「昆虫交尾図鑑」のパクリ疑惑が斜め上の展開に

パクリだ!謝罪します!侵害ではない!←ファッ!?

虫好きの女子芸大生もいるんだなと思っていたら、昆虫の交尾はそもそも滅多に見られるものではないそうで、表紙の絵は虫好きの人が 虫ナビ における マレー産コーカサスオオカブトムシ飼育記 を参考にしたのではないかと、すぐにピンと来るものだったようです。
確かに、「昆虫交尾図鑑」の表紙は虫ナビにある写真そのままであり、参考というよりもほとんど模写と判断できる酷似具合です。写真を撮影した虫ナビ管理人はTwitterアカウントである Takuro Tsukiji (mushinavi) on Twitter にてかなり早い段階で言及し、出版元である飛鳥新社に問い合わせを行っていたようです。

女子芸大生の『昆虫交尾図鑑』のトレース疑惑が熱い とやまもといちろうさんも熱いエールを送っていた所、「昆虫交尾図鑑」を描いた女子芸大生から虫ナビ管理人へと謝罪のメールが来たとのツイートが。

はてなブックマーク の反応を見る限りでは、この段階では女子芸大生擁護の声も少なく、出版社が責任を取るべきとの声が上がっています。この段階では、出版社が交尾写真の撮影者に直接連絡すべきで、女子芸大生が直接メールするのはおかしくないか?出版社は女子芸大生を守るべきでは?との疑問もありましたが、飛鳥新社からの見解が出て色々合点が行くことに。

飛鳥新社の見解をかつて流行った2ちゃんコピペ風に超訳すると「馬鹿じゃねえの?昆虫なんてどれも似たようなもんなんだから写真を模写しても著作権侵害にはならねぇよ。ちゃんと類似性がないように計算されてる。角度とか*1」とまさかの全面戦争の構え。
これには、やまもといちろうさんも 飛鳥新社の言う著作権に詳しい弁護士って誰だよ とあきれ顔。結果、女子芸大生へも同情が集まる形に。

トレースだろうが模写だろうが複製権の侵害

「昆虫交尾図鑑」虫ナビ以外からも参考にしているようで、女子藝大学が描いた「昆虫交尾図鑑」が写真のトレースではないかと話題に - NAVER まとめ などにまとめられております。また、見る人が見ると虫の身体の構造としておかしな描き方でもあるらしく、女子芸大生自身も虫にはあまり詳しくはない様子。

Q:写真をそっくりそのまま絵に描いて公表すると違法になりますか?
A:写真家に無断で写真そっくりに絵を描いて公表すれば、著作権(複製権)の侵害になります。
(第2条1-15・第21条・第30条)

ただし、私的複製の範囲で、描いた絵を自分の部屋に飾ったり、家庭内で楽しむことは違法ではありません

トレースであろうが模写であろうが複製権の侵害には変わりはないので、「トレースだ!」と騒ぐのはあんまり得策じゃないと思います。虫の身体の構造としておかしいのならばトレースでなく模写なのでは?と思いますけど、トレースしようが模写しようが出版などしたら複製権の侵害です。

「昆虫交尾図鑑」が出版に至った経緯を追ってみる

出版に至った経緯は hasepiko - 昆虫交尾図鑑 に書かれてますが、元々は芸大の「手製本の本を作る」課題だった模様。その後、THE SIX 2011 なる学生主催のコンペで入賞し、ライターのやきそばかおる*2さん経由で出版に至ったようです。
そういえば、女性の藝大生が一人で作った「昆虫交尾図鑑」。作者の長谷川さん登場!(Excite Bit コネタ) の取材者もやきそばかおるさんですね。

出版するに当たり、交尾の絵を10個ほど加え、絵も加筆した部分もあったようです。元となった課題作品は 昆虫交尾図鑑 - THE SIX 2011 Competition にて確認でき、この時点で虫ナビなどのサイトを参考にしていた事は明らかですが、参照元の記述はありません。

大学の課題だとしても参照元を記述しないのは不正では?

大学ではレポートのコピペが問題になっています。以前、コピペは引用ではない - 最終防衛ライン2 でもコピペ=剽窃の問題は論じました。 PLAGIARISMWhat Constitutes Plagiarism? § Harvard Guide to Using Sources などアメリカの大学では、コピペ=剽窃はチート*3であることを周知させています。ただし、学生が認識できているかはわかりませんが。

「昆虫交尾図鑑」は課題作品の時点であっても、参照元の記述がないのはレポートのコピペと同様に不正であり、チートと判断されるべきでしょう。
芸大では学生向けに著作権などを教える授業はないのかな?と思いつつ、課題作品がコンペに選ばれ、あれよあれよという間に出版が決まってしまったので言い出すタイミングがなかったのだろうと推測はできます。

炎上収束には謝罪よりも同情を誘う方が効果的

飛鳥新社が徹底抗戦の構えを見せたことで、既に撮影者の一人である虫ナビの管理人へ謝罪している女子芸大生に同情が集まっています。確かに、飛鳥新社の態度は「昆虫交尾図鑑」の著者たる女子芸大生を守るものではないですし、写真集も出版している会社としての著作権への認識は非難されるべきです。このまま行けば裁判になるかもしれません。そして、恐らく飛鳥新社が敗訴するでしょう。
出版社が守ってくれないからこそ、女子芸大生は虫ナビの管理人へコンタクトを取ったのでしょうし。同情の念はありますが、直接コンタクトを取るあたり、割と神経図太いよなとも思います。女子芸大生への非難の矛先は飛鳥新社へと向かうでしょうし、逆説的ではありますが結果として出版社が女子芸大生を守った形になっているのが面白いですね。ネット炎上案件は、下手に謝罪するよりも同情を誘った方が勝ちなのです。

*1:角度とかとは - 意味/元ネタ|2ch

*2:やきそばかおるのページ・総合案内

*3:学生の不正行為。テスト以外でも使われる。