「申し入れ」の内容とは
クジラックス氏のツイートと報道を見比べると、受ける印象が違ってきます。
ツイートを見ていると、そこまで仰々しい「申し入れ」ではなかったようですが、新聞からはかなり強い「要請」があったように感じられます。
捜査上の問題もあり、クジラックス氏も全てを述べることはできないでしょうし(ちょっと開陳しすぎっぽい気もします)、「なんでわたしだけぇぇぇぇ」ともツイートしているので、実際の「相談と報告」がどこまで和やかだったのか不明ではありますが、埼玉新聞などで報道されるように、警察が「作中の行為を真似すると犯罪になる点を注意喚起するように促し」、それをクジラックス氏が了承したのは間違いないように思われます。
本件は、クジラックス氏と実際に面会した警官や、幹部、および発表を行った広報、そしてそれを受けて記事にした記者との間にかなりの齟齬があるように感じられます。特に気になるのは、毎日新聞のみが、『漫画家は「少女が性的被害に遭うような漫画は今後描かない」と了承した』、などと書いている点。これが事実ならば問題ですが、クジラックス氏のツイートや埼玉新聞、NHKなどの記事と比較するに、この点は毎日新聞が警察発表から勝手に読み取っていると考えられます。つまり、良い言い方をすれば誤解、悪く言えば飛ばし、もしくは捏造。
同人誌だったのでややこしい事態に
創作物を模倣したとされる犯行は本件以外でも耳にします。「申し入れ」自体は、警察がお役所仕事をしていることを示すある種のアリバイでもあり、通常ならば、書籍なら出版社、テレビ番組などなら放送局や制作会社など、作者本人ではなく流布している企業に「申し入れ」をするのでしょう。しかし、今回は「同人誌」であったため、作家に直接「申し入れ」をするより仕方ありません。
さらに本件は流布されている現状も通常とは異なっていたと考えられます。同人誌は限られた部数しか流布されないはずですが、該当作品は違法アップロードにより拡散されていたようです。クジラックス氏のツイートから判断にするに、警察も違法アップロードを問題視しているようで、削除要請も行っているようです。著作権違反が基本的には親告罪であるが故に、この点からも権利者であるクジラックス氏本人に直接「申し入れ」する必要があったのかなと。
警察も報道機関もクジラックス氏もギリギリの線で譲歩している
わいせつ行為を行った男性は「放射能調査」の手口を複数回おこなっていたようで、そのため警察としても「申し入れ」をする必要があったのでしょう。通報されたのもその手口だったようです。
個人的には、注意書きをして下さい程度の「申し入れ」であったならば警察の仕事の範疇だろうと考えます。違法アップロードにも対処しているようで、そこまで横暴な事をしているようには思えません。同人作品のため出版社を介することはできず、そのため作者へ直接アプローチするしかなかったでしょう。
クジラックス氏のツイートから判断にするに、警察発表では作品名と作家名も公開されたようですが、報道では公表されていません。報道機関の裁量で控えたのでしょうが、クジラックス氏のツイートがなくても知ってる人なら分かる内容で、それだけ特徴があるとも言えます。また、報道内容としても「影響を受けて犯行におよんだ」ではなく「模倣した」であり、「漫画家が悪い」、という論調でもありません。「創作物の影響」とか「現実と創作物の区別」とは少々文脈が異なるように感じられます。埼玉新聞によると捜査にあたった警察も表現の自由との兼ね合いは認識しているようなので、毎日新聞による『漫画家は「少女が性的被害に遭うような漫画は今後描かない」と了承した』に関しては、警察発表の解釈を盛っているように思えます。実際の所は「注意喚起」の要請に留まっているのではないかと。ただし、警察発表の内容が分からないため、判断のしようがありませんが。
周囲がクジラックス氏の名前を拡散している感
この件に関しては、クジラックス氏の名前などが報道されていないのに、周囲が騒ぐことで拡散させている面があり、すごくモヤモヤしています。
「表現の自由」の問題ではありますが、警察が「申し入れ」をするのは法的に問題無いのかとか、「圧力」であるとするのもやや過激に感じられるのもモヤモヤを増幅させます。
追記 6月15日 クジラックス氏より追加のツイート
一連のツイートを読むと、毎日新聞の内容も間違いではないですが、語弊のある感じですね。