結論から述べれば、データそのものに質量はないとするのが妥当だろう。ただし、媒体に記録する場合はその限りではない。
質問者の聞きたいことが「データに質量はあるか」ならば「ない」であるが、「データがない状態とある状態とでパソコンの重さが異なるか」だと答えが違ってくる。
記録媒体にデータを記録して重さが変化するか
議論を単純化するために、コンピュータの電源をオフにした状態とする。つまり、RAM などキャッシュや計算中のデータは考えないものとする。また、データが無い状態を記録媒体が「0」で埋められ、フルを「1」で埋められた状態とする。
現在主流の保存媒体として、SSD や HDD がある。安いラップトップでは eMMC が使われる場合もあるが、フラッシュメモリであり原理的には SSD に近い。これは、SD なども同様。
劣化も考えないものとする。例えば、SSD では酸化膜層の劣化により軽くなるだろうし、HDD は摩耗により軽くなるだろう。これらは、データそのものとは関係が無い。
SSD などのフラッシュメモリは要するにコンデンサである。電荷の有無でデータを管理している。ゲート内に電子がチャージされた状態を「1」とし、無い場合を「0」とすると、重さに違いはでるだろうか。SSD の半導体内で電子が移動するだけなので、系の全体の重さは変わらない。
HDD は電子ではなく磁気を利用している。磁石の向きでデータを保存している。小さな磁石が並んでいるが、NS で揃った状態を「0」、それと逆向きの SN を「1」とする。この場合も、磁石の向きが変わっただけなので全体の重さは変わらない。
コンピュータの歴史を考えれば、パンチカードや磁気テープ、フロッピーディスクなどにデータが保存されてきた。ただし、これらは基本的に外部記憶装置でありコンピュータの重さに含めるかは意見の分かれるところだ。
パンチカードは、穴を開けた状態の方が軽くなる。磁気テープやフロッピーディスクでは、HDD 同様に重さは変わらない。
光メディアはどうだろう。CD や DVD などはピットと呼ばれる溝によりデータを保存する。つまり、ピットが多いほど軽くなる。これはレコードも同様だ。ただし、CDR や DVDR では事情が変わってくる。CDR などは色素をレーザーによって化学変化させデータを記録する。主に酸化還元を利用しているが、求核と求電材料の組合せであり、その間で電子のやり取りがなされるため、記録によって系全体の重さは変わらない。
MO や MD は、レーザーにより磁気を読み取り、レーザーによる熱で磁気を反転さえデータを記録している。HDD 同様に重さは変わらない。
保存されたデータのエネルギーが高いか
質量とエネルギーは等価である。エネルギー=質量ではないが、反応の前後でエネルギーが異なれば系の質量も異なるはずである。
SSD は、ゲート内に電子がチャージされた状態の方がエネルギー高い。つまり、状態「1」は「0」よりも重い。記録媒体が SSD のパソコンではデータがフルの状態の方が重い。
HDD では、磁石の向きが揃っている方がエネルギーが低い。つまり、「0」で埋まっている状態に「1」を書き込むと重くなる。データが増えるほど重くなるのだが、フルの状態、つまり「1」で埋まっていると、全ての磁石がそろっていることになり、エネルギーは空の状態と同じになる。つまり、データが無い状態とフルの状態で重さは変わらない。
ただし、この考え方は質問者の意図に反すると思われる。データがフルの状態とは、これ以上データを書き込めない状態であろう。この場合は、磁石の向きがバラバラである。つまり、データがフルの方が重くなる。
ただし、この重さの違いを測定できるかは別問題であるが。
データに重さはあるのか
ブックマークコメントにいくつか例示がある。
例えばオセロは、白を「0」、黒を「1」とした場合に、二進数で情報を表示できる。並べ方の違いはあれども重さに違いはない。
あるいは、粘土板にくさび形文字を記述する場合も同様だ。くさびに粘度がつかないと仮定すると、文字を記録する前後で粘土板の重さは変わらない。
データを情報と考えると、情報は光によって伝達可能である。光子には質量がない。つまり、質量 0 で情報を伝えられるのだから、データそのものに質量はないと考えるのが妥当だろう。
私の答え
データが空とフルの状態の定義によるが、SSD にしても HDD にしても測定できるかは別にしてフルの方が重いと考えられる。
一方で、データそのものには質量はない、あるいは必要無いと考えられる。