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第3回 旧スクウェアゲーム音楽を語る 「飽きない聖剣伝説2」

菊田さんの「不思議なお話を」

ゲームソフトは1993年8月6日発売で、9800円。ただし税別なので、3%足すと1万円越え。マルチタップ対応で3人プレイができる。夏休みに従兄弟とプレイした思い出が蘇ります。
GBでFF外伝として発売された「聖剣伝説」の二作目。FFから脱却し、マナを中心として聖剣伝説の世界観を確立した作品。2の開発チームは3で解散しているので、その他シリーズも「聖剣伝説」という名は冠されているが、趣旨の異なるゲームとなっている。
元々は、シームレスバトルとして立案されたもう一つの「FF4」の姿。CD-ROM版SFC用ソフト案件名「クロノトリガー」として開発される予定だったが、CD-ROM版のSFCが開発自体が中止される。バトルシステムのみを洗い直し「聖剣伝説2」として開発される。「クロノトリガー」は堀井雄二を加え、ドリームプロジェクトとになる。
この後を見ると、「クロノトリガー」の2として開発された「ゼノギアス」、そして改めて続編として作られた「クロノ・クロス」、シームレスバトルの一つの完成系はFF11や12に引き継がれるなど、スクウェアの大きな流れの源となった作品である。

聖剣伝説2 オリジナル・サウンド・ヴァージョン

聖剣伝説2 オリジナル・サウンド・ヴァージョン

作曲は、菊田裕樹。作曲以外にも、漫画を描いたり、ゲームをプロデュースしたりと非常に多彩な人である。スクウェアのゲームに携わったのはFF4のデバッグからで、ロマサガの効果音を担当し、3作品目に「聖剣伝説2」の作曲を手がける。ロマサガで効果音を担当したからなのか、音源に対するこだわりが深く、聖剣伝説2、3では音色の選定からエフェクト、曲データの最終調整まで自分で行っていると言う。ただし、音源にこだわりすぎたためゲーム内のSEのチャンネルまで使ってしまったためBGMが音割れしている。
サントラはパッケージ裏を見ると、リリースは1993年8月6日。発売はNTT出版、販売はアメリカーナ・レコードです。ちなみに、SEは光田康典伊藤賢治が担当しており、音源開発に関してはスクウェアで一番豪華なゲームかもしれません。

「天使の怖れ」からはじまる物語

聖剣伝説2は本当に音源にこだわりすぎで、電源を入れた直後の「SQUARE SOFT」と共に流れる獣の咆哮(?)には当時衝撃を受けました。久しぶりにプレイする際も、この音を聞くたびに「聖剣伝説2」をプレイするんだなと感慨深くなります。オープニング曲である「天使の怖れ」は冒頭の咆哮も曲の一部であり、サントラにも収録されています。その後タイトルとスッタフ名と共に曲が流れ始め、うっそうと茂ったマナの木のグラフィックが全容を表します。このグラフィックも大変美しい。ゲームソフトの箱絵であり、サントラのジャケットでもあります。静かで、若干のさびしさを感じさせ、マナの木の神秘性を引き立たせる曲です。この神秘性は「聖剣伝説2」を語る上で最も大切なキーワードでしょう。菊田さん自身は作曲するスタンスとして、ゲーム音楽はゲームを表現するための音楽で、前に出すぎてはいけない。まさに背景曲であり、ゲームをサポートするための存在。曲自体に飽きてはいけないし、当たり前のように存在し感情を揺らすようなものが良いと考えており、処女作である「聖剣伝説2」でも「聖剣伝説2」を表現することに徹している。だから、曲全体が「神秘的」なのだろう。
しかし、同時に菊田さんは音源にこだわるなど実験的でアグレッシブな態度で作曲をしている。背景曲で裏方で目立たないようになっているが、曲作りに対するこだわりが「聖剣伝説2」の曲群に菊田さんらしさがにじみ出ているように感じる。そもそも経歴を見ても菊田さん自体が神秘的な人です。
「天使の怖れ」は聖地に赴き、マナの木に出会ったときにも流れます。オープニングが再起される演出はすばらしいなと思います。また、編曲である「君を忘れない」も重要なシーンで流れることが多い曲で、聖剣伝説2のテーマ的な曲であります。

