エイプリルフールの価値は / 2006年から2021年のエイプリルフール

2006年から2021年までのエイプリルフールについて動向を追ってみました。

笑いは狭い方が面白い

エイプリルフールが盛り上がらないというか、下手に力を入れすぎたネタが多いので、もっと気楽に力を抜いたネタをやって欲しいと思います。
エイプリルフールに類する嘘ネタは、分かる人だけが分かればよいという構造が笑いを生むため、そもそもターゲットを狭めた方が笑いが取れるのです。ただ、昨今は大手メーカーの参入などにより嘘ネタの大衆化が進んでいました。その結果、届かなくてもいい層に広まったり、ネタのクオリティは高いのに笑いの密度が薄まったりしていました。個人的には、エイプリルフールの期間中は情報取得が面倒になるので嫌でした。

昨年は COVID-19 の影響のためエイプリルフール自体がやや下火になりました。今年は Twitter でのツイートに留めたり、あるいはスマホ向けゲームのイベントとしてのエイプリルフール企画が主立っており、ターゲットが絞れているし、情報汚染も軽度で済んで、嬉しい限りです。

もっと適当にエイプリルフールして欲しい

私自身としては、インターネットのエイプリルフール企画は好きでしたが、いつの頃からか追うのを辞めました。個人サイトやインターネットに軸足のあるニュースサイトやネットサービスが行う企画は面白がっていました。しかし、一般的な企業が参入するようになってからは情報汚染のデメリットを感じるようになってきました。

特に、日本の4月1日は新年度でもあり社名の変更などが一斉に行われる中、嘘か真が良く分からない情報が飛び交うため混乱します。

今年だと、ハフポスト日本版とBuzzFeed Japanの悪魔合体の発表が3月31日に行われていましたが、これが4月1日だと、エイプリルフールのコラボ企画だと思われたでしょう。

嘘から出たまこと

4月1日に発表したせいで信じて貰えなかった企画もあります。例えば、2008年の Key による Rewrite の発表とか。発表タイミングや企画内容もさることながら、「Key新作」ではなく「ey新作」と誤字があるなど疑われるのもやむなしな発表でしたけども。

似たような事例として R-TYPE FINAL2 がありますが、こちらはエイプリルフールにちなんだ事情があります。
R-TYPE FINAL2 の発表は、2019年4月1日に行われました。当初はエイプリルフール企画だと疑われていましたが、クラウドファンディングを募集し2021年4月29日に発売されます。今から発売が楽しみです。

開発者である九条一馬さんによるとエイプリルフール用のネタだったものをツイートしてみたら、反響があったので制作する決意ができたのだとか。2019年のエイプリルフールに発表したのも、このような思いがあったからかもしれません。

私にとって印象深いエイプリルフールといえば、2014年のGoogleマップポケモンを探す企画です。ナイアンテックの野村達雄さんが、Google在籍時に行った仕事で、ポケモンGO開発のきっかけともなりました。これも、R-TYPE FINAL2 と同様に「嘘から出たまこと」みたいな事例です。
野村さんは、前年の2013年にドラクエ風マップを企画しており、センスもさることならが、それを実現する交渉力と開発力がずば抜けています。

エイプリルフールの変遷

私の記憶としては、個人サイトやインターネットを基軸にするニュースサイトや通信サービスなどがエイプリルフールを行っていたところ、近年は大手企業も参入するようになったと思っているのですが、実際はどうなのでしょうか。

しかしながら、期間限定のエイプリルフールを過ぎ去ってから追うのは困難です。そこで、倉庫で話題の GIGAZINE さんが2006年からエイプリルフールの企画をまとめているので参考にしてみました。

2006年のまとめはリンクしかありませんが、OKWave やヤフージャパンなど、インターネット事業のサイトや個人サイトの企画がほとんどです。

2007年では企画が増えていますが、GIGAZINE がタレコミを募集しているので単純には比較できませんね。

2008年は2エントリーにまたがっています。
この頃からゲーム会社の企画も増え始めます。

2009年頃から徐々に個人サイトの企画が減り始めます。というか、個人サイトそのものが減少してきた頃合いでしょうか。
自動車ブランド MINI もエイプリルフールの企画を行っていました。

