Pimax Portal に出資するのはやめておけ

はじめに

Pimax Portal の PV は魅力的ですが、詳細を見ていくと不明な点が無数にあります。Kickstarter のプロジェクトページも、出資者に詳細を伝える気がないようです。
Pimax がどのような会社かを分かってて出資するなら止めませんけど「安いから」出資するのはやめておきましょう。

Pimax Portal って?

Android 搭載のハンドヘルドゲーム機でありつつ、スタンドアローンVR を楽しめる Pimax PortalKickstarter で出資者を募集しています。
任天堂とVR、ゲーミングUMPCを全部食い荒らそうとするマジでエグい『Pimax Portal』情報まとめ | yoshives なんて、えらく持ち上げた記事もありますが、個人的に出資するにはリスクが高すぎると考えています。

先ず、現時点で詳細な仕様が不明過ぎます。Android 搭載と謳っておきながら、ベースとなる Android OS のバージョンすら明らかになっていません。ホットモックによるデモも少ないです。原神が Android OS 上で動いているようですが、VR 機としてのデモはありません。VR ゴーグルに関しては、装着感すら不明です。


本体の詳細が不明なのに、2023年1月発送となっています。Pimax のこれまでのプロジェクトを顧みても当たり前のように遅れるはずです。

Pimax Portal 本体と VR ゴーグル込みで $399 とお安いですが、いつ届くかも、仕様も不明なガジェットに出資するのはリスクが高すぎます。私は、あまりも雲行きが怪しいので、動向を追うべくリターン無しで $1 だけ出資しました。これなら、バッカー限定公開のアップデートも確認できます。

任天堂とVR、ゲーミングUMPCを全部食い荒らそうとするマジでエグい『Pimax Portal』情報まとめ | yoshives 程には煽ってはいませんが、すまほんさんが宣伝記事を書いていたのを残念に思いました。

それでは、怪しい理由を詳しく述べていきます。

2023年1月発送は不可能

Kickstarter の締め切りは、2023年1月14日に設定されているのに、発送が同月になっています。流石に来年の1月からの発送は無理でしょう。問題はどの程度遅れるのかですが、全く予想できません。

Kickstarter で募った資金は、プロジェクトがゴールした後に2週間程度で、クリエイターに送金されます。つまり、Pimax が資金を受け取るのと発送タイミングがほぼ同じ頃合いと考えられます。Pimax は資金繰りに困る規模の会社ではないと考えられますが、資金の受取直後に発送するのは大変だろうとも想像できます。ちなみに、送金に2週間もかかるのは、出資者が決済エラーになった際の猶予期間が1週間あるからと考えられます。実質的には、1週間で送金可能でしょう。

仕組みは単純だが

Pimax Portal の構想は、スマートフォンVR ゴーグルに挿入する Google Daydream と似ています。視点移動だけの 3DoF である Google Daydream とは異なり、Pimax Portal は 3次元空間内を自由に動ける 6DoF に対応しているようです。ちなみに、視点移動の 3DoF なら Switch でも体験可能です。

6DoF なので、Meta Quest や PICO のように、スタンドアローンでの VR 体験も可能です。価格だけ見ると、先日発売された PICO 4 よりも安価です。ただし、Pimax Store の詳細が不明です。PICO シリーズの弱さはストアアプリが Meta Quest ほど充実していないことにあります。Pimax Portal は PICO シリーズよりも、遊べるゲームが少ないかもしれません。
Pimax Portal は PC を母艦として PC VR も楽しめるようですが、その場合はそれなりのスペックの PC が必要になります。解像度もリフレッシュレートも高いため、最低でも RTX2070 は必要でしょう。

仕組みとしては複雑ではないのですが、搭載される Android の詳細が不明です。現時点でホットモックでのデモがほとんど公開されていないのも気になります。
解像度が 4K で リフレッシュレート が 144Hz のディスプレイは、ハンドヘルドゲーム機としてはオーバースペックで、VR ゴーグルとしても高めです。過去に高解像度の VR ヘッドセットをリリースしてきた Pimax なら可能なクオリティではあるでしょう。ただし、Pimax 5K/8K が遅れた原因はハイスペックな液晶を安定して製造できなかったからです。

