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萌え絵はなぜかわいいか そしてなぜキモイと拒絶されるか

萌え絵を見てキモイと思う人がいるのは、日本人がアメコミ絵を見てキモイと思うのと根は同じではないかなという考察。

萌え絵の流れを大雑把に

「萌え」という言葉は、1980年代の終わりから1990年代初頭に発生したとされています。オタクの共通言語となったのは1990年代中盤から後半ではないかなと思います。個人的に「燃え」とイントネーションが同じであることから「燃え→萌え」の言葉遊びから、「萌」のつくキャラ名により広まったのではないかなと考えています。「萌え」という言葉の成立自体が歴史の闇の中なので、「萌え絵」の成立についても大雑把にしか言及できないと思います。というか、できる人まとめてください。お願いします。

大雑把に語るなら、1950年〜1960年頃に漫画において「かわいい」とされる絵が体系化された。例えば、少女マンガのような目が大きく瞳に星があるという表現が確立された。漫画絵がそのままアニメに取り込まれ、セル絵が誕生するのが1960年後半。1970年代から魔女っ子を中心に発展し、1983年のクリィミーマミ頃には既にひとつの完成系が。今度はそのセル絵が1980年代後半から1990年代前半にかけゲームに取り込まれる。ゲームのスペック的な問題か、ボヤっとした線がシャープになり、1997年のTo Heart付近で現在の「萌え絵」のベースが出来上がったような感じでしょうか。もちろん、漫画→アニメ→ゲームと「萌え絵」のステージが移っていったわけではなく、それぞれが影響しあって現在の「萌え絵」に繋がっていくわけですが、アニメのセル絵、ゲームのシャープな線がなければ、今の「萌え絵」にはなっていないのではないかと思います。

「萌え絵」はなぜかわいいか

「萌え絵」の特徴としては、目が大きくて瞳に少女マンガほどではないけどハイライトが入っていると。漫画における瞳にハイライトを入れる効果、お約束は 瞳のハイライトの表現史[ざっくり版]〜星の瞳のハイライト - ピアノ・ファイア が分かりやすいです。

「漫画に出てくるヒロインにはマツゲと瞳のハイライトを入れる」というお約束がありまして、単なる「少女であることの記号」のような意味があるのかもしれません

「ヒロインにマツゲと瞳のハイライトを入れる」のお約束がいつ生まれたか不明ですが、初期のディズニーを見ると興味深い流れがあります。1937年の白雪姫だと普通の目ですが、1940年のピノキオ、1941年のダンボと年を経るにつれ目が大きくなり、1942年のバンビでは動物なのに随分魅力的な目になっています。アイシャドウのような線があり、虹彩もはっきり描かれ、ハイライトもある。動物を人間らしく見せるためでしょうが、目の重要性がわかります。ミッキーマウスの瞳の変遷なども語りたいですが、画像が見つかりませんねぇ。
漫画の流れとして外せないのは手塚治虫手塚治虫はディズニーの影響を受けまくっているので、リボンの騎士の瞳は大きくてハイライトがあり、マツゲも長い。魅力的な目である。この頃から「ヒロインにマツゲと瞳のハイライトを入れる」というお約束が広まっていったように思う。
「目が大きい」とどのように見えるかは、「かっこいい」と「萌え」 次世代の日本コンテンツの展望 シリーズ第2回 *1 などが詳しいですが、要するに幼く見える。幼く見えるとかわいく見える。目が大きくなると、顔のパーツが顔の下半分に集まり「赤ちゃん顔」になる。僕が「赤ちゃん顔」はかわいいという話を最初に読んだのは、藤子・F・不二雄の短編である「かわい子くん(1980年)」ですが、赤ちゃんの顔をかわいいと思うのはある意味本能でしょう。本能に訴えるから「赤ちゃん顔」はかわいい。だから瞳の大きな「萌え絵」もかわいいと。
犬や猫がかわいく見えるのもおそらく似たような理由。犬や猫は肉食動物で目の位置が人間と近い。一方、馬などの草食動物は目が側面についている。だから、犬や猫ほどは見た目がかわいく見えない。そういえば、バンビの目がかわいい理由もこの辺にありそうです。

