肉と引用とネタバレ

キン肉マンの「ネタバレ」について、作者の一人出る嶋田氏が苦言を呈したのに端を発し、週刊プレイボーイが法的措置をちらつかせる(かのような)声明をだし、物議を醸しています。月曜日も、実感として感想ツイートが減ったように思います。
本稿では、Twitterで漫画のコマを引用する場合の是非を実例をあげつつ、週刊プレイボーイ編集部の声明について考えていきます。先ずは、著作権法上の「引用」について述べます。

著作権法上の「引用」

一般的な「引用」と著作権法上の「引用」は意味が異なります。一般的な「引用」は他人の言説などを自分の表現の中で用いることですが、著作権法上の「引用」は、一定の条件を満たした上で権利者の著作物を無断で利用できる権利を意味します。今回は、著作権法上の「引用」が問題となるので、先ずはそれから説明します。著作権法上の「引用」については、同法第32条に明記されています。

32条

  1. 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
  2. は本稿とは関係ないので省略

第48条に、引用する際は出典を明記すること、基本的には著作者名を明らかにすることが明記されています。第32条のやっかいなところは引用は可能だけども、「公正な慣行に合致するもの」かつ「引用の目的上正当な範囲内で行なわれるもの」の両方が必須な点。この条件は、条文には明記されていませんが、文化庁には以下のように記されています

ア 既に公表されている著作物であること
イ 「公正な慣行」に合致すること
ウ 報道、批評、研究などのための「正当な範囲内」であること
エ 引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であること
オ カギ括弧などにより「引用部分」が明確になっていること
カ 引用を行う「必然性」があること
キ 「出所の明示」が必要(コピー以外はその慣行があるとき)

漫画の引用

漫画の引用に関する考え方として、漫画批評をやっている金田淳子さんによる マンガの引用と著作権について書いてみる|金田淳子|note を紹介します。金田淳子さんは法律の専門家ではありませんが、自身の批評と交えて考えを述べておられるので、分かりやすいかと思います。

「引用」においては、「公正な慣行」がやっかいで、漫画においては判例などが少ないため専門家でも意見の分かれる所ではありますが、
「脱ゴーマニズム宣言事件」の判例からすると、絵が必要ならば引用は可能であるとすると考えて問題ないでしょう。

Twitterで画像利用

イラストをまとめサイトなどに無断転載された事例では、まとめサイト側に賠償が命じられる判決があります。賠償が命じられたまとめさいとは 該当のツイートを、TwitterAPI 等を利用せずにスクリーンショットで掲載していたため、妥当な判決でしょう。

一方で、最近話題になったのが、RTでのトリミングが著作人格権侵害となった事例。無断転載された画像をツイートしたユーザーが著作権侵害である点は当然でしょう。ただ、裁判所がRTした人も著作人格権侵害したとして、メールアドレスの開示を認めたのはやや解せません。
無断転載されたツイートをRTした際に画像がトリミングされるため、それが著作人格権侵害にあたるのは理解はできます。これに関しては Twitter の仕様に問題があると考えます。ユーザーにトリミング域を調整できる選択肢を与えるべきです。侵害した主体がRTしたユーザーにあるのも、その通りだとは思うのですが、その責任は Twitter の仕様にもあるわけで、RTしたユーザーのメールアドレスの開示を認めるのはやり過ぎに思えます。

もちろん、RTは転載行為のため、RTした内容に問題があればRTしたユーザーにも責任があるでしょう。RTでも名誉毀損になるとの判決も出ています。
ただし、RTする際に投稿された内容が、無断転載されたものかまでをユーザーが判断する必要がある、あるいはトリミングされた結果、著作者名が消えてしまったことまで確認する必要があるのかは、やや疑問に思います。

本題の肉

今回の件に関しては、Web連載をずっと追って来たファンにしてみればハシゴを外された感じではないでしょうか。

「次峰レオパルドン行きます!」のコマを投稿するのは、引用の範疇にはあたらないでしょう。嶋田氏も当初はこの転載を問題視していたように思いますし、多くのファンもその点に異論は無いと考えていたんじゃないでしょうか。

Web連載を生き抜いたキン肉マンは旧キャラを出して盛り上がるのを続けていました。その感想を述べる際に、旧作のコマなどが掲載されることもありました。これに関しては微妙ではありますが、話数などを明示して感想を述べれば「引用」に当たる可能性はあるかもしれません。厳密には著作者名の「ゆでたまご」も明記するべきではありますし、140文字で引用の主従などの条件を満たさない可能性もありますが、議論の残るところです。

議論が残るところであるはずなのに、週刊プレイボーイの編集部が以下のようにぶちかましてきました。

悪質な著作権侵害、ネタバレ行為(文章によるものを含みます)に対しては、発信者情報開示請求をはじめ、刑事告訴、損害賠償請求などの法的手段を講じることもありますので、ご注意ください。

