ゲームコントローラーの戦犯はSONYじゃない を受け手の釣りタイトル。
ただ、決定ボタンの位置が日本では右ボタンで、海外だと下ボタンが主流になったのは PS と PS2 の影響が非常に大きいです。
日本では PS と PS2 共に本体での決定ボタンは ○ です。海外だと PS は日本と同じ ○ だったのが、PS2 以降では × に変更されています。つまり、PS2 以降で日本と海外ではゲーム機本体における決定ボタンの位置が右と下と異なった戦犯 = 主因は SONY にあると述べても問題無いでしょう。
ちなみに、PS4 までは決定ボタンをオプションで変更できましたが、PS5 では海外で主流となっている × のみとなりました。
- SCPH-1000; https://archive.org/details/scph-1000-manual
- SCPH-9000; https://www.playstation.com/content/dam/global_pdc/en/corporate/support/manuals/ps-docs/JA_SCPH-9000_WEB.pdf
- SCPH-9001 / 94010; https://www.videogameconsolelibrary.com/images/Manuals/95_Sony_PS1_9001-Manual.pdf
- SCPH-50000 MB/NH; https://www.playstation.com/content/dam/global_pdc/en/corporate/support/manuals/ps2-docs/JA_SCPH-50000MBNH_WEB.pdf
- SCPH-50001 / 97011; https://www.videogameconsolelibrary.com/images/Manuals/ps2-SCPH-50001.pdf
キーコンフィグの問題ではないのだ
ゲームコンローラの戦犯はなんどか話題になりますが、今回の発端は お願いだからめっちゃ協力して”ボタン表記がすべて真逆”なのを統一してほしい「脳がバグる」 - Togetter です。A B X Y の文字配置が任天堂と Xbox で異なるのは、SEGA が絡んでいるからでしょう。Xbox の A B X Y の配置はそのままドリームキャストです。
文字配列の違いはキーコンフィグで配置を入れ替えれば解決する問題でもないのです。
ゲームの UI に「A 決定」「B キャンセル」とか「Y メニュー」と表示されているので、任天堂と Xbox のコントローラを行き来していると混乱することがあります。
慣れではあるので NINTENDO Switch でスプラトゥーン3やった後に、Steam で ELDEN RING をやっても基本的には混乱しません。ただ、よく間違えるのが「決定ボタンの位置」です。共に文字の上では同じ A 決定の B キャンセルですが配置が異なります。任天堂なら右決定で、Xbox だと下決定です。個人的には PS5 も下決定になったので任天堂に折れて欲しい……。
SFC の頃まで決定ボタンの位置は定まっていなかった
ゲーム機のコントローラーのボタン配置と決定ボタンの変遷(その1) - 名称未設定。 に詳しくまとめられいますが、SFC の初期まで、決定ボタンの位置はゲームによってマチマチです。A B X Y の全部が決定。A B が決定で、X Y がキャンセルなどもありました。
ドラクエや FF などでは A ボタンで決定ですが、B ボタンで決定するゲームもありました。例えば、がんばれゴエモンシリーズは FC と SFC を通して B ボタンが決定でした。FF と同じスクウェアだと、聖剣伝説2は B ボタン決定です。でも、聖剣伝説3 は A ボタンで決定になっています。
アクションゲームではメニュー画面が無い場合も多く「決定ボタン」が必須ではなく、RPG の人気が高かったこともあり、SFC の中期には A ボタンで決定、B ボタンでキャンセルのゲームが増えていきます。
PS の ○ × △ □
PS では A B X Y の代わりに、PS のシンボルでもある ○ × △ □ が採用されます。PS では SFC の A の位置に ○ が、B の位置に × が配されました。これは、恐らく SFC 末期における A ボタンで決定、B ボタンでキャンセルを踏襲したのでしょう。日本人的には、○ は肯定、× は否定なのですんなり受け入れられるシンボルです。
しかし、これが災いしてゲームコンローラの決定ボタンの位置が右と下に分かれてしまいました。
ゲーム機のコントローラーのボタン配置と決定ボタンの変遷(その2) - 名称未設定。 にある表を一目瞭然です。北米で PS のゲームは × 決定が主流となっています。
北米では チェックボックスに ☒ と書き込むため、× が決定になったとの説があります。私は長らくこの説を疑っていました。その理由の一つは、× の意味合いが曖昧なことと、もう一つは、北米ではメガドライブ(GENESIS)の影響が無視できないだろうと考えたからです。
英語圏での × の意味は曖昧です。Windows の閉じるは「×」が使用されています。チェックボックスだと、× ではなく ✓ が使われることもあります。また、チェックマークはオンとオフの切り替えで必ずしも決定 = Enter を意味しません。
メガドライブも SFC 同様に決定ボタンの位置がゲームよって様々です。メガドライブには左から A B C ボタンが配置されていますが、A 決定、C 決定、A とC の両方が決定など、色々なゲームがあります。そのため、メガドライブは決定的な証拠でもありませんでした。
