の高さもあって、はっきりを見えます。また、専用のシェードを装着すれば黒い背景に画面を映せるので、明るい場所でもくっきり見えるようになります。個人的には、あまり必要性を感じませんが。


用途としては、動画を見るのが最も向いてると感じました。簡単な作業をしながら動画を見れるのもいい感じ。
ゲームも大迫力で、3D ゲームならかなりの奥行きを感じ、立体感があります。「アーマードコア6」は大迫力でした。「ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム」への没入感が高いです。

ちなみに、メガネの左右に別々の映像を投影できるので 3D コンテンツにも対応しています。ただ、遠くに見えるディスプレイに 3D コンテンツが見える感じ。3D コンテンツを楽しむなら MetaQuest などの VR ゴーグルの方が迫力や没入感が明らかに上です。

テキストには不向き

一方で、テキストや漫画を読むのには向いていません。Rokid Max に投影された画面の端が見づらいためです。画面いっぱいに漫画などを映しても端っこが読みづらい。特に、紙面が元の漫画は画面端へ誘導し、ページをめくらせるコマ割りになっているのでさらに辛い。

画面中央付近でテキスト入力などの作業なら、できなくはないって感じ。

本レビューは、PC やら iPad Air などの機器に Rokid Max をつなげて書いていますが、文章全体のチェックをするときに目線がとっちらかります。

画面端を見るのがつらい

画面端が見えづらい要因としては、まず画面端が歪んで見えてしまうこと。これは視力によるところが大きいです。両目とも 1.5 ならほぼ歪まないと思います。
画面端を見るの辛い主因は、頭動かしても Rokid Max の画面が追随するためです。

人間は大きなモニターを見る場合、注目したいポイントへ目線と共に頭も動かしているはずです。Rokid Max は頭を動かすと画面も一緒についてくるため、目線を動かすことでしか画面端を視認できません。

これが結構な負担になります。PC のアプリケーションの多くは、画面上部にメニューが並んでいますが、そこを見るのがつらい。スマートフォンだと、これが下になりますが、どちらにせよ端っこです。

すみっこが見えづらいので、画面端に情報がまとめられたゲームは向いてないかもしれません。
アーマードコア6だと、画面端にある敵や自機の体力、残段数などが確かに確認しづらいです。これは、迫力とトレードオフな気もしますが。
スプラトゥーンだと、目線が常に中央のエイムに固定されるため、エイムはしやすく感じました。私は、通常の画面だと頭が動いてしまうようでエイムが安定しないんですよね……。ただし、中央に強制的にフォーカスされるため周囲がとても見えづらくなり、索敵能力が下がります。スプラトゥーンにしてもアーマードコアにしても一長一短ですね。

画面が常に目に前にあるので、目線を外すこともできません。その点でも、動画コンテンツを全集中してみるのに適しています。ただ、人によっては酔いそうな挙動なのです。

音質は悪くはないが音圧が弱い

音はメガネのツルから出ますが、音圧が弱いです。コンテンツや接続する機器や周囲の環境にもよりますが音が小さく聞こえづらい場面もあります。
開放型としては音質も悪くはないと思いますが、そもそもの音圧が低いので気になるならワイヤレスイヤホンの利用を推奨します。
開放型なので、音を大きくすると音漏れがより激しくなるので仕方ないでしょうが。

接続に難あり

Rokid Max は要するに DP Alt モードに対応した外付けディスプレイです。そのため、DP Alt モードに対応した機器がないとなにもできません。

最も手軽なのは DP Alt モードに対応したスマートフォンタブレットに接続すること。DP Alt モード に対応した Android なら専用アプリをインストールすれば 3DoF モードも使えるようですが,私は Pixel Fold なので残念ながら非対応。

Switch に接続するには、Switch 本体に電力を供給しながら映像出力できるアダプターが必要です。Rokid Hub があれば可能なのですが、在庫がないようで手に入りません。

DP Alt モードに対応したノート PC なら接続するだけで外部モニターとして利用可能。そうでない場合は、Rokid Max に給電しながら HDMI などの映像入力を USB−C 経由で出力できるアダプターが必要です。これがあまりない。USB−C ハブに給電しながら HDMI 出力できるのですが、HDMI の入力には対応してないんですよね。
私は Amazon で給電可能な HDMI to USB-C コネクタを購入しました。めでたくデスクトップ PC の映像を Rokid Max に出力できました。