「ネタバレ行為」と非常に曖昧な言葉を使って、法的手段を講じる可能性を訴えるのは、企業の声明として考えられません。さらに、少年ジャンプ+の編集長が雑なツイートをして事態をややこしくしています。

https://twitter.com/HosonoShuhei/status/1303892105190756354

先のRTの例をもちだせば Twitter でマンガのコマを掲載すれば先ず間違いなくトリミングされるため、それをもって著作人格権侵害と攻めるのも可能かもしれません。

ネタバレとは

「ネタバレ」とはなんなのか。「ネタバレ」とは非常に曖昧で。Twitterで何度も俎上になりますが、言葉の意味は曖昧なままです。
そもそも個人によって許容できる「ネタバレ」の幅も異なります。私自身は「ネタバレ」をされても気にはしませんが、嫌う人も多いので公開されて直ぐの映画や、発売直後のゲームの内容はあまりツイートしません。漫画は、コミックスが発売されたら解禁みたいな空気があります。映画だと、地上波公開されたら大体的にOKみたいな了解がある気がします。
映画版ドラゴンクエストである「ユア・ストーリー」は見に行く気はありませんでしたが、「ネタバレ」で見に行く気になりました。そもそも、作品を紹介する際に完全なる「ネタバレ」を避けるのは困難です。余程の信頼関係のある人から紹介されない限り「ネタバレ」なしで作品を体験しようとは思わないはずです。ただ、作品紹介での「ネタバレ」は往々にして「あらすじ」と表現した方が適切です。

今回の件で言えば、「次峰レオパルドン行きます!」はネタバレでしょう。ただ、ミステリーの犯人を述べるほどの悪いこととは思えませんし、法的手段を講じるほどの悪質なネタバレにはないように思います。
「漫画のネタバレ感想で訴訟される」は誤解 Webニュース記者が見た『キン肉マン』騒動 (1/2) - ねとらぼ なる記事も上がっており、内容には概ね賛同しますが、所詮はねとらぼの見解に過ぎまん。本件を納めるには集英社の見解が必要でしょう。

「ネタバレ」とは異なる「バレ」として、「早バレ」というのがあります。発売日以前に雑誌などを手に入れて、その内容を公開する行為を指します。「早バレ」に関しては、「ワンピース」ネタバレサイトの運営者を逮捕 広告収入3億円以上か - ITmedia NEWS のように逮捕者も出ています。内容をバラすだけならまだしも、広告収入を得ているのが非常に悪質です。
「あらすじ」を文章のみで書くのも翻案権に関わるので著作権侵害になり得ます。ただし、Twitter の140文字でどこまで「あらすじ」を語れるかは微妙なところですが。

週刊プレイボーイ編集部の見解をすごく好意的に解釈すれば、このような悪質な「バレ」に対して、法的措置を構図得ると述べているのかもしれません。しかし、その見解はまったく読者やファンの方向を向いていません。嶋田氏とファンとの問題だったはずで、悪徳業者との問題ではなかったはずです。読者に向けた声明の中で、法的措置をちらつかせる以上は、読者に向けた内容としか解釈できず、法的措置される対象は読者であると受け取るのが自然でしょう。すくなくとも、編集部として述べるべき文章ではありません。

最後に

Twitterでの漫画のコマの利用が著作権法上の「引用」にあたるかはケースバイケースでしょう。例えば、漫画コマでリプライし合うのは「引用」には当たらないでしょうが、多くのケースでは著作権者に見つかっていないでしょうし、見つかっても訴えるほどではないと見逃されているのでしょう。日本の著作権法フェアユースの規程はありませんが、この緩さがある意味でフェアユース的に機能しています。

Twitterで感想を述べる際のコマ利用も、引用の要件を厳密に満たしているとは限りませんが、この辺は実際の判例がないので意見の分かれる所です。興味本位では、嶋田氏が法的措置をとり判例を残して欲しいですね。
現在の情況は、嶋田氏や週刊プレイボーイが述べる「ネタバレ」の範囲が曖昧なため、感想ツイートが萎縮されてしまった状態です。あるいは、沈黙は抗議の意味もあるように感じます。
本件を納める納めないに拘わらず、集英社の広報なり、法務なりが何かしら見解を述べる必要があると考えます。

Nature Remo が Google Home の Direct Actions に対応していた件

有料の IFTTT Pro がスタートするのにともない、無料アカウントで利用できるアプレットが3つまでとなり、事実上の有料化になりました。
Google の Home mini からテレビを操作するために Nature Remo と IFTTT を利用していました。IFTTT を使わない場合は、「オーケー、グーグル。 ネイチャーリモを使ってテレビをつけて」と毎度毎度「ネイチャーリモを使って」という必要があり面倒。Google Home でルーティンを設定すれば「ネイチャーリモを使って」を省くことは可能ですが、8チャンネルをスマホで入力するのが面倒なので、PCからアプレットを設定できるIFTTTを使っていました。

