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「使い捨てカメラ」は「インスタントカメラ」じゃないよ

表題だけでは意味不明な人がほとんどでしょう。

富士フイルムの「写ルンです」に代表される「使い捨てカメラ」あるいは「レンズ付きフィルム」のことを「インスタントカメラ」と呼ぶ人が結構な割合でいるようで、私としては驚きを隠せません。

本来「インスタントカメラ」とは「ポラロイドカメラ」や「チェキ」のような、撮影後に即座に自動的に現像を行うフィルムを用いたカメラを指し「レンズ付きフィルム」を意味しません。

Twitterでのアンケート

レンズ付きフィルム」のことを「インスタントカメラ」と呼ぶ人がいるらしいと知ったのは、こんぽた(@cornpt)さんが行っていた下記のTwitterアンケートから。


投票数58に対して、凡そ70%の人が「レンズ付きフィルム」を「インスタントカメラ」と呼ぶようです。

同様の質問を私も行ってみました。


こんぽた(@cornpt)さんのアンケートとは異なり丁度半々になりましたが、それでも「レンズ付きフィルム」を「インスタントカメラ」と呼称する人が存在することがわかります。

冒頭でも述べましたが、「インスタントカメラ」とは撮影後に短時間で印画のできるフィルムを用いたカメラのことです。かつてはポラロイドカメラが有名でしたが、最近では富士フイルムのチェキの方が通りが良いかも知れません。
「インスタントカメラ」の「instant」とは、「すぐさま」「瞬時」などを意味します。つまり、「インスタントカメラ」とはすぐに写真ができるカメラを意味します。その他に「インスタント」が付く言葉として、インスタントラーメンや、インスタントコーヒーなどがあります。インスタントラーメンは即席麺とも言われますね。お湯を注いで「すぐに」できるので「インスタント」という名が付いたのでしょう。

日本語における「インスタント」のニュアンス

英語の「instant」は「即席」など時間に関する意味しかありませんが、日本語の「インスタント」にはそれ以外のニュアンスがあるように感じます。辞書を引いてみると「すぐさま」の他に「手間がかからない」とありました。

すぐにできること。手間のかからないこと。また、そのさま。即席。即座。「―なやり方」「―ラーメン」

インスタントラーメンや、インスタントコーヒーは確かに「手間がかからない」ですね。
ただし「手間がかからない」だけでは「フィルム付きカメラ」が「インスタントカメラ」と呼ばれるようになった理由としてはやや弱い気がします。
日本語の「インスタント」のニュアンスとして「簡単な」あるいは「簡易な」が含まれているように思われます。またインスタント食品や飲料から「本物ではない」あるいは「代替品」などのイメージも有するように感じられます。
「フィルム付きカメラ」はコンビニなどで手軽に購入でき、扱いも簡便で、さらに代替品として利用されるため「インスタントカメラ」へと結びついてしまったのかなと。

また、「レンズ付きフィルム」が「インスタントカメラ」と呼ばれるようになった経緯として、「レンズ付きフィルム」の一般名が定着しなかったこともあるでしょう。JCII 日本カメラ博物館:特別展:「レンズ付フィルム展」 において解説されるように、当初は「使い捨てカメラ」などと呼ばれていましたが、実際は使い捨てではなくリサイクルを行っている観点から「レンズ付きフィルム」に改称されました。

一時期は「使い捨てカメラ」「使い切りカメラ」などの表記もされていましたが、使用済みの本体は分解後にカメラメーカーによりリサイクルされるシステムができあがっていたため、「使い捨て」という言葉は早くに見直され、1991(平成3)年に「レンズ付フィルム」という言葉が業界での統一呼称となり、広く普及するようになりました。

このような経緯に加え、そもそも商品名である「写るんです」の方が有名であったことも、「レンズ付きフィルム」が「インスタントカメラ」と認識されるようになった一因かなと。

ちなみに、英語では「Disposable camera」あるいは「single-use camera」と呼ばれるようで、ニュアンスとしては「使い捨てカメラ」か「使い切りカメラ」でしょうか。

「インスタントカメラ」と「レンズ付きフィルム」そのものがマイナーに

「インスタントカメラ」が「レンズ付きフィルム」と混同された原因として、カメラの歴史的推移もあるでしょう。
先ず、デジタルカメラの台頭により「インスタントカメラ」の代表であるポラロイドカメラが衰退し、「インスタントカメラ」の知名度が減少しました。
さらに、写メを始めとする携帯電話、そしてスマートフォンにカメラが搭載されたことで、カメラを持っていない人が「レンズ付きフィルム」を購入する機会が減ったと思われます。
つまり、「インスタントカメラ」も「レンズ付きフィルム」もマイナーな存在になってしまい、その違いをわざわざ区別する必要がなくなったのも、混同に拍車をかけたのでしょう。

いつ頃から両者が混同されていたのかはよく分かりません。
例えば、サイエスガイド No.10 - はじめに には「使い捨てカメラと呼ぶインスタントカメラでさえも」と書かれています。同ページはLast Modified - Chrome Web Store によると2000年5月が最終更新日となっています。
日付の確認できる事例として1999年10月の I think therefore I am や 1999年11月の すずらん峠 などがあります。

その他の事例として、2004年の インスタントカメラの現像料金 - カメラ全般 | 教えて!goo や、2005年の インスタントカメラの現像について : 心や体の悩み : 発言小町 : 大手小町 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) などで「レンズ付きフィルム」を「インスタントカメラ」と呼称しています。「レンズ付きフィルム」の事ではないかというツッコミもあるものの、「インスタントカメラ」を「レンズ付きフィルム」と認識して返答しているコメントも多く見られます。

ちなみに、Googleで「インスタントカメラ」と検索すると「使い捨てカメラ」や「レンズ付きフィルム」を含んで検索してくれます。Googleとしては「インスタントカメラ」=「レンズ付きフィルム」ということになっているようです。

言葉は変わるものだけど

レンズ付きフィルム」を「インスタントカメラ」と呼称する人が多いので、実生活上は「インスタントカメラが」が「レンズ付きフィルム」を意味する言葉になっているようです。
本来の「インスタント」のニュアンスを考えたら、「レンズ付きフィルム」を「インスタント」と称するのはおかしいでしょう。たとえ日本語の「インスタント」には「すぐさま」以外のニュアンスが含まれるにしても。

ちなみに、「レンズ付きフィルム」は現在もネガフィルムが必要な場合や、デジカメを利用できないシチュエーションなどで利用されているようです。Amazonのレビューを眺めてみると、修学旅行でデジカメを禁止している学校があるようで、そのような場合にも購入されているようです。