ゲームで操作できるキャラクターの男女比 2014年のランキングから

特に調べもせずに、個人の偏見で一般化するのはよくないと思います。この点は既に、一部の事例でもってゲームにおいて女性主人公が少ないとするのは過度な一般化ではないか (斗比主閲子の姑日記) とも指摘されています。

具体的なデータとしては、日本のゲームは男女平等です。 (狐の王国) において2014年に発売された3DS向けタイトル100本の集計があります。
これによると、男性主人公が25で、女性主人公が15と男性の方が多いですが、30のタイトルでは男女どちらのキャラクターも選択可能となっています。

日本における傾向を3DSのタイトルで検討するのは妥当だと思いますが、3DS以外の動向や、海外との比較をしてみたかったので調べてみました。

日本と英国は年間売り上げトップ100から集計。北米は年間トップ100がなかったので、月毎のトップ10を集計することで50程度のタイトルをピックアップできました。

まとめたデータをGoogleスプレッドシートを配布しています。

ゲーマーの男女比は均等になりつつある

ゲームで操作できるキャラクターの男女比を考察する前に、ゲーマーの男女比を考慮すべきでしょう。

日本、北米、欧州の調査結果によると、男性ゲーマーの割合がやや多いものの、男女比はほぼ同じ。具体的には男性が55~60%、女性が40~45%となっています。近年になり、女性ゲーマーの割合が増えており、このまま推移するとほぼ均等になると考えられます。
Essential Facts About the Computer and Video GameIndustry では、スマートフォンでゲームをやる割合は女性の方が多く、ゲームそのものに触れる機会も多いとも報告されています。今後スマートフォン向けのゲームは増加傾向にあるため、女性ゲーマーが男性を上回る可能性もあります。

スマートフォンで人気のあるゲームは、パズドラやキャンディークラッシュのようにプレイヤーの現し身となるキャラクターが存在しないことがあります。現し身となるキャラクターのないゲームの男女比は集計できません。
その点で、I’m a 12-year-old girl. Why don’t the characters in my apps look like me? - The Washington Post で紹介されるように、12歳の少女がエンドレスラン系に絞って男女の有無を調べたのは非常に有意義だと思います。
エンドレスラン系はプレイヤーの現し身となるキャラクターを操作するゲームです。また、そのキャラクターに性別があるならば、男女どちらも選べる方が良いでしょう。男女の違いにより内容が大きく異なるゲームでもありませんし。

調査結果によると、90%のゲームは無料で男性キャラを公開しているのに、女性キャラはほんの15%のみ。課金により女性も選択できますが、ゲーム本体よりも高いとのこと。

少女の「女性も無料で選択できるようにすべきだ」との主張は至極まっとうです。一方で、これらのゲームの開発元は個人だったり、大手ではなかったりと、資金も人もそれほど潤沢でない場合があり、男女平等を強いるのはやや酷ではという気もします。

男女両方を用意する場合、単純に考えてもキャラクターに関する開発コストが倍になるでしょう。デザインは最低でも二通り、声があるなら、男女両方用意しなければなりません。
弱小デベロッパーが男女平等に配慮する場合、中性など性を無くしたり、人間以外のキャラクターにした方が楽かも知れません。

家庭用ゲーム機における、プレイ可能なキャラクターの男女比

家庭用ゲーム機における、主人公、あるいは操作可能なキャラクターの男女比を調べました。参考にしたのは以下のサイトになります。スマートフォン向けゲームを調べてみても面白いとは思いますが、私は集計するつもりはありません。

日本と英国は2014年の売り上げランキングのトップ100から集計。
北米はトップ100を見つけられなかったため、月毎の売り上げトップ10をまとめ、50本ほど抽出しました。北米は、英国と比較しても、そこまで大きな違いはなさそうです。
北米は、マルチプラットフォームタイトルは各ハードの売り上げをまとめて一本として集計されています。日本と英国は、別タイトルとしてカウントされています。

男女比とは関係ありませんが、任天堂のブランド力の高さがにじみ出るランキングでもあります。英米はマルチプラットフォームが当たり前で、北米のランキングは各ハードのタイトルをまとめて集計してます。にもかかわらずマルチプラットフォームではない任天堂のタイトルがランクインしてくるあたり、やはり強いなと感じます(ただし、スマブラはマルチですが)。

男女の分類方法など

主人公あるいはメインで操作できるキャラクターの性別を集計しました。ゲームの一部分で操作できてもメインで操作できるキャラクターでない場合は、そのキャラクターの性別は含めていません。例えば、「Last of us」におけるエリーなど。本編とマルチプレイがある場合は、本編主人公の性別で集計しています。
多くのゲームは実際にプレイしたわけではなく、ホームページやウィキペディアやその他サイトを元に男女を判断しています。間違いがあるとは思いますが、全体の傾向が大きく変わることはないと思います。

「選択(Choice)」とは、開始時に男女のキャラクターを選択できる、あるいはキャラメイクができる、およびMiiなどのアバターを選択するゲーム。
「操作可(Selectable)」とは、多数のキャラクターが操作できるゲームにおいて、男女両方のキャラクターが用意されている場合。マリオカート格闘ゲームなど。
FFX / X-2」のHD版はそれぞれ別タイトルとして集計しました。FFXは男性、X-2は女性主人公なのですが、本来は別のゲームのためこれを「操作可」に分類するのは違うなと。