良くも悪くも Android TV な Rokid Station

DP Alt モードに対応した機器を持っていないなら Rokid Station は必須でしょう。
Rokid Station を Rokid Max に接続すれば Android TV として使用できます。これなら、Chromecast で スマートフォンなどのディスプレイを投影できます。
ただ、Chromecast は無線接続なため遅延が大きく、ゲームをプレイするのはまず無理だと思います。Bluetooth キーボードをスマホに接続して、テキスト入力を試してみましたが、ポインターが遅延するので、まじ無理ぃって感じです。

Rokid Station の Android TV は、なぜか Netflix に非対応ですが、それを除けば大手の映像サブスクには対応しています。私は、YouTubeAmazon Prime くらいしか利用しないので困りません。
ただ、Android TV なので Amazon Prime のビデオをダウンロードできないのが残念。Google TV ならダウンロードできるのですが……。

Rokid Station の操作性は悪くはないです。動画視聴なら十分な操作性。ただ、所詮は Android TV なのでブラウジングには不向きです。Bluetooth でキーボードやマウスを接続すれば操作性も改善できますが、まともなブラウザとして Sleipnir しかありません。

動画コンテンツを楽しむにも、ゲームをするにも、仕事をするにも、DP Alt モード対応のスマートフォンの方が気軽でいいですね。Galaxy Z Fold 2 なら可能だったのですが、でも Z Fold シリーズの画面比率は嫌なんですよ……。
そもそも、テキストくらいなら Pixel Fold で編集した方が手軽です。

ケーブルの取り回しが面倒

ケーブルがとても邪魔に感じます。例えば、iPadApple Pencil をくっつけて立てかける場合、USB ポートは右にあります。Rokid Max は左のツルの末端にケーブルを挿すポートがあるので、どこかでクロスしてしまい煩わしい。
無線で接続できれば……と思いますが、そうするとメガネ型ディスプレイ本体が重くなりますし、遅延も厳しいでしょう。
それでも、USB−C ケーブル一本で繋がるだけマシではあります。

問題は Rokid Station です。コネクタ形状が USB−C ではなく専用ケーブルが必要なため、わざわざ付け替える必要があります。Rokid Station の充電用コネクタが USB−C なため混同を避けるためなのかは不明ですが面倒です。

視度調整のある Rokid Max

そろそろ、数あるメガネ型ディスプレイから Rokid Max を選んだ理由を述べていきましょう。

メガネ型ディスプレイとして代表的なのは XREAL Air、VITURE One、Rokid Max の3つでしょう。それぞれ微妙に仕様が異なっており、その違いは XREAL Air・VITURE One・Rokid Max。サングラス型ディスプレイ3種を「外付け機器」視点で比べる(西田宗千佳) | テクノエッジ TechnoEdge によくまとめられています。

XREAL Air は手軽に利用できそうですが、視度調整がありません。また、Pixel シリーズは DP Alt モードに対応していないので、XREAL Air だと使い勝手が悪そう。
視度調整のある VITURE One はミラーキャストに対応してますが、Pixel シリーズは非対応。ネックバンドも重そうです。そうすると Chromecast が使える Rokid Station との組合せになるわけです。
私は、近視で Pixel Fold を所有しているので視度調整がある Rokid Max と Chromecast が使える Rokid Station にしました。

なのですが、視度調整してもボヤけて見えます……。
私の視力は左右が大体 +6.0 なので、Rokid Max の視度調整にギリギリ収まっているはず。なのですが、残念ながらボヤッと見ます。乱視が入っているのが大きそう。
動画を見る分にはそこまで気になりませんが、映画の字幕など文字を読むのは厳しい感じ。
仮に乱視がなくても視度調整を利用する場合は、画面端などは歪みが大きいので文字を読むのは辛いでしょう。

メガネ on メガネも行ける!

残念に思って試しに「メガネ on メガネ」してみると意外と悪くない。メガネ on メガネでも、微妙にピントが合ってませんでしたが、それも視度調整で対応可能。少々重いですが、MetaQuest 等に比べると全然軽いです。
Oculus Quest を所持しており、バーチャルデスクトップの構築を目指しましたが、本体の重さと解像度の足りなさがネックでした。映画を見たりゲームをする分には大画面を楽しめますが、テキストの編集などをするには圧倒的に解像度が足りない。そして、周囲が見えないのも結構困る。MetaQuest でどうなっているかは分かりませんが、MR や AR として使うにはカメラの解像度が足りなさそうです。そして、やはり重い。