メディアプレイヤーとしての PS
チェックボックス説には懐疑的だったのですが、PS の立ち上げに関わった内海州史へのインタビュー記事を読みと正しそうです。 ゲーム機のコントローラーのボタン配置と決定ボタンの変遷(その2) - 名称未設定。 にある表からも北米では PS の頃に × による決定ボタンが主流だったのは明らかでしょう。
改めて PS の影響を考えると、PS 以前と以後ではゲーム機に対する認識が異なっていることに気がつきます。
PS の頃はセガサターンの他に、3DO やピピンアットマークなどが発売されましたが、この世代のゲーム機はメディアプレイヤーとしても注目されていました。
SFC は本体だけでは何もできず、ロムを指さないと起動しません。PS では CD Player として使えるほか、メモリカードの管理など、ゲーム機本体のみで起動します。そのためゲーム機本体に「決定ボタン」を設定する必要があります。
冒頭の図に示したように、PS の説明書を確認すると日本も海外版も ○ が決定 = Enter となっています。しかし、PS2 だと日本は ○ で、海外は × が決定 = Enter ボタンになっています。恐らく、北米版の PS のゲームでは、× 決定が主流だったため、それに合わせたのでしょう。本体とゲームでの決定ボタンの位置が違っていたら面倒極まりないです。PS5 で、日本のユーザーが陥っているのと同じ状況ですね。
PS2 は DVD 再生が売りだった点からも、より一層本体のみで操作する機会が増えました。それ故に海外ではゲームとも齟齬のない × ボタンに Enter が振り分けられたのではないでしょうか。
メディアプレイヤーとしての Enter ボタン
ゲーム機をメディアプレイヤーとしてとらえたとき、それぞれのゲーム機での決定ボタンの位置はどのようになっているでしょうか。
CD をメディアとしていち早く採用したのは PC Engine の CD-ROM2 や PC Engine Duo です。PC Engine は左から、II と I ボタンが配置され、右側の I が決定ボタンです。Duo-RX では 6 ボタンとなりましたが、右端の I が決定ボタンとなっています。ちなみに、配列が独特で、上部が左から IV, V, VI で、下部に左から III, II, I と配されています。 PC Engine の II I 配置をを拡張した形式ですが、なぜ折り返した。そもそも、ローマ数字では視認性が悪すぎます。
セガサターンも 6 ボタンで上部が X Y Z で下部が A B C となっています。決定ボタンは A と C でメガドライブでしばし採用された方式です。また、ドリームキャストは A B X Y ですが、A B と X Y の左右が任天堂とは逆になっています。決定は下に位置する A ボタンで、Xbox も同様です。
3DO はメガドライブと同じ A B C の3ボタンで A が決定に割り当てられていました。
ちなみに ピピンアットマークは、上ボタンが再生、左右が巻き戻しと早送りで、下が停止となっています。
過去の資産があるため変更できない
ゲームコントローラーの戦犯はSONYじゃない にも書かれていますが、任天堂は NINTENDO 64 以降は、コントローラの形と共にボタン配置が大きく様変わりしています。
決定ボタンこそ A のままですが、NINTENDO 64 は B が左、A が下、C ボタンが右に配されているので下ボタン決定です。GC は SFC っぽいですが、A ボタンが大きく真ん中に配されいるため、実質的に真ん中決定となっています。Wii コントローラに至っては A ボタンしかありません。Wii U と Switch は SFC と同じ配置で、この配置は DS や 3DS で継続されていました。手に持ってプレイするゲーム機のため、NINTENDO 64 や GC のような配置は無理があります。また、VC などで SFC のゲームに対応しているため、文字の配置を変更できない事情もあるでしょう。
任天堂にしても、Xbox にしても、過去の資産があるからこそ、今更ボタンの文字配列を変更できないでしょう。ただ、個人的には下ボタン決定に統一して欲しいので、任天堂にはそこを曲げて欲しい。
PS2 の影響が無視できなかった
まとめると
- SFC やメガドライブの頃までは、決定ボタンの配置は定まっていなかった。
- 強いて言えば、SFC では右に位置する A 決定が主流だった。
- PS はそれを受けて ○ を 決定として使われる A に、× をキャンセルの B に配置した。
- 日本人的には ○ が肯定で、× が否定である。
- ところが、北米で × がチェックボックスの ☒ に相当するため、北米での PS のゲームは × 決定が主流となった。
- PS や 特に DVD 再生機能のある PS2 では、ゲーム機本体に決定ボタンを設定する必要があった。
- 日本と海外共に PS 本体の決定ボタンは ○ であった。しかし、 PS2 の決定ボタンは、海外では × に変更された。
- Xbox は任天堂と同じ A 決定だが、PS の × と同じ下に位置する。
- 結果的に PS2 以降では、日本と海外でゲーム機本体の決定ボタンの位置が、右と下と異なってしまった。
戦犯ではイメージが悪いですが、ゲームコンローラの決定ボタンが右と下で異なった主因は、SONY がボタンの記号として ○ × △ □ を使ったからと結論付けてよいでしょう。