「萌え絵」はなぜキモイか

「萌え絵」はかわいい一方で、「萌え絵」は見慣れない人からだとオタクっぽい絵として受け付けられません。先にあげた目以外にも「萌え絵」は様々な部位が強調されデフォルメされています。「萌え絵」に限りませんが、鼻は省略されることが多い。外国人が見るとどうして鼻がないのかと疑問に思うようです。また、欧米人は日本のキャラクターの見ためを幼く感じるようです。これは、日本人が若く見えるのと同じ理屈でしょう。我々からしてみると、高校生くらいの見た目だと思ったらティーンですらなかったりと欧米人が老けているように見えます。例えば、ハリウッド版鉄案アトムの初期デザインは、鉄腕アトムの新しいデザインです。 出紹介されるような目鼻立ちがしっかりとした老け顔でした。現在は、「イーッヒッヒッヒー!」とアトムが叫ぶハリウッド版の鉄腕アトム「Astro Boy」予告編ムービー登場 のように随分と日本よりになりましたが、それでもアメリカ顔かなと。ハリウッド側は初期デザインは10歳の少年を想定していたそうですが、元々のアトムだってその位の年齢のはずです。これは、アメリカと日本の見た目の年齢の違いに起因するのでしょう。
日本と欧米の違いといえば、ゲームのキャラクターも随分と違います。“スクエニっぽくキャラデザインする方法”に見る日米文化の違い ではキャラクター造詣における日米の違いが垣間見えます。アメリカ、特にアメコミのキャラクターは本当にマッチョです。一方、日本ではマッチョなキャラは好かれませんし、むしろマッチョキャラは筋肉馬鹿でやられ役の場合すらあります。日米のゲームキャラの見た目の違いは度々ネタにされます。例えば、痛いニュース(ノ∀`):アメリカ版「ロックマン」のパッケージが酷すぎる件 とか。筋肉質過ぎるアメコミの絵はちょっとキモイなと思うことがあります。
さて、アメコミの絵って何であんなに筋肉質なんだろうか。アメコミに限らず、映画を見てもアメリカのヒーローって大体マッチョ。これは、アメリカ人の理想像なのだろう。筋肉質であることがかっこいいから、筋肉が必要以上に強調される。つまり、筋肉のデフォルメ。これは「かわいい」をデフォルメした「萌え絵」と通じるところがある。デフォルメにより強調されインパクトが生まれるが、過度なデフォルメは気持ち悪さを生む。その代表格が妖怪でしょうか。妖怪のキャラクター論に関しては水木しげる、荒又宏、京極夏彦あたりの文献が詳しいです。「萌え絵」にしても、目が大きすぎるとか、顎が長すぎると気持ち悪くなってしまいます。
また、先にも述べたとおり「萌え絵」の顔は「赤ちゃん顔」です。「赤ちゃん顔」だからこそ、「萌え」は性的な興奮抜きにして「かわいい」と思えるのかもしれません。しかし、顔こそは赤ちゃんですが、体は完全に大人です。特に胸は異常に大きいこともある。というか、あんな胸現実には存在し得ない。これもひとつのデフォルメでしょう。貧乳キャラなのに、現実ならCぐらいの大きさだったり、巨乳キャラでなくてもD、E、Fの見た目のキャラもいます。「萌え絵」キャラの胸が大きいのは強調もありますが、目の大きさがデフォルメされた結果頭が大きくなるため、その頭の大きさのインパクトに負けないだけの大きさの胸でなければ、胸の大きさが強調されないのでしょう。似たようなことを、エアあややで有名になったおかま芸人のはるな愛も言ってました。彼女(?)も顔が大きいので、豊胸する際に在庫でもっとも大きなパックを入れたとか。
「赤ちゃん顔」に大人の体を付加することで、かわいいとエロいが同時に満たされる。しかし、本来エロさのない「赤ちゃん顔」に性的魅力が付随しているので、「萌え」記号が分からない人から見るとさらに気持ち悪く見えるのかもしれません。

限りなく「まとめ」に近い何か

「萌え絵」は大きな瞳で大きな顔で顔のパーツが顔の下半分に集まった「赤ちゃん顔」。赤ちゃんが故にかわいい。そして守りたくなる。まさにロリ。それでいて、体は大人でエロイ。「萌え絵」は体のさまざまな部位が強調されデフォルメ化されている。それ故、実際の人間からかけ離れている。強調された部位をかわいい、あるいはエロイと思う人に知れ見れば分かりやすく、パッと見ただけで興奮できる。しかし、それらに興奮できない人にしてみればデフォルメが行き過ぎた妖怪のように見えるから気持ち悪く見えてしまう。
さて、「かっこいい」と「萌え」 次世代の日本コンテンツの展望 シリーズ第2回 のコメント欄にてハイジは「赤ちゃん顔」の手法を逆手にすることで海外で高い評価を受けたという話があります。手塚治虫の逆を行ったわけです。ジブリアニメもそれに倣っているから海外の評価が高いのかもしれません。とは言うものの、萌え絵について - FIFTH EDITION によると、ジブリ絵は鼻と口が離れていると。結局これも「赤ちゃん」を彷彿とさせるのですよね。

*1:コメント欄も