リモートプレイとクラウドゲーミングは売りにならない

Pimax Portal に搭載される Android は不明ですが、SoC として Qualcomm XR2 が搭載されるいるので大抵の Android のゲームは楽しめるでしょう。ただ、性能としては Snapdragon 888 よりも劣るため原神を解像度 3840 × 2160、リフレッシュレート 144 Hz でプレイできるとは思えません。Android OS 上では解像度とリフレッシュレートが制限される可能性もあるでしょう。

また、リモートプレイやクラウドゲーミングにも対応するようです。ただ、スマートフォンがあれば、Steam Link や PS Remote Play でリモートプレイができますし、Xbox Cloud Gaming や GeForce NOW でクラウドゲーミングも可能です。Pimax Portal の優位性は VR も楽しめる点でしょうか。ただ、得てして、この手のなんでもできる端末は中途半端になりがちです。PC ゲームが目的なら安価なハンドヘルドゲーム機でリモートプレイするか、 Steam Dock で直接プレイした方が幸せになれるでしょう。

Pimax Portal に限りませんが、無線でゲームをプレイすると遅延は必ず発生します。その点からも、3840 × 2160 の解像度と 144 Hz のリフレッシュレートは、ハンドヘルドゲーム機としてはオーバースペックでしょう。

オプション品も詳細不明

様々なオプション品が紹介されていますが、こちらもホットモックは無く、リリース時期や、価格など、不明な点が多いです。Kickstarter では先行購入の権利を $1 で募集しているようですが、手に入るのはいつになるやら。

先ず、VR 用のレンズとして視野角の広く没入感の高い Horizon と、視野角は狭いが映画鑑賞にてきした Cinema がリリース予定とされていますが、投入時期や価格も不明です。取り替え方法が簡単だといいですね。

Pimax XL は Pimax Portal と合体してより大きなディスプレイをゲームを楽しめるようですが、なぜか解像度が本体の解像度である 3840 × 2160 よりも低い 2560×1600 となっています。リフレッシュレートも 120Hz と低くなっています。

Mini station は AMD 6800U が搭載されるようです。6800U はモバイル向きとしては消費電力が少なくコストパフォーマンスの良い CPU ではありますが、リモートプレイする母艦としては心許ないです。ハンドヘルドゲーム機に搭載すれば、AAA で重いゲームもそれなりに楽しめます。あくまでそれなりのパフォーマンスです。つまり、リモートプレイすればさらにパフォーマンスは低下します。あまり期待はできないでしょう。さらに、Pimax Portal で PC VR として楽しむ母艦としては、圧倒的にスペックが足りていません。6800U のみでは、SteamVR Performance Test は起動不可判定です。

Kinect のようにボディトラッキングに対応した、Portal Deck に関しては悪ふざけかな?と思うくらいに、夢を語っているように思えます。

Daydream のように夢をみるのはいいけども

Pimax Portal の懸念事項をまとめると以下の通りです。

  • Android のバージョンが不明で、ホットモックのデモ映像もほとんどない。
  • Android ゲーム機としては解像度とリフレッシュレートは高いが、チップセットのスペックが足りない。Android の場合は解像度とリフレッシュレートが制限される可能性が高い。
  • リモートプレイを主とするなら、スマートフォンにコントローラを装着するのと大差ないパフォーマンス。
  • スタンドアローンVR を体験できるが、ストアアプリは充実していないと予想される。
  • PC VR を楽しむなら、ディスプレイ解像度から RTX2070 以上のスペックが必須で、お安くない。
  • オプション品が多く紹介されているが、その詳細が一切不明。現時点では、リリースされない可能性も考慮すべき
  • 構想としては Google Daydream に近く単純で実現はしやすそう。 Pimax の高解像度 VR ヘッドセット技術は優れているが、過去のプロジェクトは予定通り進んでいない。

以上の点から、来年1月発送は無理でしょう。現実的な発送時期に関しても、半年から1年の遅れは心した方が良いでしょう。Google Daydream のように空想で終わらないを願います。