神秘的という点なら、「暗黒星」も良いですね。古代大陸で流れ、要塞浮上後に「予感」となるまでフラミーの曲となります。古代大陸が浮上後に流れるゆっくりとした曲ですが、地の底からわきあがるような感覚は大陸の浮上をイメージさせます。曲調は落ち着いた曲で物語の急転との対照性がが何か大きな秘密が待ち受けているなと思わせる曲で、私は好きです。フラミーのテーマは「未知への飛行」が軽快な曲調で、空を駆け回るという点で最もフラミーとマッチしているかなと当時思っていました。しかし、ストーリーや要塞浮上後のフラミーとの関係を考えると「予感」という曲も実は今後を案じさせていたのですね。今聞くと先を知っているだけに胸が詰まります。「予感」は「暗黒星」と打って変わってリズミカルな曲。何か不安を誘い、ゲーム内の雷のSEが本当に良く似合います。
「未知への飛行」は、初めてフラミーを太鼓で呼び出し、SFCの機能を活かしまくったエフェクト共にやってきた後に流れますが、当時自由に空を駆け回ることができるようになったという喜びに興奮したことを覚えています。やはり、スクウェアのゲームは空を飛んでからが本番だなと。「未知への飛行」のイントロは空へ浮き上がる感じがします。そして、まさに「天かける」というテンポで進行し、フラミーの三次元的飛行システムもあいまって、いつまでも空を飛んでいたいなと感じさせます。

聞いて飽きない「少年は荒野をめざす」

背景曲でありながら、プレイヤの感情を揺さぶると言う意味では僕は「少年は荒野をめざす」が好きですね。何故好きなのかは聖剣伝説2の戦闘が好きで、主にフィールドを歩き回っては敵を倒していたからかもしれません。緑豊かな野を駆け巡るという意味で聖剣伝説2のフィールド音楽を代表する曲だと思います。
「君は海を見たか」は「少年は荒野をめざす」の編曲で、元はやさしい音ですが、こちらは力強い曲となっている。ドラムで刻まれるリズムが軽快でいいですね。題名とは裏腹に、全然海とは関係ない場所、例えば浮遊大陸内のフィールド音楽として流れるのですが、力強さ故に長いダンジョンを突き進むぞ!という気にさせます。
聖剣伝説2の曲名は、他のゲーム音楽に比べ印象的で、未だに覚えているものがあるくらい。曲名自体に元ネタがあることが一因で、例えば、「少年は荒野をめざす」は同名の少女マンガの題名からで、「君は海を見たか」は映画から。曲名の元ネタは へにょべlog | 聖剣伝説2、曲名元ネタ補完計画nJOY:聖剣伝説2>サントラ が詳しいです。それぞれの名前を継承しつつ再構築された曲となっています。
その他、聖剣伝説2はアクションRPGということでフィールド音楽を聞く機会が多い。「遠雷」は野山をゆったり散歩しているような、砂漠を延々と歩く際に流れる「熱砂の秘密」は荒廃的、氷の国で流れる物静かな「ねがい」など場所ごとにマッチして、ずっと流れているのに聞いていて飽きない曲となっている。