「無(No-lead)」は性別が規定されていないか、そもそもプレイヤーの現し身となるキャラクターが存在しない場合。ソーシャルゲームではパズドラなどのゲームは「無」となります。今回用いたランキングではレースゲームが該当します。
「不明(Unkown)」はキャラクターの性別が分からないか、明かされていない場合。性別不明はヨッシーカービィやオラフなど。カービィやオラフはオスで、ヨッシーはメスの可能性が高いですが、「不明」に分類しました。

ゲームのジャンル分けもしてますが、私の独断と偏見によるものです。例えば、特定の主人公を中心にストーリーが進行するゲームはADVとしました。キャラメイクできるゲームはRPGとしています。
ジャンルごとの集計はしてませんが、考察の一助になるかなと思い入れています。

ゲームにおいて操作できるキャラクターの男女比

以上の結果をまとめて円グラフとしました。具体的な内訳は冒頭でリンク先を示したGoogleスプレッドシートで確認願います。

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男女を選択できるゲームは2~3割程度で増えつつある

日本と海外を比較した場合、日本の方が男女を選択できるゲームが多いです。日本では30%のタイトルが男女から選択でき、20%は操作可能です。つまり、50%のゲームで男女どちらのキャラクターでプレイできます。英米だと選択可能なゲームは20%で、操作可能を加えると30%程度になります。

日本と英国、北米を比較した際に、英米の方がゾーニングされたゲームが多く売れています。つまり、英米では子供よりも大人の市場の方が大きいと推測できます。子どもよりも大人の方が自由になるお金が多いので当たり前ではありますが、日本のゲーム市場は子ども向けの比重が大きいと言えます。
英米に比べ日本の方が男女を選択できるゲームが多いのは、子ども向けが多く売れているからとも考えられます。

男女を選択できるゲームとして、日本では妖怪ウォッチやポケモンなどのRPGが多く、英米では近未来のSFやファンタジーを舞台としたタイトルが人気です。「Halo」も、次回作では女性を選択できるようになるそうです。

また、本編は男性主人公であるものの、マルチプレイでは女性を選択できるタイトルもあります。「Call of Duty: Ghosts」や「Aliens: Colonial Marines」がそれに当たります。『Aliens: Colonial Marines』に女性海兵隊の追加を求める署名運動が実施 されるなど女性キャラクターを求める運動が行われています。
マインクラフトが突然女性キャラクターの配布を決定、その理由とは? - GIGAZINE によると、マインクラフトは操作できるキャラクターはおっさんのみでしたが、先の12歳の少女による調査の影響で、女性を含むスキンが配布されました。

日本と英米のどちらにおいても、キャラメイクができる、あるいは性別によりゲームの内容が大きく変化しないタイトルでは、男女のどちらも選べるようになっています。人気タイトルであっても、男女を選択できないゲームも一部ありますが、選択できるような方向へと進んでいます。

ストーリーものでは男性主人公が多い

日本では40%弱、海外では60%弱が男性主人公のゲームになっています。ただし、性別を入れ替えると齟齬が生じる作品を分けた場合、日本、英国、北米ともに男性のみのゲームは30%程度になり、大きな違いはありません。
性別を入れ替えると齟齬が生じるゲームとは、サッカーなどの男性スポーツを元にしたゲームや、スパイダーマンバットマンなど原作の主人公が男性のもの、または史実を元にしたゲームなどです。史実を元にしたゲームとは「龍が如く 維新」や第二次世界大戦を舞台にした「Sniper Elite III」など。

日本、英米共に、女性を主人公とした物語のゲームは6%前後でしか無く、極端に少ないです。ただこの結果から、即ちゲームは女性主人公が少ないと結論付けるのは早計に思えます。他のフィクションの傾向と比較する必要性があるでしょう。

他のコンテンツと比較した場合も、その題材がゲームに向いているかを考慮する必要があるかもしれません。例えば、恋愛ドラマよりは戦闘物の方がゲームに落とし込みやすいでしょうし、販売数も多いでしょう。
一方、日本では少女が戦うプリキュアが長年に渡り少女用コンテンツとして愛され、ゲームと連動したアイカツがヒットしていることからも、女性を主人公とした物語のゲームは、もう少し増えてもよいのかなと思えます。

More women play video games than boys, and other surprising facts lost in the mess of Gamergate - The Washington Post は欧米における女性ゲーマーに関するレポートです。先に述べたように、近年女性ゲーマーが増える傾向にあり、マーケットとしても女性向けを考慮すべきでしょう。
このレポートでは代表的なタイトルにおけるゲーマーの男女比もまとめれいます。「Call of Duty」や「Assassin's Creed」は男性に人気があり、「Wii Sports」やダンス系のゲームは女性に人気があります。身体を実際に動かすゲームが女性に人気なのは、ダイエット目的なのでしょうか?
男性に多くプレイされている「Call of Duty」や「Assassin's Creed」などが売り上げランキングの上位に位置することを考えると、メーカーが男性主人公のゲームを売るのはマーケティングとしては正しいのかなと。スポーツやヒーロー物が原作のゲームが多く販売されているのも売れるからでしょう。