チャンネル毎にアプレットを登録しており、無料アカウントの3つでは運用できないので、ルーティンの設定をしようと思っていたら、今年の7月に Nature Remo が Google の Direct Actions に対応していたようです。つまり、「ネイチャーリモを使って」を省いて、「オーケー、グーグル。 テレビをつけて」だけで操作可能になっていました。チャンネルや音量操作にも対応しているので、事実上 IFTTT が不要になりました。IFTTT をテレビの操作だけに使ってる人は少ないとは思いますが、IFTTT を Google Home や Alexa と連携している場合は、IFTTT を必要としないケースがあるかもしれません。

ドコモ口座の不正送金、9月10日の記者会見でわかったこと

9月10日16時30分より、ドコモ口座を利用した不正送金に関する記者会見が行わ、新たな事実が明らかになった。「ドコモ口座」を利用した不正送金が気になりすぎて自分でまとめてみた - 最終防衛ライン3 に追記する形で投稿しようと考えたが煩雑になるため、新たにエントリーを投稿する。

記者会見は YouTube などにライブ映像のアーカイブが残されている。

【LIVE】不正出金被害 NTTドコモ緊急会見

先ず、ドコモ口座の運用に問題がったことを認めた。10日正午の時点での被害額は1,800万円で、件数66件。11行にて不正送金が確認されている。ただし、被害にあった銀行については会見で個別に公表しなとした。「銀行口座番号、暗証番号、生年月日」(場合によっては生年月日は不要)のみでドコモ口座と連携できる銀行での被害が報告されている。
補償については銀行と協議して進める。この点は、ニュアンスが曖昧であるが、そもそもドコモ側で正規な送金と不正送金とを区別できないため、銀行からの報告でしか動けないためであろう。補償の割合などについては言及はなかった。

ドコモは、不正入手した銀行口座番号、暗証番号、生年月日などを入手した人物が、ドコモ口座を利用して不正送金を行ったと説明。質疑応答において、不正送金に利用されたアカウントに共通点はないと述べていたが、IPアドレスなどは分析中とも述べており、ドコモは全容を把握していないと推測される。会見によると、ドコモ側から不正送金を確認する術はなく、ユーザーが被害を報告し、銀行で確認する必要があるとのことで、この点から現時点で十分な分析は行われていないことが伺える。

8月末の被害が確認さている。この点は、報道になく驚きであった。一方で、質疑応答ではその件に触れる記者がいなかった。一件あたりの被害額は、月当たりのチャージ金額の限度が30万円であるため、月当たりで最大30万円。8月末から被害にあっている場合は、30万円×2=60万円となり、現在が確認されている被害額では最大となる。ドコモは、d払いで換金性の高い商品を購入していることを確認している。

ドコモはドコモ口座の新規受付を停止しているが、チャージについては停止していない。*1不正でないユーザーの取引の利便性を損ねるとの回答であったが、ドコモは不正送金に利用されるアカウントを特定できないため、そしてそれを今回の会見で述べてしまっているため、安全面を考えればチャージも停止すべきであろう。既に不正送金のため銀行口座に紐付けられてしまったアカウントが眠っている可能性も考えられる。また、8月末からの被害が確認されているが、それ以前から不正送金されている可能性もある。ドコモ口座のユーザーでなくても、またドコモのユーザーでなくても被害にあうため、被害の発覚が遅れた可能性も考えられる。
会見では、被害額に関しては、桁が変わる、つまり億単位になることはないと述べていた。流石に億単位の被害はでないであろうが、ドコモは全容を把握しているわけではないに安易な物言いであろう。少なくとも、 7Pay と同程度の3,000万円くらいになる可能性はあるだろう。

NHKでは、顧客を増やすために手続きを簡単にしたと報道されていたが、会見を見た限り、そもそもセキュリティ面が何も考慮されていなかったように感じられた。前者の方がセキュリティ面を認識した上での顧客拡大のため悪意を感じるが、後者だと今後およびドコモ全体のセキュリティ面が非常に不安である。

dアカウントなどは、ドコモの携帯電話やスマートフォンを利用するドコモのユーザーのみを対象にしていたが、より多くのユーザーにも利用できるようキャリアフリーにした経緯がある。その際に、ドコモの電話番号と紐付けられていたサービスを、メールアドレスのみで利用できるようにした。昨年5月のりそな銀行における不正送金の際は、ドコモ口座はキャリアフリーではなかったが、それにもかかわらずドコモ口座もキャリアフリーと顧客を広げる方に舵を切っている。ちなみに、不正送金以降にりそな銀行とドコモ口座は提携していないが、提携再開に向け現在も協議中とのことであった。
ドコモは、dアカウントなどをキャリアフリーとする戦略の上で、ドコモ口座などが踏み台になる、つまり種々のサービスを不正に利用することを目的としたアカウント取得を想定していなかったと述べた。つまり、そもそも今回のような事例を想定していなかったのだろう。今後は、サービスによってドコモ側が本人確認など行うなど、仕様を変更する予定であると述べていた。

