With コロナで DEATH STRANDING を始めた

つかず離れずな微妙な関係

PC版は 7月14日にリリースでしたが、HALF-LIFE Alyx で忙しかったので見送っていました。Alyx も落ち着き、そろそろ新しいゲームをやろうかなと思っていたら、Steam で 25% だったので購入。小島監督作品は好きですが、MGSV GZ あたりから少し距離を置いています。これくらいの距離感がちょうどいいのですが、本作をプレイして自分がサムっぽいなと思いました。
まだまだ序盤で、ようやくバイクに乗れるようになった頃合いですが、早速配達依存症になりかけています。終わりまでやって感想を書くとずっと先になりそうなので、ファースト・インプレッションを書いておきます。最後まで進めてからも、感想を書きます。

PS4版は 11月8日 発売のため、自粛期間中にプレイして人も多いのではないでしょうか。本作は分断された世界をつなぎ直すことを目的としたゲームのため、COVID-19前後で感想が変わってきそうです。発売日からプレイしていた人は、DEATH STRANDING な世界になる予兆、自粛期間中はまさに DEATH STRANDING 的な世界。そして、私はその後にプレイしていますが、COVID-19 の先行きは未だ不透明です。

人恋しいことの実感

DEATH STRANDING の世界では AI による荷物の分別、ドローンによる自動配送など配達の自動化が進んでいましたが、シンギュラリティは起こりませんでした。自動化の反動で人とのつながりが求められたため、人による配達に回帰した過去があります。私は、どちらかというと自動化して欲しい立場なので、現実世界でもシンギュラリティは起こるだろうと考えていたと思います。しかし、COVID-19 による自粛期間を経験してからは、人との直接的なつながりが重視されれるのはありそうなことだなと思いました。ただし、現実世界では COVID-19 により配達関係は自動化が促進されるでしょう。一方で、移動はしばらく制限されそうですし、テレワークやテレビ会議の普及が一気に進んだので、人と人との接触機会が減る方向は DEATH STRANDING のそれでしょう。

世界は分断された

DEATH STRANDING における分断は、コロナ禍よりも深刻ではありますが、リンクするところが多いです。もちろん、本作はそれ以前から企画されており、どちらかというとアメリカと中国の対立、Brexit など、世界が政治的、経済的に分断される方向にあることを受けてのものでしょう。インターネットも、国別に分断される傾向はコロナ禍以前からもありました。また、トランプ大統領の当選により、アメリカの分断が可視化される中で制作されており、それ故に強くアメリカの再建を描いた作品でもあるのでしょう。もちろん、小島監督本人のコナミからの分断と見ることもできます。小島監督自身が、色々なモチーフから作品を作り上げるため、色んな見方が可能なのでしょう。元々、「分断」をテーマにすることが多かったように思います。MGS2ではデジタルデバイドを、MGS3では東西冷戦下における分断をテーマにしていました。

コナミからメタルギアからの分断

DEATH STRANDING は小島監督コナミから分断され、ゼロベースから制作されたゲームです。インディーズとして制作されたゲームとしては異例のヒットではありますが、コジマプロダクションを普通のインディーズとして扱うのは疑問が残ります。
小島監督は元々コナミの副社長をやっていましたし、専用のスタジオにてゲームを作成していました。資本の問題を除けば、小島監督自身にプロダクションを運営する能力は十分にあるでしょう。コナミからの退陣は、多くの人から惜しまれましたことからも、コジマプロダクションの法人としての信用はありませんが、小島監督自身の信用度は非常に高いはずです。この辺は、庵野監督がGAINAXをやめ、スタジオ・カラーを立ち上げた経緯に似ているかなと思っています。小島監督自身も、新劇場版ヱヴァンゲリオン・破に言及していましたから、思う所があったんじゃなかろうかと妄想しています。
小島監督自身の「つながり」が DEATH STRANDING を完成へと導いたとも言えます。実際、コナミ時代から共に仕事をしてきた声優が引き続き参加していますし、ノーマン・リーダスマッツ・ミケルセンなどをモデルとし、またアクターとして起用できたのも小島監督自身の「つながり」によるところが多いでしょう。ノーマン・リーダス小島監督がプロデュース予定だった「サイレントヒル」のティザー広告としてリリースされた「P. T.」からの繋がりでしょう。
ただ、「サイレントヒル」のように、小島監督はプロデュースする立場は向いていないと思われます。「メタルギア ライジング」の開発経緯の変遷からしても、副社長という立場でありながら、コナミを離れることになったのも、そのためでしょう。
個人的には、設定を無理やりひねり出す必要のあるメタルギアシリーズから解放されたのは、良かったんじゃないかなと思っています。

パラドクスの自家中毒から抜けだす

全体的に設定が色々練られているのは、流石に小島監督作品だなと思います。個人的な感想としては、MGSシリーズでは過去の矛盾、特にビックボスのパラドクスをこねくり回すしかないため、MGSV では随分と無理なことをしたと考えています。また、MGSV は過去作と比較してダーク過ぎるのもあまり好みではありません。コードトーカーのハンバーガー話とかは癒やしなのですが。
閑話休題
本作では、ゼロベースから設定を構築できたのもあり、ゲームシステムとストーリーをうまいこと融合できているなと感じました。無理な設定ではありますが、ここまで過酷な世界ならその設定もありだろうと私は思います。左右の違いを見つけるのが好きな自分としては、対称性の破れをテーマにしている点はやられたな!って気持ちです。
ただ、物語の導入のためとはいえ、序盤はプレイアブルでないムービーが多すぎだと思います!!もちろん、ゲームの目的から、Beached Thing (BT) の危険性や、カイラル通信などの用語説明を適度な長さのムービーとして盛り込んでいるのは流石としか言いようがないのですが、それにしたってもうちょっと早めにサムを自由に動かして配達依存症になりたいです。