2010年は、朝日新聞が参戦。企業の企画が増え始めます。

2011年は震災影響か、やや企業は減ったような印象。
ネタとしては、同年に放送されていたまどかマギカおよび、震災に関連して節電、ポポポポーンが多い気が。
また、2005年から人気を博した円谷のエイプリルフールは2011年が最後となりました。

2012年は、auレッドブルが参戦。企業物が多いですが、個人サイトもまだまだ頑張っています。

2013年は、講談社が参入。海外自動車メーカーや、海外映画などの企画も。日本ローカライズされたエイプリルフール企画なのでしょうか。

2014年に、docomo が参戦。和菓子の倉田屋とTENGAがコラボしています(いいのか?*1

2015年は、ロッテ、コカ・コーラ、キリンなどの飲食製造業の参入が目立ちます。この辺から、企業の参入がさらに増えてきました。

2016年前後から、ボルボゴルゴ13とのコラボのように、他企業とのコラボ企画が見られるように。また、ローソン、ミスタードーナツ、ライザップ、カルビーなど企業の企画がさらに増加しています。
FGOでお馴染みとなったエイプリルフール期間限定ゲームも同年からです。最初の企画は Fate/Grand Order Gutentag Omen でした。

-エイプリルフールに便乗しているサイトまとめ2017年版 - GIGAZINE
前年の2016年に「君の名は。」が公開された影響で、au の「君の縄。」や、タニタとシャープの Twitter アカウントが入れ替わるなど、関連するネタが多いです。

2017年頃から顕著ですが、全体のクオリティが上がりすぎ。新川洋司が担当した「忍者専用グランドセイコー」はメタルギアソリッドのファンとして欲しくなるクオリティの高さ。

ゆるキャン△」と「宇宙よりも遠い場所」のコラボはいいですね。翌年は COVID-19 のため、実質的に2019年のエイプリルフールが最も極まっていると感じました。

コロナの影響か、今まで参加していた企業の企画がなくなりました。また、Twitter での告知が増加しています。企画としては、エイプリルフール限定企画が目立ちます。

スマホゲームのエイプリルフール限定企画が多いですね。また、企業の参加も戻ってきました、専用のウェブサイトを作るのではなく Twitter アカウントでの告知で留める内容が増えました。

フェイクとジョーク

数が多いので、ざっと見た感想でしかありませんが、5年ごとに変遷しています。円谷のエイプリルフールは2005年から始まりましたが、その頃はネットサービスや個人サイトによる企画が多く狭いネタだったように思います。
2010年前後からネット関連以外の企業も増え始めますが、円谷のエイプリルフールは2011年に終了しました。これも一つのターニングポイントでしょう。
2015年以降は企業がどんどん参入し2019年には、エイプリルフール企画が極まりました。
しかし、2020年は COVID-19 の影響でやや下火になります。2021年は復活したものの、スマホゲームの期間限定ゲームや、Twitter の企業アカウントでのツイートに留まるなど、以前よりは落ち着いた内容になったと思います。

昨今は、フェイクニュースやディープフェイクなど、嘘の価値が変わってきています。嘘がジョークとして成り立つのは、嘘だと分かる、もしくは嘘だと明かせる範囲に留まります。つまり、本来は非常に狭い範囲でしかジョークとして成立しません。2015年前後に企業発のエイプリルフールの企画が増えましたが、そのせいか広い範囲に届きすぎたように思います。
個人的には、2021年は狭い範囲に取捨選択してエイプリルフールの企画が届けられたように感じます。この点で、旧来行われていた個人サイトなど狭い文化圏で行われたいたエイプリルフールに回帰したようにも感じます。

*1:いいんです