シン・ウルトラQを見せろ

言いたいことはタイトルに

私の、シン・ウルトラマンをみる前の感想は「シン・ウルトラQ」の方が見たいであったが、見た後にその思いがますます強くなった。

冒頭が実質的に「シン・ウルトラQ」なのだが、これをテレビシリーズでじっくり見たかった。ただ、「禍特対(カトクタイ)」は「科特隊」のような超兵器は出てこないだろうから、シン・ゴジラのしょぼい焼き直しでしかなくなる。同時に、謎に包まれた神永新二のバックボーンが浮き上がってくるので、シン・ウルトラマンに繋がりにくいだろう。
超兵器は出てこないけど、禍特対のゆるキャラがいる当たりはあるあるネタで好き。

山本耕史もいいけど田中哲司もいいぞ

田中哲司が、パワハラDV野郎でなく、悪役でもなかったのが個人的には一番の見所だと思う。これだけで満点をつけたいし、それ故に田中哲司が調整役をしまくるシン・ウルトラQがみたいところだ。
常識人っぽいけど、常軌を逸したところがあるあたりは、禍特対の室長にぴったりだ。ちなみに、これが逆になるから田中哲司にはパワハラDV野郎の役ばっかりくるのだ。
Gulliver's Travels と Sleeping Beauty の件は如何にも田中哲司っぽいなと思った。この辺の演劇、映画バカっぽい所も含めて田中哲司には庵野秀明役を是非やって欲しいと。そんなタイミングが来る可能性はほぼないだろうが。

バルタン星人が見たかった

私は、ウルトラマンはしっかり見ておらず、後のシリーズは見ていない。ウルトラマンをなんとなく知っているので、シン・ウルトラマンにおけるウルトラマンのリブートである点をなんとなく理解できるくらい。それくらいでも、ニセウルトラマンは絶対に出してくるだろうと思っていた。

個人的な好みだと、バルタン星人に登場して欲しかった。所謂、難民問題だ。ウルトラマン放映当時における世界の人口が20億から30億人なので、バルタン星人もその同数程度なのだろうが、これを現代リブートすると70億のバルタン星人に膨れ上がるのだろうか?映画で一本丸々時間をとってやって欲しいテーマではある。

絵作りが気になる

随所の特撮っぽい所は、庵野秀明こだわりだろう。スペシウム光線とか、ウルトラマンの皺に、飛んでるときは人形っぽいあたりとか。

東京スカイツリーではなく、東京タワーを中心に写すのは昭和レトロなのだろう。日常パートも、昭和の残り香を出していた。ノスタルジーを出したいのだろうが、舞台設定を1966年にしなかったのは良かったと思う。

絵作りとしては浅見弘子が巨大化する件は面白かったのだけど、パンツ姿でも良かったのでは?と感じた。この違和は神永新二を助けるシーンでも感じた。後にメフィラスこと山本耕史YouTube と覚しき動画を一斉に削除するため「作中でも悪いこと」とのコンセンサスは示されている。しかしながら、浅見弘子は元公安で顔が割れるとまずいし、公安でなくても世界中に顔を晒されても困るだろうから、スカートである必要は無かったと思う*1
匂いに関しても、てっきり「残り香」的な暗喩かと思ったら、直球の「臭い」で拍子抜けした。数値化できないとのことだったが、外星人くらいの科学力があれば臭い分子の同定くらいできそうなものだ。

室内が多すぎるというか、毎回同じ間取りになってるのが、見ていて退屈だった。禍特対と自衛隊などが集まったテントは外の様子が全く見えないので、どの現場でも同じ絵になる。防護服を着ることで違いが出るのはある種のギャグなのだろうけど、わかりにくい。そこを行くと、滝明久が VR で国際会議するあたりは分かりやすいギャグである。しかし、セリフで滑稽さを説明するまであっただろうか。禍特対メンバーが監禁された際に、船縁由美がお菓子をストレス食いするのも、浅見弘子に説明させていたが、全体的に説明セリフが多すぎるように思う。船縁由美、全然ストレスに弱くないし。

室内のカメラワークが実相寺っぽいものばかりなのも飽きるポイントだろうか。そればっかり撮っていたか、撮れ高として使える絵がそれしかなかったかのどちらかなのだろうか。

マルチバース設定はずるいぞ

設定は、上手いようで練りが甘く感じる。例えば、外星人間の条約に関しては結構ガバガバだなぁという感想。直接攻撃はダメだけど、生物兵器ならOKってのはどんな基準だ。外星人が他の星系を訪れることは禁止できず、それにより探報した星系に生物の種を容易に落とし得るので過失を問えない、という理屈だろうか。あるいは、生物兵器がその星系に合わせて独自に進化するため、その出自を追うのが難しいからか。

βカプセルにより地球人を兵器転用できる当たりは面白い設定だと思った。βカプセルの設定は地球人を抹殺する理由というよりも、初代や他のウルトラシリーズ、引いてはエヴァンゲリオンシリーズを我田引水できるあたりが、まじでずる賢い*2。シン・ウルトラマンにおいて、宇宙ではなくマルチバースにしてるあたりが「庵野、ずるいな」と感じた所以。

地球人が兵器転用できるかに関わらず、知的生命体は抹殺しておくのが今後の憂いを無くす意味でも正しいだろうと思うのは、やはり私が「三体」信奉者だからだろう。

誰向けの映画なんだろうか

個人的な感想としては、面白かったけど中途半端で、もう一回見ても無くてもいいかなという感じ。
庵野秀明作品に落とし込んでくるところはずるいなと思いました。実質的に、ナディアとエヴァンゲリオンも内包した設定でもある。

私は、中途半端に初代を知っているせいか、シン・ウルトラマンは全体的にとっちらかってるなという印象。2時間弱だけど、ちょっと冗長かなかぁという気持ちでもうちょっと詰め込んで欲しかった。庵野秀明作品としても中途半端だし。
ウルトラシリーズやその他の特撮を追ってる人だと、あんまり面白く無いのでは?という感じで、どこを向けた映画なのかよくわからなかったのだが、『シン・ウルトラマン』を観た子供たち - Togetter という声もあるのでヨシ!と思った次第。

*1:動画の削除はルッキズム批判でもあるのだが、それ故に益々スカートである必要がない

*2:もしくはその逆も可能