平行世界は分断されるか

ゲームシステムとしては、オープンワールドにおける「お使い」に特化したものとなっています。使いっ走りはゲームの常套ですが、本作はその点を突き詰めたゲームとも言えるでしょう。その中に、小島ゲームお得意のステルス要素が BT や 配達依存症のミュールとしてまぶしてある感じ。時雨が降ったりと情況が刻々と変化していきます。配達任務も千差万別なので、それに応じて色々なルートが発生し得ます。マップを移動し尽くす上では、よいシステムです。MGSV TPP はオープンワールドであり情況が変化する点も本作と同じですが、ミッションは特定のエリアでしか受注できず、そのエリア内で完了するしかありませんでした。天候の変化に乗じて作品を実行するの情況がそもそも稀すぎます。MGSV ではそこが不満だったのですが、DEATH STRANDING では配達により、その点が解消されています。配達なのでミッションは特定地域で受注する必要があります。一方で、配達の受注を考えてルートを考える自由度があります。

また、様々なゲームから、システムや構造に、流行っている要素をてんこ盛りにしているのも小島監督らしいなと感じました。クラフトが流行っているので、クラフト要素がぶち込まれており、それをプレイヤー同士で共有できます。他のプレイヤーにメッセージを表示するのは、DARK SOULS からでしょう。他のプレイヤーの落とし物を拾えるのは、 NieR:Automata を思い出しました。プレイヤー間の共有も、外にある物は時雨で劣化していくってのがよく練られた設定だなぁと感心しました。
他のプレイヤーと世界がつながっている要素としては、BRAVELY DEFAULT FLYING FAIRY (BDFF) が思い出されます。BDFF では各プレイヤーのゲーム世界が、平行世界として存在することが示唆されていました。ただし、ゲームシステムとしては実装されていません。ポケモンの交換もある種の平行世界と捉えることができるでしょう。DSの頃は、すれ違い通信、最近ではネット接続が当たり前のため、プレイヤー間の世界が重なることが増えてきました。DEATH STRANDING ではプレイヤー間のつながりや共有が率先してゲームシステムに組み込まれています。恐らく、DEATH STRANDING の世界そのものが平行世界や、プレイヤー間の共有、つまりつながりによって成り立っていることが作中で示されるのではないかと予想しています。

トイレのあるゲームは名作である

小島監督は以前から、10年ほど前に「HIDECHAN! ラジオ」にて「ゲームでないゲーム」の構想を語っていました。その詳細は結局明らかにならなかったのですが、DEATH STRANDING にはその要素が含まれているんじゃないかなと推測しています。その一つが、先にも語ったようにフィールドを移動することに特化している点。

DEATH STRANDING は地味なゲームです。クラフト要素などがありますが、根幹はフィールドを移動することです。オープンワールドを歩き回るのが好きな私としては、願ったり叶ったりです。スカイリムが好きな理由が、膨大なクエストの中から適宜クエストをこなして行けるからです。どのような順番でクエストをこなしていくかを考えるのも好きです。ただ、DEATH STRANDING では拠点をつん投げていく必要あるので、ゼルダの伝説 Breath of the Wild のように、ビューポイントを見つけて世界を広げるオープンワールドの方が形式としては近いです。ビューポイント式は世界が広がっていく、自分で世界を切り拓いていく感覚が好きです。地図を見ながら、次に行く場所やクエストをこなすルートを考えるとワクワクしてきます。

「ゲームでないゲーム」の構想として、一人の人間の人生に。本作で言えば、サムはある意味で監視下にあります。サム個人のプライベートルームはありますが、シャワーやトイレにも実質的にプレイベートはありません。トイレやシャワーを意味あるものにするため、分泌物や排泄物すら利用する設定なのだろうと考えます。ある意味クソゲーです。トイレが登場するゲームは稀で、不必要な物をわざわざ描く余裕からかトイレの登場するゲームは名作が多いと言われます。トイレが登場するゲームはいくつかありますが、私の記憶の中でトレイを実際に使うゲームとしてGBのサガ3が思い出されます。
トイレに限らず、本作は通常のゲームでは省かれる動作を実装しています。右と左の踏ん張り動作などは通常は実装しないでしょう。このように、ゲームでは無意味に見えそうで実装されず省かれる実世界での行動をゲームに落とし込むのも、「ゲームでないゲーム」なのかもしれないと夢想しました。

配達に行ってきます

オープンワールド内を歩くのが好きですし、ルートを踏破、構築するのも好きなので、DEATH STRANDING は長く遊ぶことになるだろうと思います。そのために、先ずは思っていることをぶちまけました。
メタ的に考えて、BTやビーチなどの概念は、他のプレイヤーとのつながりと関係するのだろうと考えています。つまり、プレイヤー毎にサムがいて、それぞれに平行世界があり、交わるからこそ DEATH STRANDING の世界が成り立っている。カイラル通信は過去から未来への通信ですが、ゲームも制作者とプレイヤーの関係とみることもできます。
とりあえずは、さっさとノットを繋げてしまったほうが出来ることも増えるはずなので、メインミッションを進めていきますかね。