ドコモは、過去に銀行側からドコモ口座の名義と銀行口座の名義が一致しない報告を受けて、システム改修などを行っていることを明らかにした。ドコモの認識としては、銀行口座を持っている=本人、との認識で本人確認を銀行側に依存していたようだ。ドコモは、銀行の本人認証(Web口座振替受付サービスの運用方法)については、銀行側のポリシーの問題で関知しないとのスタンス。つまり、本人認証の甘い銀行とは提携しないなどの判断はしない方針のように感じられた。

会見において、暗証番号などを漏らさないようにと述べていた。今回の事例がリバースブルートだったかは不明である。ドコモはフィッシングなど、種々の詐欺により入手された暗証番号などを利用したと想定しるようだった。ドコモを騙った詐欺が多く、それに対する業務が多いため、フィッシングなどを想定するのであろうが、事例を見るにドコモ口座はリバースブルートが可能そうなシステムである。暗証番号を漏らさないことは重要であるが、そもそも経営陣がリバースブルートなどを理解しておらず、セキュリティ面が非常に不安になる会見であった。

*1:不正利用のあった銀行が個別にドコモ口座からのチャージを停止するなどの対応をしている

「ドコモ口座」を利用した不正送金が気になりすぎて自分でまとめてみた

「ドコモ口座」+「Web口座振替受付サービス」の悪用

「ドコモ口座」を利用した不正送金が気になりすぎて自分でまとめてみた。
簡単な時系列から「Web口座振替受付サービス」の実体、「ドコモ口座」の問題点などを述べていきたい。

被害情況については ドコモ口座を悪用した不正送金についてまとめてみた - piyolog が詳しい。
手法は不明であるが、『ドコモ口座』の不正利用、誰が被害に遭う?→『ドコモ口座』を使ってない人(篠原修司) - 個人 - Yahoo!ニュース「ドコモ口座」で相次ぐ不正出金、なぜ地銀だけが狙われた? 専門家の見解は - ITmedia NEWS にあるように、メールアドレスのみで登録できる「ドコモ口座」と、口座番号とキャッシュカードの暗証番号のみで「Web口座振替受付サービス」を利用できる銀行を紐付けて不正送金したのだろうと推測される。
暗証番号や口座番号が不正に取得された可能性も考えられるが、口座番号のみを不正ではない方法で大量に入手することも可能である。大量に開設した「ドコモ口座」から、統計的によく利用される暗証番号でアタックをしかけた可能性もある。誕生日も完全なる秘匿情報ではないため、誕生日やその逆順の暗証番号を利用した可能性もあるだろう。

『ドコモ口座』の不正利用、誰が被害に遭う?→『ドコモ口座』を使ってない人(篠原修司) - 個人 - Yahoo!ニュース にも解説されるように、本件は「ドコモ口座」を開設していないユーザーの方が被害にあう可能性がある。また、開設していても「ドコモ口座」と連携していない銀行口座があれば、やはり被害にあう可能性がある。現在は、「Web口座振替受付サービス」を利用する約半分に当たる銀行が「ドコモ口座」の連携を停止中なため、被害の拡大は抑制されている。ただし、停止前に登録されている可能性もあるため、あまり使っていない口座の残高を確認した方がいいだろう。

簡単な時系列

9月3日にTwitterにおいて「七十七銀行」での不正送金が確認できる。

七十七銀行」は9月4日に HP 上に警告を掲載し5日から「ドコモ口座」の新規受付を停止。

9月8日に、「中国銀行」と「東邦銀行」での被害、「大垣共立銀行」で不正送金の疑いが報告される。
中国銀行」と「大垣共立銀行」は同日8日に新規受付停止。「東邦銀行」は翌9日から。

9月9日に、先の4行に加え13行および「ゆうちょ銀行」、つまり18行で「ドコモ口座」の新規受付が停止される。
18行の中の8行で不正送金が確認されている。「ゆうちょ銀行」では、今のところ不正送金は確認されていないようだ。【9月10日】「ゆうちょ銀行」「イオン銀行」でも被害が確認されている。

