ドラクエとFFの女性キャラクターは主体を担わないか

「女性は常に他者化されたきた」具体例として、ドラクエやFFは男性主人公ばかりで、また女性キャラクターはその男性主人公の補佐として扱われるとツイートされているのだが本当だろうか。

男女選択可のゲームが増えている

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2014年にゲームで操作できるキャラクターの男女比率を調べたことがあるのだが、男女を比較すると男性を主人公とするゲームが多いのは間違いない。スポーツものや史実ものでは男性が主人公になりがちである点を考慮しても、男性の主人公が多いだろう。一方で、日本では半数以上がプレイアブルキャラクターとして男女を選べるようになっているし、全体の30%が男女から選択可能になっている。

ドラクエとFFの主人公

さて、一般的なRPGではどうだろうか。日本においてはドラクエとFFで語って問題ないであろう。
ドラクエならば3と4、9、10は男女から主人公を選べる。9は天使なので性別はないと考えられるものの、見た目は基本的に男の子である。9の扱いが微妙だが*1、11作中7作は男性が主人公となっている。

FFはそもそも性別が明言されてなかったり、群像劇であったりと扱いが難しい。
1と3は性別が特に明言されていない。プレイヤーの判断に委ねられている。2の主人公はフリオニールではあるが、ゲームとしてはマリアとガイが固定化されている。実質的に、レオンハルトを含む4人が主役ではなかろうか。これはFFが基本的に群像劇的であるだめだ。たとえば、2はゲーム開始時に、6、7や9はキャラクター加入時にデフォルトの名前を変更できる。6に関しては全員が主人公と明言されている。9に関してもジタン、ビビ、ダガー(ガーネット)の物語性が強い。7はキャラクターの名前が変更できるものの実質的にクラウドの物語である。命名権で判断すると、5については名前を選択できるのがバッツだけのため、主人公はバッツと判断される。12以降は名前を変更できないため、ゲーム上の主人公は12と15は男性で、13は女性となる。12に関しては、物語の主人公がヴァンなのか?という疑問は残るが。
命名権で判断した場合、男性主人公の作品は4, 5, 8, 10, 12, 15と、15作中6作品となる。ゲーム設定上の主人公で考えると先の6作品に2と7、9を加えた場合は9作品となる。この場合、個人的には5を除きたい。また、2と9を含めるかも異論がある。

ドラクエは男性主人公が多いが、FFはそうでもないだろう。物語の主体で考えると、FF6はティナからゲームが始まるし、FF12や13は女性が主体を担っているし、FF10もヒロインたるユウナの物語とも言える。実際、FF10-2ではユウナが主人公である。

女性キャラクターは補助的役割を担わされガチか

次に、女性キャラクターが補助的役割を担うことが多いのは本当だろうか。この点は、ゲームの物語上よりもシステム上で考えて行きたい。結論を先に述べておくと、そうでもない。

ドラクエは回復や補助役としては男性が多いのでは

ドラクエの場合、1は主人公が一人である。とらわれし姫は、まさに他者化された存在だ。3人パーティーとなった2では、ムーンブルクの王女は補助的な役割を担っているが、それはサマルトリアの王子も同じであろう。
3に関しては、そもそも主人公にしても職業にしても男女のどちらも選べるので、誰に補助的な役割を担わせるかはプレイヤー次第である。この点は9も同様となる。
4も主人公の男女を選択できる。補助および回復役はクリフトとミネアであるが、回復役としてはクリフトが優れ、補助としてはミネアが扱いやすい。攻撃の要としても、ライアンとアリーナが存在するが、攻撃力としてはアリーナの方が高い。
5はそもそも人間よりもモンスターの方が多い。また、誰と結婚しても回復役はベホマが使える主人公や勇者である男の子であろう。補助としても、フバーハスクルトが使える男の子の方が有用である。
6は序盤こそミレーユが補助に回りがちだが、回復役としてはベホマを覚えるチャモロの方が適任であろう。そもそも、職業システムのため最終的に誰を補助役にするかはプレイヤー次第である。これは7も同様で、キャラクターの性別は固定されているが役割分担は職業次第である。
8のゼシカはほぼ攻撃役である。状況によっては主人公よりも強い。回復はベホマを覚えるククールの役割となっている。9は前述のの通り、3同様にルイーダの酒場で募集するためパーティーが固定化されていない。10に至ってはMMOのため、まさにプレイヤー次第である。
11では回復や補助役はセーニャかロウであり、男女ともにいる。どちらも、ベホマベホマラーが使える。また主人公もベホマを使用できる。ベホマズンを使えるのは、主人公とセーニャのため、この点を考慮するとセーニャの方が回復向きだろうか。スキルに目を向けた場合は、シルビアのハッスルダンスが便利である。また女性であるマルティナは攻撃役である。

ベホマが使えるキャラクターを選別すると、2はムーンブルクの王女、4は主人公とクリフトとミネア。5は主人公と男の子。6はチャモロ。8は主人公とククール。11は主人公とセーニャ、ロウ。その他は、特定の職業やモンスターでないと取得できない。男女比を見ると、男性9女性3と圧倒的に男性が多い。
補助を考えた場合、スクルトを覚えるのは2ではサマルトリアの王子、4はクリフト、6はミレーユ、8はヤンガスククール、11はセーニャとグレイグで、フバーハだと4のミネア、5の男の子、8はゼシカで11はロウのみ。
調べる中で5でルカニを覚えるのがエリミネーターのみってのが驚きであった。使う必要がないのではあるが。