ケーブルの取り回しの面倒くささはあるものの、Rokid Max なら気軽に外部ディスプレイを持ち出せるのがいい感じです。

ファーストインプレッションのまとめ

長所と短所をまとめるつ、向いてるコンテンツとそうでないものを上げておきます。

  • 長所
    • DP Alt モード対応機器にケーブル一本で接続できる。
    • 高輝度で解像度も高く、120 Hz のリフレッシュレートに対応。
    • 視度調整で +6.0 まで対応。
    • Rokid Station で Android TV を利用できる。
  • 短所
    • DP Alt モードに対応してない機器の接続に難あり。
    • 音圧が低く、聞き取りづらいケースも。
    • ケーブルの取り回しが煩雑。
    • 画面端を見たり、ピントを合わせるのが難しいので作業には不向き。
    • Rokid Max も Station も本体が結構熱くなる。
  • 一長一短なところ
    • VR ゴーグルに比べると軽いがメガネとしては重い。普段メガネを利用してない人だと、メガネが下がってくるのが気になるかも。
    • 一応 3D コンテンツも投影可能だが、迫力はない。
    • 近視や乱視がひどい場合は、コンタクトやインサートレンズの併用か、メガネ on メガネ推奨。ただし、インサートレンズは在庫なし。
  • 向いてるコンテンツ
    • 動画
    • ゲーム
  • 不向きなコンテンツ
    • テキストや漫画の閲覧
  • できなくはないが、おすすめはしない
    • テキスト編集

本体の不満点ではないのですが、付属のケースに Rokid Station とそのケーブルを2本入れると結構ギュウギュウになります。その点でも、Rokid Station のケーブルを独自規格にして欲しくなかった。シェードを入れなければ余裕はあるんですが。

約7万円の価値はあるか

Rokid Max に限らず、メガネ型ディスプレイを買う価値はあるでしょうか。
メガネ型ディスプレイがニッチ過ぎるので、そもそもレビューが少ないです。

XREAL Air は出回ってしばらく経つので、メガネ型ディスプレイの中では、そこそこレビューを見ますが、VITURE One、Rokid Max は情報が全然ない。Rokid Max は日本でもクラファンをやっていたそうですが、出資者数が 150 名なので、情報が出回るはずもなく。YouTuber でのレビューもありますが、この手のガジェットは動画で解説されても全然伝わってこない。公式の情報が少なすぎて細かい仕様や使い勝手が全然わからない。
docomo から発売されたことで、ようやく Rokid Max のレビューが増えてきたかなぁ?という印象。

この手のグラス型ディスプレイの使い勝手は、実際に手に入れて評価している 電気メガネ | 8796.jp管理日誌 が最も参考になりますが、そんな方ですら以下のような評価。

XREAL Air 2シリーズ、VITURE One、Rokid Maxが出そろって「なんか面白そうだからどれか買おう」とか思ってる人に全部持ってるぼくができるアドバイス

やめとけ

以上です。
https://twitter.com/8796n/status/1735556919669260559

仰るとおり、価格面を考えたらもっとまともなディスプレイを購入できます。方向性は少し違いますが、Meta Quest 3 が買える価格帯。
メガネ型グラスは AR を売りにしてますが、メガネのレンズ部分がディスプレイになっているだけで、全然 AR 要素はありません。まだ Meta Quest 3 の方が AR を楽しめるでしょう。最近発表された、Rokid Max Pro は AR として結構いい線を行ってるみたいですが、いつ手に入るのやら。Rokid Max がようやく日本で手に入りやすくなった段階なので、まだまだ先になりそう。

工夫次第で面白そうな使い方ができそう

メガネ on メガネの利用ですが、手元は見えるので Rokid Max でコンテンツを楽しみながらスマホの画面もチラ見できます。手元が中心の作業なら、ながら視聴も可能。例えば、洗濯物をたたみながら。
また、輝度を低くすれば画像が透けて見えるので、PC などのディスプレイに映像を映しながら作業をするのもわりかしいい感じです。

所有している機器次第で使い勝手がかなり変わりそう。私が所有している機器で面白うな使い方ができそうなのは、ゲーミング UMPC である AOKZOE A1。上下に USB‐C ポートがあるので、上部で充電しつつ、下部に Rokid Max を接続してゲームを楽しめます。



持ち運び用の LOOX WL1 はタブレット型の PC なので、結構自由な使い方ができそうで楽しみです。出張先で使ってみますかね。

FMV LOOX WL1 は自由だ - 最終防衛ライン3

差し当たって、iPad Air で本レビューを完成させましたが、これはこれでありかもしれませんね。