「Web口座振替受付サービス」のセキュリティがガバガバ

今回のインシデントは、「Web口座振替受付サービス」のセキュリティがガバガバなところに、「ドコモ口座」の開設にしやすさを悪用した輩がいたために発生したと思われる。被害情況は不明であるが、「docomo」 と 銀行を巻き込んだ事態となっているため影響としては「7Pay」よりも大きいかも知れない。
本件を受けて、「Web口座振替受付サービス」の仕組みが変更される可能性が高い。

「Web口座振替受付サービス」はかなりガバガバである。メガバンクであっても、「りそな銀行」や「ゆうちょ銀行」は「口座番号、暗証番号、生年月日」のみで利用可能である。況んや、地銀をやである。

ドコモ口座とWeb口座振替サービスについて調べてみた - メモ代わりのブログ にあるように、
ワンタイムパスワードが必須なのは「三菱UFJ銀行」と「三井住友銀行」のみ。「みずほ銀行」や、「りそな銀行」はネットバンキングを利用していなくても、口座があれば利用可能。ネットバンキングを利用しない場合、「りそな銀行」は「口座番号、暗証番号、生年月日」、「みずほ銀行」はそれに加えて口座の残高が必要なものの、赤い「三菱UFJ銀行」、緑の「三井住友銀行」と比較すると残念な仕上がりである。そもそも青色の「みずほ銀行」は、ネットバンキングもワンタイムパスワードなしでの利用が可能である。さらにワンタイムパスワードもカード式の乱数表を使用しているあたり、流石の青色「みずほ銀行」である。(乱数表はワンタイムパスワードではなく、第二暗証とのコメントを頂き削除線にて修正。)

「ゆうちょ銀行」も基本的には「口座番号、暗証番号、生年月日」であるが、収納機関によっては生年月日は必須ではないようである。「ドコモ口座」で生年月日が必要なのかは不明。

地銀では「口座番号、暗証番号、生年月日」で利用できる場合が多そうだ。「七十七銀行」や「大垣共立銀行」では「口座番号、暗証番号」のみで利用できる*1

滋賀銀行」では、「口座番号、口座名義、生年月日、暗証番号」が必要だが、口座名義はセキュリティとしては殆ど意味を成さない。

銀行口座を登録する - PayPay を見る限り、「イオン銀行」も「口座番号、暗証番号、生年月日」で「Web口座振替受付サービス」を利用できる。

地銀も含め、「みずほ銀行」、「りそな銀行」、「ゆうちょ銀行」がワンタイムパスワードが必須としないのは、顧客対応である可能性が高い。難しいパスワードを管理できない、ネットバンキングの利用ができない、ワンタイムパスワードの発行手続きができない顧客のために、簡素な方法でWeb口座振替受付サービスを利用し出来るようにいしているのだろうが、簡素の裏返しはセキュリティ的な危険である。
地銀は体力面もあるだろうし、ネットのセキュリティに対して十分に注意が払われていない可能性も考えられる。実際、ネットバンキングは利用可能でも、「七十七銀行」や「中国銀行」のように、ログインパスワードが数字4桁な場合などが見受けられる。

ちなみに、我が故郷である長崎を調べてみたら、ナンバー銀行の方の十八銀行は「口座番号、暗証番号、生年月日」で「Web口座振替受付サービス」を利用できて残念な気持ちに。さらに、ネットバンキングも暗証番号4桁でログインできる杜撰さ。ナンバー銀行でない方の親和銀行は「Web口座振替受付サービス」の不明だが、ネットバンキングは8文字以上16文字以下の半角英数であった。ふくおかフィナンシャルグループ傘下になったお陰だろうか。

「ドコモ口座」もガバガバである

「ドコモ口座」は「dアカウント」さえあれば開設可能で、個人情報を入力する必要が無い。開設後に入力可能。本人確認などは一切必要が無い。
「dアカウント」は、もともとdocomo ユーザーのみのサービスであったが、2013年から誰でも利用できるようになった。それに伴い、メールアドレスのみで取得可能となり、電話番号の入力は必須ではない。しかも、「dアカウント」はPC上から取得可能で、「ドコモ口座」もPC上から利用可能である。

多くのQR決済はスマートフォンアプリからの登録が必須のため「ドコモ口座」よりは自動取得が難しい。自動化が難しいだけであって、決してセキュリティが高いわけではない。
また、au の「じぶん銀行」は「ドコモ口座」と似たようなサービスであるが、口座開設に運転免許証などの本人確認書類が必要である。また、「au Pay」で銀行口座を利用する場合は、本人確認のため、事前にローソン銀行ATMでの確認番号の払い出しが必須となっている。