役割分担の緩いFF

FFは全般的に戦闘における役割分担が緩い。実質的に固定化されてるのは4くらいだろう。4に目を向けると、ローザは回復役であり典型的なヒロインだ。リディアは守るべき女の子として登場するが、後に主人公の危機を救う女性として再登場する。HPが低く物理防御は高くないが、攻撃役として優秀である。
9も比較的固定化されており、回復や補助はダガーエーコの役割となる。ただし、両者は召喚士でもあるので攻撃役としても機能する。また、ダガーはその強大な力故に守るべき存在であると共に、自らの力で運命を切り開く主人公である。10のユウナも同様に召喚士であり、守るべき存在ではあるが自らで戦うことを選択している。ユウナの決意の元に、彼女を守っている図式である。この点も、9のダガーと重なる。
ユウナの役割は回復であるが、召喚は非常に強く序盤のボスは召喚のみで片付けることが可能。システムとしては、ゲームが進むと自由度が高くなるため、どのキャラクターでも攻撃や回復を担える。ただし、キマリは通さない。
FF11と14はMMOのため言うまで無いが、FF12や13も若干の性能差はあるものん、男女で役割分担はない。プレイヤー次第である。13においては戦闘中に適宜変更する必要すらある。FF15は男のロードムービーなのですまんな。

さて、今一度FF1に戻ると、先に述べたように1と3は男女が特に明言されていない。5はジョブジステムのため、戦闘の役割分担はプレイヤー次第である。また、最終的にパーティーは男1と女3となるため、女の比率が多い。ファリスの物語上の立ち位置と、ジョブの絵柄が男っぽい点も踏まえてファリスを攻撃役にするプレイヤーが多いのではなかろうか。
6はアビリティの違いはあるものの、基本的に回復や補助は誰でも使える魔法に依っているため、男女で攻撃役や回復・補助役としての違いはない。ロックはティナやセリスを守るべき存在として扱うが、両者は自分の意思と力で先へ進むキャラクターとして描かれている。

戦闘システムは7ではマテリア、8はジャンクションが中心となるが、どちらも5におけるアビリティシステムを継承している。5とは異なり、好き勝手に付け替えられるため役割分担はプレイヤー次第である。
7のブレイク技に目を向けると、エアリスは回復特化であるものの、ゲームの途中で離脱する。最終的にエアリスの犠牲によって救われる物語である。物語上のヒロインを誰とするかは異論のあるところであろうが、ラストダンジョン前の描写からはティファだろう。彼女は、格闘家であり戦うヒロインである。もちろん、ユフィ派、バレット派も許容する。
8のリミット技に目を向けると、回復や補助的機能を有するのはキスティス、リノア、セルフィと女性陣が多い。男性陣は攻撃特化である。一方で、男性陣はダメージ特化であるため、状況によっては女性陣のリミット技の方が強いことすらある。セルフィのジ・エンドは言うにおよばす、キスティスのてきのわざも知っていれば非常に強い。リノアは無敵技などバリエーションが豊かである。その代わり、ランダム発生であるが。

FFにおいて戦闘面の役割分担は非常に緩く、好きなキャラクターに好きな役割を振れるようになっているシリーズが多い。また、全般的に主体的に物語に関わる女性が多く、男性主人公を立てるためだけの存在ではない。この点では、リノアは異論の分かれる所であろう。

ドラクエとFFで女性が補助的役割を担わされるとは言い難い

主人公の性別に目を向けるとドラクエは11作品中7作品が男性主人公である。FFは判断が難しいものの、命名権ベースでは15作品中6、物語ベースでは15作品中6~9作品となる。ドラクエの方が男性主人公が多いと言えるだろう。FFは性別が明記されていなかったり、群像劇だったりするため必ずしも男性主体の物語ではない。キャラクターの男女比を考慮するにも ゲームで操作できるキャラクターの男女比 2014年のランキングから - 最終防衛ライン3 の結論でも述べたように、女性キャラが多い=女性が主体のゲームとは限らない。艦これやとうらぶなどを見れば明らかである。

ゲームシステム上の戦闘に目を向けると、ドラクエでは回復や補助役は男女共に振り分けられている。回復役では男の方が多い。FFは多くの作品でプレイヤーがキャラクターの役割分担を選択できる。例外としては、4と9であるが、4のリディア、9のダガーは攻撃役としても優秀である。共に、守られる存在から、他者を守る存在になっている点も指摘したい。

男性主人公の補助に回される女性ヒロインの例示としてドラクエやFFを挙げるのは雑な印象論である。男性主人公が多いのは間違いない。しかし、女性が補佐に担わされがちであるとの指摘は当てはまらないケースの方が多い。物語としても戦闘システムにしても「女性は常に他者化されてきた」例示としてドラクエやFFを掲げるのは不適切であろう。

*1:勘違いしてました、すいません