ちゃんと絵を見て!たわわの全面広告は「えっち」でしょ

natalie.mu

えっちでしょ

「月曜日のたわわ」による日経新聞の全面広告が物議を醸しています。個人的に気になったのは該当のイラストが「えっちではない」という主張。
確かに、一見すると「健全」なイラストにようですが、よくよく見ると「えっちなシチュエーション」に描かれています。このシチュエーションは「月曜日のたわわ」の「お約束」でもあり、本作を知らないと気がつくのが難しい「文脈」ではあります。しかし、知らなくても「健全ではない」と感じ取れるようになってもいます。

逆に「月曜日のたわわ」を知っていて、このシチュエーションに気がつかないのは、絵を全く見ていないと言わざるを得ません。

「月曜日のたわわ」とは

「月曜日のたわわ」は、比村奇石(@Strangestone)により、2015年2月から毎週月曜日に Twitter に公開されるイラストで、2016年10月と2021年9月にウェブアニメ化もなされています。また、2020年11月からヤングマガジンヤンマガ)で漫画版の連載がスタートし、今回の日経新聞における全面広告もヤンマガによるもので単行本の宣伝も兼ねています。

当初 @Strangestone のアカウントには「月曜朝の社畜諸兄にたわわをお届けします」と題されていました。ヤンマガも月曜日発売で、このコンセプトを引き継いでいるのでしょう。今回の広告でヤンマガ編集部も、その点を窺わせるコメントをしています。

4月4日は今年の新入社員が最初に迎える月曜日です。
不安を吹き飛ばし、元気になってもらうために全面広告を出しました。

-「月曜日のたわわ」全面広告が日本経済新聞に「不安を吹き飛ばし、元気になってもらうため」(コメントあり) - コミックナタリー

たわわはおっぱい

Twitter 版の「月曜日のたわわ」は胸の豊かな女性の描かれたイラストがアップロードされています。キャラクターも様々です。服こそ着ているものの、胸が強調されたえっちなイラストです。端的に言えば「おっぱい」を強調することでバズを狙ったイラストです。

ヤンマガ版も「おっぱい」が話の中心です。マンガにするにあたり、キャラクターが絞られています。
主に「アイちゃん」、「前髪ちゃん」、「後輩ちゃん」が登場します。それぞれに、シチュエーションがあり、「アイちゃん」は電車で通学する高校生で同じ車内で出会った「お兄さん」との関係性、「前髪ちゃん」も高校生ですが「先生」との関係性、「後輩ちゃん」は職場との先輩との関係性となっています。
今回の広告では「アイちゃん」で、無料公開されている一話に登場しています。
月曜日のたわわ - 第1話 アイちゃん① | ヤンマガWeb

アイちゃんとボタン

「アイちゃん」は胸が大きすぎてシャツのボタンがよく外れます。なぜか、お兄さんを好いており、なぜか、そのボタンをお兄さんにあげます。

この点を抑えた上で、もう一度広告のイラストを見てみましょう。

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「アイちゃん」が身体を左に向け、こちら側を見ています。左手で胸が隠れるように描かれていますが、よくよく見ると胸の大きさを隠し切れていません。そして、右手にボタンを持っています。これの意味するところは、左手はシャツのボタンが外れて押さえている、ということでしょう。
つまり、胸が隠れるように描いているのではなく、「アイちゃん」が胸を隠さざる得ないシチュエーションとして描いているわけです。
まさに「月曜日のたわわ」のお約束が描かれています。この点を考えると日経新聞への掲載意図は、ファン向けというか内輪向けと感じます。Twitter で知ってはいるけど、ヤンマガでの漫画版を知らない、単行本が出ているのを知らない人は多いでしょう。

モブな男の人達

「アイちゃん」の相手役である「お兄さん」は目が描かれていません。これは「前髪ちゃん」の思い人である「先生」や「後輩ちゃん」の「先輩」も同様。
マンガやアニメなどでは、周囲に存在するがストーリーに絡まない人物を細かく描かないことがあります。いわゆるモブですが「お兄さん」はモブでありません。
絵に限らず、主役の相手役なのにディティールが明確に描かれていません。この手法は、モブというよりもエロマンガエロゲーの主人公の描き方に近いと感じます。つまり、相手役はだれでもいいのです。むしろ、ディティールを描かないことで読者に近い存在として描かれています。

男性の顔が描かれないのは「月曜朝の社畜諸兄にたわわをお届けします」のコンセプトとしては一貫してます。服こそ着ていますが「月曜日のたわわ」は、「おっぱい」を愛でるためのイラストであり、マンガなのです。主役の相手役の男性のディティールなど必要ないのです。

合わせ技一本でヤンマガ編集部がダメダメ

個人的に、広告自体は「たわわ」のお約束を示しつつ、現状のギリギリを攻めたなという印象です。日経新聞の全面広告に関しては、作品のコンセプトからすると電車通勤する男性サラリーマンにしか目を向けていないのかな?と感じました。日経新聞としては、それでいいんですかね?と思いますが、まぁいいのでしょうね。

個人的に、編集部が「不安を吹き飛ばし、元気になってもらうために全面広告を出しました」とコメントしたのはダメだったと思います。「たわわ」の作品コンセプトからすると「広告を見た人におっぱいを見て元気になってもらいたいです」と言っているのに等しいと感じます。実際に仕上がったイラストも、前述したように隠しているようで攻めています。

ちなみに、YouTube にアップロードされているヤンマガ版の「月曜日のたわわ 15秒CM」は年齢制限が設けられています。


www.youtube.com

絵や作品をきちんと見た?

「月曜日のたわわ」の広告に使われたイラストは、一見すると「健全」ですが、よくよく見ると
作品の「お約束」を体現した「えっちなシチュエーション」が描かれています。
「月曜日のたわわ」を知らなければ気がつきにくい点ではありますが、逆に知っていれば「違和」に気づけるようにもなっています。その点で、内輪向けというかファン向けのイラストなのでしょう。
Twitter などで見かけたことはあるが、単行本が4巻まで出ているのを知らない人は多いので、そのような人達もターゲットだろうと思われます。

今回のイラストが広告として、ありかなしか、は意見の分かれるところだと思います。個人的には、ギリギリありではあるけども、作品のコンセプトおよびヤンマガ編集部のコメントからして、日経新聞の全面広告はダメだったと考えます。
また、このイラストを「健全である」とか「えっちではない」「性的ではない」との指摘は「絵をきちんと見ていない」と言わざる得ません。あるいは「作品を知らない」。少なくとも、絵の文脈で語るなら、絵をしっかりと見据え、作品のことを知って欲しいと思います。