「Web口座振替受付サービス」のシステムも問題だが、「ドコモ口座」の責任も免れないだろう

キャッシュカードと暗証番号でATMを利用できるのは、キャッシュカードが物理的な認証要素として機能するからだ。口座番号事態は、秘匿情報ではないし、生年月日も完全なる秘匿情報ではない。つまり、多くの銀行において「Web口座振替受付サービス」は一つの要素のみで認証可能なサービスであったと考えられる。

「ドコモ口座」がメールアドレスのみで開設可能な点にも問題があった。さらに、「収納機関」はセキュアでない銀行と提携すべきではないだろう。セキュリティ面なのか、商売上の理由なのかは不明であるが、「LINE Pay」 や 「PayPay」 では利用できる銀行が限られている。セキュアでない「ゆうちょ銀行」や「イオン銀行」が含まれているため、商売上の理由の方が大きそうではあるが。また、利便性は落ちるものの「収納機関」が本人確認を怠るべきではない。

既に金融庁から各行に通達が回っているようである。今回を機に「Web口座振替受付サービス」の仕組みは見直されるであろうし、「ドコモ口座」も本人確認などが必須になるのではなかろうか。問題は、今回の被害がどこまで救済されるのかである。「Web口座振替受付サービス」の規約上は、暗証番号を利用されてしまっているため不正送金されたユーザーは救われない可能性がある。契約紙面上でも「ドコモ口座」には落ち度がない可能性がある。ただし、状況的に金融庁が黙っている案件ではないため、後日、各銀行やdocomo金融庁から何らかのアクションがあるであろう。
【9月10日追記】ドコモが銀行と協議し、被害を補償すると発表。(銀行と協議するとの発表で、全額補償されるかは現時点では不明)

9月9日中の追記

「ドコモ口座」開設時にショートメールでの認証を追加するようですが、そもそも本人確認をすべきでは。

銀行、docomo、そして警察までもが初動が遅い。昨年2019年5月に、「ドコモ口座」と「りそな銀行」で不正送金が発生していたのに、両者は特に対応策を取ったようには見えない。現在、「ドコモ口座」では「りそな銀行」を利用できないため、これが一応の対応策なのかもしれない。先に示したように「りそな銀行」の「Web口座振替受付サービス」を「口座番号、暗証番号、生年月日」で利用可能である。docomo は同様の事例が過去にあったにも拘わらず、今回のような後手後手の対応な上に、ドコモからのお知らせ : 一部銀行の口座情報を使用したドコモ口座の不正利用について | お知らせ | NTTドコモ において不正アクセスによるものではないとずれた発表をしているあたり、危機感なさ過ぎである。
過去の事例が生かされておらず、それを監督すべき金融庁の責任が果たされていない。

9月10日の追記

ドコモが「ドコモ口座」の新規受付を停止。
10行での被害が確認され、被害額は1000万円程度。
ドコモは銀行と協議して全額補償すると発表。全額補償を決定したわけではなく、銀行との協議が上手く行かない可能性もある。
また、本人確認として運転免許証などの利用を検討するとのこ。

「ゆうちょ銀行」でも被害が確認されていた模様。

9月11日の追記

9月10日にドコモが行った会見を追記しようと考えたが、追記に追記を重ねると可読性が低下するため別エントリーとした。

*1:厳密には「七十七銀行」は支店名が必要だが、セキュリティには何も貢献しない

With コロナで DEATH STRANDING を始めた

つかず離れずな微妙な関係

PC版は 7月14日にリリースでしたが、HALF-LIFE Alyx で忙しかったので見送っていました。Alyx も落ち着き、そろそろ新しいゲームをやろうかなと思っていたら、Steam で 25% だったので購入。小島監督作品は好きですが、MGSV GZ あたりから少し距離を置いています。これくらいの距離感がちょうどいいのですが、本作をプレイして自分がサムっぽいなと思いました。
まだまだ序盤で、ようやくバイクに乗れるようになった頃合いですが、早速配達依存症になりかけています。終わりまでやって感想を書くとずっと先になりそうなので、ファースト・インプレッションを書いておきます。最後まで進めてからも、感想を書きます。

PS4版は 11月8日 発売のため、自粛期間中にプレイして人も多いのではないでしょうか。本作は分断された世界をつなぎ直すことを目的としたゲームのため、COVID-19前後で感想が変わってきそうです。発売日からプレイしていた人は、DEATH STRANDING な世界になる予兆、自粛期間中はまさに DEATH STRANDING 的な世界。そして、私はその後にプレイしていますが、COVID-19 の先行きは未だ不透明です。