「危機」感を煽るボス戦闘音楽

アクションRPGということで、雑魚戦でのバトル音楽はありません。しかし、少ない故にバトル音楽が目立ちます。ボス戦の音楽である「危機」が好きだと言う方は多いのではないでしょうか。僕も大好きです。題名どおり、危機感を煽る曲です。イントロからして、テンポが速く強い敵が出てきたなと焦る曲調。イントロが数回繰り返されると、妖しい雰囲気に変わりボスがどこかに隠れたような感じにさせられます。特にステレオの効果が、どこにいる!という雰囲気を醸し出している。そして、やや曲が落ち着いたかと思うと再度イントロに帰り危機感を煽られると。「危機」を聞いていると、思い出すのはレベルやプレイヤの熟練度が低かった序盤の敵。エリニース城のタイガーキメラは火だるまや、遠距離攻撃できる武器じゃないと届かない所に逃げるなど序盤にしては強すぎます。古代遺跡のルームガーダーも壁がどんどん迫ってくるので時間内に倒せず、何度全滅させられたか・・・。まぁ、聖剣伝説2のボス戦に関してはセレクトバグのせいでボス勝利後もフリーズする危険性があるので、ボス戦が終了しても気が抜けないという意味で本当に「危機」なんですけど(笑)。
他のボス戦の曲としては、ラスボス前の黒幕ダークリッチ戦で流れる「呪術師」とラスボス戦の「子午線の祀り」がありますが、どちらも好きです。「呪術師」は完全にインドネシアの「ケチャ」を参考にした曲でしょう。ここにも音源にこだわる菊田さんが垣間見えます。SFC初頭で人の声という難しい音源を再現するのは相当なものだったのではないかなと思います。曲は鐘の音からはじまり、奥の方から旋律が鳴り始め、ケチャの声と鉄器の音が鳴り響く。初めて聞いたときは、こんな曲あるんだなと衝撃を受けました。「ケチャ」のリズムが大変あっている。そもそも「ケチャ」自体が呪術の曲であり、聞いているとトランス状態的な、何かに憑かれた状態になります。これは「呪術師」も同様で、ずっと聞いてるとなんだかおかしな気分になってきます。これがダークリッチという存在にあっているのかもしれません。ケチャの声と共に挿入される鉄器の音も恐らく同じインドネシアの音楽であるガムランを参考にしてるのかなと。ガムランケチャ同様に、ずっと聴いているとなんだか気持ちよくなる曲です。
ダークリッチ戦後、ラスボスへ挑む前に「そのひとつは希望」が流れます。ラスボスに挑むに当たってポポイの決意、ランディの決意、プリムの決意が込められたイベントシーンです。特にポポイの決意には題名が表すように「ひとつの希望」はあったのでしょうか。そして、ラスボスで流れるは「子午線の祀り」。曲の入りからしてカッコイイ。スピード感に溢れ、アクションRPGである聖剣伝説のラスボスに相応しい曲です。曲の入りも良いですが中盤から最後にかけた落ち着いた曲調の部分も、ラスボスだから倒さなければ、でも倒したくないという心情を掻き立てられるようです。

「ひとみを閉じて」聞いてみる

サントラの最後の締めは「ひとみを閉じて」。宿屋や全滅時に流れる曲です。通常はエンドタイトルの曲がサントラの最後に来ることが多いですが、「ひとみを閉じて」を持ってきたことでサントラが締まると共に、もう一度最初から聞こうかな、あるいは再プレイしようかなと喚起させるようになっていると思います。また、エンディングの曲名が「最後から二番目の真実」で「ひとみを閉じて」の前に収録されているのも関係するでしょう。
エンドタイトルで流れるのは「翼はもうはばたかない」。エンディングに「そのひとつの希望」があったのかは分かりません。「翼はもうはばたかない」はプレイヤに悲哀を想起させる曲です。聖剣伝説2は絵柄こそポップですが、物語は悲しく曲も悲しい。特に「翼はもうはばたかない」はその中でも哀愁的。曲名も悲しいですね。でも、エンドタイトルに流れるのに相応しい曲だと思います。

環境音を用いた革新的なアレンジアルバムである「secret of mana」についても語りたかったのですが、またしても語りすぎですのでまた別の機会で語ることにします。その他のゲームのアレンジ曲に関しても、原音を紹介し終ったら語りたいなと思ってます。

作曲家としての菊田裕樹さんの原点となるゲームであり、そして全てが詰まっているように感じます。音源にもこだわりがあり、今聞いても遜色がない。そして何より、背景曲であることに徹して目立たないように作ってあるはずなのに、聞くと当時が思い出される。裏方であることに徹しゲームの雰囲気に合わせることを目標としているのに、菊田さんが見えてくるというある意味逆説的なゲーム音楽だなと。
ゲーム自体も、クロノトリガーなどにつながり、スクウェアに大きな流れを作り出したゲームです。今ならWiiのヴァーチャルコンソールでもプレイできます。セレクトバグとか各種バグは直ってるのかなぁって、nJOY:聖剣伝説2>VC版「聖剣伝説2」について によるとバグは改善されていない模様。残念です。
気になる次回は、下村陽子さんを語りたいので「ライブ・ア・ライブ」で行く予定です。