女性を主人公とした物語のゲームは現状よりも増える傾向が望ましいです。一方で、現状の売り上げランキングから考えると、物語を主軸としたゲームにおける主人公の男女比は男性が多い傾向にあるのも仕方がないのかなとも。

意外にいない中性、無性キャラクター

スマートフォンで人気のあるパズルや育成ゲームは、プレイヤーの現し身となるキャラクターが存在しないため性別もありません。家庭用ゲームの場合は、レースゲームなどが該当します。これらのゲームは、プレイヤーの性別がそのままゲームにおける性別と考えることもできます。

性別が不明なのは、「Plants Vs Zombies」や「Skylanders」などのモンスターがが戦うゲームなど。面白いのは「Saints Row IV」で主人公の見た目を変更できますが、設定として年齢。性別、人種の一切が不明となっています。

集計した結果、中性のゲームはありませんでした。
Facebook、50種の新しい「性別」を追加 « WIRED.jp のようにSNSでは男性や女性以外の性別を選択できるようになりつつあります。アバターやキャラクターをアレンジできるゲームにおいて、性別無し、中性などがあっても良いのになと。特に、SFが舞台のタイトルのはあっても不自然では無いでしょう。

以前、任天堂トモダチコレクション同性婚ができないことが問題となりましたが、アバターの性別が男女しか無く、中性などが選べないことは際だった議論にはなってはないようです。

ちなみに、マインクラフトの開発者である、Marcus Perrson氏は自身のTumblerにおいて、マインクラフトの主人公であるスティーブは中性であると明言しています。流石に無理がある設定だなだ思いますが。

「女性キャラクターを操作できる=女性に配慮している」は成り立つか

ゲームで操作できる男女を集計した結果、選択できるゲームが30%程度あることが分かりました。その一方で、物語を主体としたゲームでは男性主人公が30%近くあるのに、女性主人公のゲームは6%前後しかなく、男女比が大きく偏っていることが明確になりました。

主人公の男女比が偏っていますが、「女性キャラクターを操作できるから女性に配慮している」は成り立つでしょうか。そうとは限らないでしょう。
例えば、「DEAD OR ALIVE」シリーズはメインキャラクターが女性であり、操作できる女性キャラクターも多いですが、男性をターゲットとしたゲームでしょう。どちらかというと、女性を商品として消費していると問題視されるゲームです。

ゲームに登場する女性キャラに関しては、ゲームに登場する女性キャラはいかにして性の対象として描かれているか? - GIGAZINE というまとめがあります。
よく調べてあるなと思いつつ、かなり偏った思想だなとも感じます。問題提起としてはインパクトはありますが、現実社会との比較や、他のフィクションでの女性の扱いが無視されており、ゲームだけやり玉に挙げられているようで男性ゲーマーとしては耳が痛いとも理不尽とも感じれます。

例えば、「Far Cry 3」では、『白人男性が売春婦の多く住んでいる貧困街を調査する』といった貧困差別的な内容を含む描写が問題視されてます。「Far Cry 3」は人身売買をテーマにし、それを否定する内容となっています。少なくとも売春婦に関しては、正しい事としては描かれてないと感じました。ゲーム構成も、最終的には戦闘に狂うことを否定するようになっています。ある意味、ゲーマーを否定するゲームでもあります。ただ、個人的には、島に住む先住民の扱いが政治的に正しいのかが気になりますが。

「娼婦を購入すると能力がアップする」などは配慮に欠けますが、ゲームにおいて差別描写があるからといって、制作者が差別している、あるいはプレイヤーに差別を植え付けることになるとは限りません。これは、映画など他のフィクションでも同様でしょう。映画に売春婦が登場するから差別であるとの主張はおかしいでしょう。

差別や偏見に配慮すべきですが、現実を元にしている以上差別をないものとして描くのも不自然です。

中身を見よう

男性主人公のゲームが多いのは事実ですが、男女両方を選択できるゲームも同じくらいあります。ただし、男女両方のキャラクターでプレイできるからと言って、必ずしも男女平等であるとか、偏見に配慮しているとも限りません。
また、選択できるにしても、男女以外から選べるゲームはほとんどない状況です。中性や無性があっても面白いのではと個人的には思います。アバターなどはもっと多様性があっても良いでしょう。

男性キャラクターが中心であっても、女性に人気が出ることがあります。「戦国BASARA」は女性に人気ですが、それは女性キャラクターが操作できるからではないでしょう。つまり、女性キャラクターの有無のみで女性向けか否かを語ることはできません。ブラウザゲームである「艦隊これくしょん」や「刀剣乱舞」は、登場するキャラクターの性別と人気のある層の性別が真逆ですね。

と言うわけで、がんばってゲームで操作できるキャラクターの男女比を集計してきましたが、きちんとゲームの中身も吟味するべきである、という自分自身の労力を否定する結論が出るのでした。