人恋しいことの実感

DEATH STRANDING の世界では AI による荷物の分別、ドローンによる自動配送など配達の自動化が進んでいましたが、シンギュラリティは起こりませんでした。自動化の反動で人とのつながりが求められたため、人による配達に回帰した過去があります。私は、どちらかというと自動化して欲しい立場なので、現実世界でもシンギュラリティは起こるだろうと考えていたと思います。しかし、COVID-19 による自粛期間を経験してからは、人との直接的なつながりが重視されれるのはありそうなことだなと思いました。ただし、現実世界では COVID-19 により配達関係は自動化が促進されるでしょう。一方で、移動はしばらく制限されそうですし、テレワークやテレビ会議の普及が一気に進んだので、人と人との接触機会が減る方向は DEATH STRANDING のそれでしょう。

世界は分断された

DEATH STRANDING における分断は、コロナ禍よりも深刻ではありますが、リンクするところが多いです。もちろん、本作はそれ以前から企画されており、どちらかというとアメリカと中国の対立、Brexit など、世界が政治的、経済的に分断される方向にあることを受けてのものでしょう。インターネットも、国別に分断される傾向はコロナ禍以前からもありました。また、トランプ大統領の当選により、アメリカの分断が可視化される中で制作されており、それ故に強くアメリカの再建を描いた作品でもあるのでしょう。もちろん、小島監督本人のコナミからの分断と見ることもできます。小島監督自身が、色々なモチーフから作品を作り上げるため、色んな見方が可能なのでしょう。元々、「分断」をテーマにすることが多かったように思います。MGS2ではデジタルデバイドを、MGS3では東西冷戦下における分断をテーマにしていました。

コナミからメタルギアからの分断

DEATH STRANDING は小島監督コナミから分断され、ゼロベースから制作されたゲームです。インディーズとして制作されたゲームとしては異例のヒットではありますが、コジマプロダクションを普通のインディーズとして扱うのは疑問が残ります。
小島監督は元々コナミの副社長をやっていましたし、専用のスタジオにてゲームを作成していました。資本の問題を除けば、小島監督自身にプロダクションを運営する能力は十分にあるでしょう。コナミからの退陣は、多くの人から惜しまれましたことからも、コジマプロダクションの法人としての信用はありませんが、小島監督自身の信用度は非常に高いはずです。この辺は、庵野監督がGAINAXをやめ、スタジオ・カラーを立ち上げた経緯に似ているかなと思っています。小島監督自身も、新劇場版ヱヴァンゲリオン・破に言及していましたから、思う所があったんじゃなかろうかと妄想しています。
小島監督自身の「つながり」が DEATH STRANDING を完成へと導いたとも言えます。実際、コナミ時代から共に仕事をしてきた声優が引き続き参加していますし、ノーマン・リーダスマッツ・ミケルセンなどをモデルとし、またアクターとして起用できたのも小島監督自身の「つながり」によるところが多いでしょう。ノーマン・リーダス小島監督がプロデュース予定だった「サイレントヒル」のティザー広告としてリリースされた「P. T.」からの繋がりでしょう。
ただ、「サイレントヒル」のように、小島監督はプロデュースする立場は向いていないと思われます。「メタルギア ライジング」の開発経緯の変遷からしても、副社長という立場でありながら、コナミを離れることになったのも、そのためでしょう。
個人的には、設定を無理やりひねり出す必要のあるメタルギアシリーズから解放されたのは、良かったんじゃないかなと思っています。

パラドクスの自家中毒から抜けだす

全体的に設定が色々練られているのは、流石に小島監督作品だなと思います。個人的な感想としては、MGSシリーズでは過去の矛盾、特にビックボスのパラドクスをこねくり回すしかないため、MGSV では随分と無理なことをしたと考えています。また、MGSV は過去作と比較してダーク過ぎるのもあまり好みではありません。コードトーカーのハンバーガー話とかは癒やしなのですが。
閑話休題
本作では、ゼロベースから設定を構築できたのもあり、ゲームシステムとストーリーをうまいこと融合できているなと感じました。無理な設定ではありますが、ここまで過酷な世界ならその設定もありだろうと私は思います。左右の違いを見つけるのが好きな自分としては、対称性の破れをテーマにしている点はやられたな!って気持ちです。
ただ、物語の導入のためとはいえ、序盤はプレイアブルでないムービーが多すぎだと思います!!もちろん、ゲームの目的から、Beached Thing (BT) の危険性や、カイラル通信などの用語説明を適度な長さのムービーとして盛り込んでいるのは流石としか言いようがないのですが、それにしたってもうちょっと早めにサムを自由に動かして配達依存症になりたいです。

