シン・エヴァンゲリオンの感想をネタバレ全開で

何を言ってもネタバレになると思うので、ネタバレ上等で感想を書きます。

収束のエヴァンゲリオン

ネタバレなしの『シン・エヴァンゲリオン劇場版』初見感想
自分も似たような感想で「わかりみが深い」

最初にこれまでのあらすじが流れてたのは予想外だったけども、よくまとまった、そしてシン内で効果的に機能するあらすじでした。また、冒頭16分を見ずに映画館へ足を運んだので、のっけからエッフェル塔が登場し完全にナディアだなぁと思っていたら、後に登場した冬付き先生が完全にガーゴイルで笑ってしまいました。

まさか本当に完結させるとは。ただし、実質的にはTV版、貞本義行による漫画版の結末と大きな違いはありません。また、旧劇場版のラストも補完されています。ゲームも含めたマルチバースエヴァンゲリオンをも収束させたのがシンという作品です。

もちろん、シンですべてが明らかになったわけではありません。ニア・サードインパクト後の14年間、つまり破からQの間に起きたことは描かれていません。けれども、エヴァンゲリオン碇シンジの物語である以上、描く必要はありません。もちろん、スピンオフ的に描かれる可能性はあります。しかし、それはあり得たマルチバースの一つかもしれません。つまり、シンのような収束点へ向かう物語ではないかもしれません。

モチーフとオマージュの繰り返し

冒頭のあらすじや冬月先生によるガーゴイルに限りませんが、要所要所にセルフオマージュを交えながら、伏線でなかったものを伏線として回収していくことで、これまでのエヴァンゲリオンを収束させていきました。
最終決戦の楽屋落ちとも取れるセットでの戦いや、原画撮影や色指定など指示の入った原画は、TV版のオマージュであり補完なのでしょう。セットでの戦いは、特撮展やシン・ゴジラが思い起こされてニヤニヤしていました。映画が終わってから、大学生くらいのグループがこのシーンは監督がふざけているのだろうと解釈していましたが、TV版を見ていないと分からない部分ではありますね。
塗り前のアニメーションは波の繰り返し、つまりモチーフの繰り返しでもあります。波が赤から青へとただ色が変わるだけなのに、とても大きな意味を持っています。冒頭のあらすじも含めて、散々旧作でも繰り返してきたモチーフの繰り返しがシンで生かされているのがすばらしいです。
モチーフの繰り返しはQのシンジとカヲルによるピアノの連弾が想起されます。

ループから収束へ

新世紀エヴァンゲリオンと新劇場版ヱヴァンゲリヲンの相違 再構築 - 最終防衛ライン3

序の頃から、ループやマルチバースの論考はありました。破やQの先の見えなさから、またループするんのではないかという危惧が浮かび上がります。しかし、シンを見てから振り返ると、アスカが惣流から式波に変更された理由や、真希波の投入、序の最後で渚が復活し意味深なことを呟くことなどから、恐らく当初からある程度はシンの形はあったのだろうと思われます。TV版や漫画版と基本的には変わらないのもそういうことでしょう。ただ、東日本大震災の影響で当初の構想とは変容しているようにも感じられます。

私は、シンのラストもTV版および旧劇場版も最後の審判の暗喩だと思っており、大きな違いはないと考えています。TV晩の時点で割と納得していました。シンではシンジの成長が描かれています。
そもそも、旧劇場版の時点で現実への回帰を促したのに、視聴者の多くはエヴァにとどまり続けました。庵野監督やガイナックスエヴァの呪縛に捕らわれていました。カラーとしてスタートしたのもその呪縛を解くためでしょう。シン・ゴジラ以降の庵野監督のインタビューでもそれは見て取れます。

シンは、旧劇場版から数えて24年という歳月があったから収束できた側面もあります。物語の完結にはシンジが成長、つまり大人になる必要がありましたが、ファンや庵野監督も大人になる必要がありました。庵野監督自身が大人になったシンジを描けなかったのもあるでしょう。
だからこそ、シンでは旧劇場版のラストをシンジが補完できたし、物語を収束することもできました。TV版やマンガ版と違って中学生ではない、大人になったシンジが描かれています。匂いも大人の香りですし、大人のキスなのかな?
最後の演出は世界はセカンドインパクト以前に戻ったというか、シンジが我々の世界を再構築したとも捉えることができる。
旧劇場版とは違う形で視聴者に現実を突きつけたように思う。

Qの感想がひっくり返りそう

シンでは、シンジが戦う理由が丁寧に描かれているのもいいです。第三村の「夏」の描写が肯定的でいい。サクナヒメとか、農村に異世界転生とかを想像してしまいました。個人的には、ラストとの演出は DEATH STRANDING が想起されました。また、全然関係ありませんが、STAR WARS episode 9 も許しました。

ヱヴァQの感想をネタバレ全開で書く - 最終防衛ライン3

Qの感想でガフの扉が高次な存在と我々の世界をつなげるのではと予想していたら、マイナス宇宙とか登場して個人的にニヤっとしました。しかし、エヴァンゲリオンイマジナリーとか相変わらず中二病をくすぐる言葉選びのセンスが神がかっています。シンクロ率インフィニティとか、散々二次創作で見ましたがオリジナルがやってくるとは。むしろ、二次創作を取り込みつつそれを超えてくる用語や設定にしびれました。
また、Q 公開当時にヴンダーの乗組員がシンジに冷たいという感想が散見される中、私としてはミサトさんも含めみんな優しいだろと思っていたので、シンの答えあわせでドヤ顔に。
それにしも、Q の短さを考えると、本来はシンと当時公開くらいでよかったよなと。結果的に9年、しかもコロナの影響で延長に次ぐ延長で散々待たされました。最終的に、きちんと収束したからよかったものの。
作劇的には、新劇場版では3DCGが使われていましたが、シンでは多用されていました。3DCG というか blender 入したからなせるシーンが随所にありました。こう考えると、やはり現在だからこそなしえた物語だったのかもなと。