初音ミクは誰のもの? 白いクスリとクリプトン

楽器としての初音ミクはユーザーのもの。キャラクターとしての初音ミクはクリプトンのもの。
楽器としての初音ミクはユーザーのものだけど、だからと言ってどんな歌でも公開しても良い、と言うわけではない。表現の自由はあるけど、公開するならばそれなりの責任が伴う。

*コメントを受けて若干修正

「白いクスリ」騒動

クリプトンが「碧いうさぎ」の替え歌である「白いクスリ」を自社の営業上の利益および信用が侵害されるおそれがあるとして、ニコニコ動画に削除要請を申請。その内容を ニコニコ動画における動画削除について - ピアプロ開発者ブログ として自社ブログに公開する。一旦は削除したニワンゴだったが、クリプトンさんがミイラになりつつある件 : ひろゆき@オープンSNS においてひろゆきがクリプトンに対して疑問を呈したためか、初音ミク「白いクスリ」ニコ動に一時復活 「削除依頼に法的根拠なし」とニワンゴ と報じされるように一時的に復活した。
ニワンゴ側がクリプトンの削除申請に対して法的根拠が薄いと判断するならば、始めから閲覧できない状態しにしてアップロードしたユーザーに警告を通知すればよかったんじゃないだろうか。どうにもニコニコ本体は一切責任が無いみたいな雰囲気になっており、アンケートの結果を見ても、ひろゆきの立ち回りが上手いなぁという感じ。

クリプトンがニコニコ動画の運営に対し削除申請したのは、2008年1月に続き今回で二例目。前回は クリプトン、「公序良俗に反する」ミク作品をニコ動から削除 判断基準も公開 - ITmedia News および 公序良俗に反する歌詞を含む楽曲について - ピアプロ開発者ブログ で説明されるようにテレビで放映できないような歌詞を含む楽曲をアップロードするなということでしたが、基準があいまいで筋が悪いなと。VOCALOIDライブラリ使用許諾契約書に「公序良俗に反する歌詞を含む合成音声を公開または配布することを禁じる」とありますが、この文言はどちらかというと楽曲を作りアップしたユーザーが、アップロードした場所、この場合だとニコニコ動画の運営などに「公序良俗に反する」と断じられた際に、クリプトンには責任はありませんよ〜という為のおまじないに近い。「公序良俗に反する歌詞」と断じて削除する責任はアップロードの場を提供した運営側であってクリプトンではない。初音ミクのイメージを損なわないためならば、「公序良俗に反する」という曖昧な文言ではなくストレートに「キャラクターのイメージを損なうので止めろ」と勧告したほうが良いのではないか。

初音ミクは楽器かキャラクターか

今回の「白くクスリ」騒動に対するネットでの反応も様々で、はてなブックマーク - 「碧いうさぎ」替え歌「白いクスリ」、削除申請の理由をクリプトンが説明 - ITmedia News なども賛否両論。意見が分かれる要因として、初音ミクを楽器と考える人と、キャラクターと考える人がいるからだろう。初音ミクに関する揉め事はミクが楽器なのかキャラクターなのかという点に由来することが多い。
楽器として考えた場合、何を歌わせようがユーザーの勝手であろう。楽器として考えた場合、クリプトンの権限は薄いだろう。ただし、表現の自由があるからと言って何を公開しても良いというわけでもない。名誉毀損などの違法行為となるものを公開してはならないし、公開する場にも依存する問題だ。先のニコニコ動画における「公序良俗に反する歌詞」か否かの判断はニコニコ動画の運営であるニワンゴの問題である。ただ、クリプトンが削除申請し、ニコニコ動画の運営であるニワンゴが削除したのだから、結果的にニコニコ動画としても「公序良俗に反する」ということではあるが。

一方で、キャラクターとしての初音ミクはクリプトンのものだろう。2007年における 「初音ミク作品」騒動、ドワンゴとクリプトンが“和解”コメント - ITmedia News では「初音ミク」というアーティストとして登録したことに端を発する騒動や、痛いニュース(ノ∀`):クリプトンが「初音ミク同人グッズ」に発売停止、画像取り下げ勧告 のように初音ミクのイメージを損なう恐れのある活動に対してクリプトンが勧告を行うのも、初音ミクをキャラクターとして考えているからだ。クリプトンが初音ミク同人グッズに配布停止、画像取り下げ勧告 のように宣伝してやったんだから、クリプトンの勝手な判断でこれはアリ・ナシと制定を下すな見たいな反応もある。しかし、キャラクターとしての初音ミクはクリプトンのものであって、ユーザーのものではない。確かに、ユーザーによる宣伝効果があったからこそ注目を浴びたと言う面もあるが、だからといって何でもかんでも許されると言うものでもないだろう。キャラクターおよび会社としてのイメージが損なわれるならば、クリプトンが勧告するのも致し方ないだろう。

最後に

今回の「白いクスリ」騒動は、ボーカロイド初音ミクのイメージが悪くなるから止めてくれという事で、キャラクターとして考えても、楽器として考えても、商品のイメージが悪くなるのだからクリプトンにとって、利益、信頼が損なわれると言う主張による削除申請はもっともではないだろうか。
クリプトンからの削除申請を元に、該当する動画を削除するか否かはニワンゴの問題である。クリプトン、「公序良俗に反する」ミク作品をニコ動から削除 判断基準も公開 - ITmedia Newsのように、ニワンゴが「公序良俗に反する」と判断すれば削除すればよい。ただし、初音ミク「白いクスリ」ニコ動に一時復活 「削除依頼に法的根拠なし」とニワンゴ - ITmedia Newsのように、削除申請を元に、問題がある可能性があるため一旦削除したが、法的根拠が薄いと判断したので復活させたというのは頂けないと思う。公開することに問題がある可能性があるならば、始めから閲覧付加の状態にし、その後法的根拠について吟味するなり、権利者とユーザーの橋渡しをするなりすべきだったのではないかと。