平行世界は分断されるか

ゲームシステムとしては、オープンワールドにおける「お使い」に特化したものとなっています。使いっ走りはゲームの常套ですが、本作はその点を突き詰めたゲームとも言えるでしょう。その中に、小島ゲームお得意のステルス要素が BT や 配達依存症のミュールとしてまぶしてある感じ。時雨が降ったりと情況が刻々と変化していきます。配達任務も千差万別なので、それに応じて色々なルートが発生し得ます。マップを移動し尽くす上では、よいシステムです。MGSV TPP はオープンワールドであり情況が変化する点も本作と同じですが、ミッションは特定のエリアでしか受注できず、そのエリア内で完了するしかありませんでした。天候の変化に乗じて作品を実行するの情況がそもそも稀すぎます。MGSV ではそこが不満だったのですが、DEATH STRANDING では配達により、その点が解消されています。配達なのでミッションは特定地域で受注する必要があります。一方で、配達の受注を考えてルートを考える自由度があります。

また、様々なゲームから、システムや構造に、流行っている要素をてんこ盛りにしているのも小島監督らしいなと感じました。クラフトが流行っているので、クラフト要素がぶち込まれており、それをプレイヤー同士で共有できます。他のプレイヤーにメッセージを表示するのは、DARK SOULS からでしょう。他のプレイヤーの落とし物を拾えるのは、 NieR:Automata を思い出しました。プレイヤー間の共有も、外にある物は時雨で劣化していくってのがよく練られた設定だなぁと感心しました。
他のプレイヤーと世界がつながっている要素としては、BRAVELY DEFAULT FLYING FAIRY (BDFF) が思い出されます。BDFF では各プレイヤーのゲーム世界が、平行世界として存在することが示唆されていました。ただし、ゲームシステムとしては実装されていません。ポケモンの交換もある種の平行世界と捉えることができるでしょう。DSの頃は、すれ違い通信、最近ではネット接続が当たり前のため、プレイヤー間の世界が重なることが増えてきました。DEATH STRANDING ではプレイヤー間のつながりや共有が率先してゲームシステムに組み込まれています。恐らく、DEATH STRANDING の世界そのものが平行世界や、プレイヤー間の共有、つまりつながりによって成り立っていることが作中で示されるのではないかと予想しています。

トイレのあるゲームは名作である

小島監督は以前から、10年ほど前に「HIDECHAN! ラジオ」にて「ゲームでないゲーム」の構想を語っていました。その詳細は結局明らかにならなかったのですが、DEATH STRANDING にはその要素が含まれているんじゃないかなと推測しています。その一つが、先にも語ったようにフィールドを移動することに特化している点。

DEATH STRANDING は地味なゲームです。クラフト要素などがありますが、根幹はフィールドを移動することです。オープンワールドを歩き回るのが好きな私としては、願ったり叶ったりです。スカイリムが好きな理由が、膨大なクエストの中から適宜クエストをこなして行けるからです。どのような順番でクエストをこなしていくかを考えるのも好きです。ただ、DEATH STRANDING では拠点をつん投げていく必要あるので、ゼルダの伝説 Breath of the Wild のように、ビューポイントを見つけて世界を広げるオープンワールドの方が形式としては近いです。ビューポイント式は世界が広がっていく、自分で世界を切り拓いていく感覚が好きです。地図を見ながら、次に行く場所やクエストをこなすルートを考えるとワクワクしてきます。

「ゲームでないゲーム」の構想として、一人の人間の人生に。本作で言えば、サムはある意味で監視下にあります。サム個人のプライベートルームはありますが、シャワーやトイレにも実質的にプレイベートはありません。トイレやシャワーを意味あるものにするため、分泌物や排泄物すら利用する設定なのだろうと考えます。ある意味クソゲーです。トイレが登場するゲームは稀で、不必要な物をわざわざ描く余裕からかトイレの登場するゲームは名作が多いと言われます。トイレが登場するゲームはいくつかありますが、私の記憶の中でトレイを実際に使うゲームとしてGBのサガ3が思い出されます。
トイレに限らず、本作は通常のゲームでは省かれる動作を実装しています。右と左の踏ん張り動作などは通常は実装しないでしょう。このように、ゲームでは無意味に見えそうで実装されず省かれる実世界での行動をゲームに落とし込むのも、「ゲームでないゲーム」なのかもしれないと夢想しました。

配達に行ってきます

オープンワールド内を歩くのが好きですし、ルートを踏破、構築するのも好きなので、DEATH STRANDING は長く遊ぶことになるだろうと思います。そのために、先ずは思っていることをぶちまけました。
メタ的に考えて、BTやビーチなどの概念は、他のプレイヤーとのつながりと関係するのだろうと考えています。つまり、プレイヤー毎にサムがいて、それぞれに平行世界があり、交わるからこそ DEATH STRANDING の世界が成り立っている。カイラル通信は過去から未来への通信ですが、ゲームも制作者とプレイヤーの関係とみることもできます。
とりあえずは、さっさとノットを繋げてしまったほうが出来ることも増えるはずなので、メインミッションを進めていきますかね。