呪いの薄まったリメイク版 LIVE A LIVE

SFC 版、Switch 版の両方のネタバレを含みますので、未プレイの方はご注意ください。

語りたいことが多すぎる・・・・・・。

スクウェア・エニックスは旧作の移植を多く手がけていますが、旧スクウェア作品でフルリメイクされた作品はあまり多くはありません。ドラクエは6までがフルリメイクされていますが、FF では 1、3、4、7 と作品数の割に少ないです。LIVE A LIVE がフルリメイクされたのは、ある意味で異端です。まぁ、SFCからして異端なゲームでした。
LIVE A LIVE について語りたいことが多すぎます・・・・・・。SF編のキャラクターデザインを担当した田村由美が「ミステリと言う勿れ」でヒットしているとかとか!(敬称略で行かせて頂きます)

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グレードアップなリメイク

スーパーファミコンSFC)で1994年に発売された LIVE A LIVE が HD-2D でグレードアップなリメイクで Nintendo Switch に帰ってきました!キャラクターは SFC 版よりも大きなサイズのドット絵で、動きがよりダイナミックに!ピクセル風の 3D な背景が箱庭感をグッと引き立てています。

Switch 版では、声優による声も追加されました。声優が本当に豪華で、さらに熱演によりただでさえ心に来るセリフが染み入ります。SFC 版にも効果音程度には声がありました。当時のスクウェアの社員が担当しており、高原日勝は社内オーディションで選ばれた光田康典が担当しています。手作り感のあるゲームで、土佐弁の監修を野村哲也がやっています。リメイク版では声優も含めてスタッフからの LIVE A LIVE への熱い思いが随所から伝わり、それがファンに応える形になっているのもすばらしいです。

音楽は SFC 版と同じく下村陽子が担当しています。中世編や最終編の楽曲は SFC 版よりも尺が長くなり、最初のループは原作の雰囲気をゴージャスに再現しつつ、次のループで大胆アレンジになっているなど聞き応えがあります。「GO!GO!ゴーゴーブリキ大王!」の主題歌を影山ヒロノブが歌っているのは、最早ずるい。

より遊びやすく

システム面でも全体的に遊びやすくなっています。最終編に突入しても、各シナリオをやり直せますし、最終編の主人公も個別に選択できます。わざわざ枝セーブを作らなくても、堪能できるようになっています。
また、最終編には装備したアイテム以外も持ち込めようになっています。最終編のキューブのために持ち込むアイテムを悩む必要がありません。アイテムコンプが捗りますね!

戦闘も、基本的には遊びやすい方向に修正されています。SFC 版では表示されていなかった、弱点、耐性、行動ゲージ、敵の HP が表示されているので、戦略を立てやすくなりました。LIVE A LIVE の属性は、手の技や足の技と独特な上に、15種類もあります。表示されていなかった SFC が不親切なのですが、当時のスクウェアのゲームではありがちな仕様でしたね。

戦闘バランスは調整され、一部のキャラクターは強化されています。個人的に西部劇編で決闘時のマッドドッグスが強化されたことで、彼の格があがったのは良い調整でした。
ただし、バフとデバフとしてレベル増減がなくなったことで、一部の戦闘のバランスが変わっているのが気になりました。

変わって気になる所と変わらないからこそ気になる所

ストーリーなどに大きな変化はありませんが、一部のセリフやアイテム名に変更があります。「妙子のパンツ」が「妙子の日記」になったりと、2020年代にリメイクするにあたって配慮された修正です。個人的には近未来編でクルセイダースRSが落とす「へんたいパール」が「おしゃれパール」になったのが面白かったです。
イベントも細かく修正されており、西部劇編の決闘で、クレイジーバンチが町人からも見えない位置になっています。

変わらないからこそ気になる点もあります。たとえば、チャン・リン・シャンなどの小ネタや、主人公の命名による違和感など。
ただ、当時の手触りを保ちつつ、現代向けにアレンジされ、グレードアップされているので、理想的なリメイクとなりました。

売れなかった SFCLIVE A LIVE

理想的なリメイクとなった Switch 版の LIVE A LIVE でありますが、そもそも本作の移植やリメイクは難しいと考えられてきました。

移植やリメイクが困難な理由として、しばし小学館との権利関係が指摘されてきました。キャラクターデザインを小学館に連載する漫画家が担当しているからです。ただ、2015年には Wii U 向けの、2016年には 3DSバーチャルコンソールがリリースされているので、この点は解消されたのでしょう。

2014年9月に原始編のキャラクターデザインを勝手に行い、LIVE A LIVE のきっけかを作った小林よしのりが ”「ライブアライブ」とかいうゲームを、ケータイでやれるようにすると言うのだ。” と述べています。タイミングとしては Wii U 版のバーチャルコンソールのことのようにも思われます。スマートフォン版の企画もあったのかも知れませんが、実現しなかったのでしょう。

LIVE A LIVE が移植やリメイクされなかった要因として、確かに権利関係の問題はあったのでしょうが、そもそも販売実績がないのです。100万本越えが当たり前だった SFC 時代のスクウェアにおいて、LIVE A LIVE は23万本しか売れていません。
30万本のミスティッククエスト(FF USA)よりも売れていないのです。LIVE A LIVE より販売本数が少ないのは、SFC 末期の1996年に発売されたトレジャーハンターG(17万本)とルドラの秘宝(12万)くらいです。ルドラの秘宝がワーストのため、LIVE A LIVE は下から数えて3番目となります。実績もなく権利関係のややこしい本作をわざわざ移植やリメイクすることもないでしょう。
ともすると、リメイク版は海外展開しているのもあり、オリジナルよりも売れるかも?

印象に残る LIVE A LIVE

売れていない LIVE A LIVE ですが、何かと話題になるゲームでもありました。

  1. 小学館の7人の漫画家がキャラクターデザインを手がたオムニバス型式
  2. 格闘ゲームのような戦闘だけ、サウンドノベルのようで戦闘がないなど、それぞれで異なる遊び方が提示されるシナリオに
  3. 「心じゃよ」や「あの世で俺にわび続けろ」など心に残りミームとなったセリフ
  4. そして、中世編からの最終編の衝撃

これらは、語り草になっています。だからこそ、ファンの間で移植やリメイクが望まれてもいました。

LIVE A LIVE はアンチ RPG か?

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LIVE A LIVE はアンチ RPG と評されることがありますが、個人的にはしっくりしません。むしろ RPG の可能性に挑戦したゲームだと考えています。

LIVE A LIVE はオムニバス型式で、それぞれのシナリオで異なる仕組みになってますが、それらが RPG におけるイベントとして配されていても不思議はありません。戦闘だけの現代編はトーナメント戦、会話のない原始編も異界とのコンタクトとして展開できるでしょうし、SF編はむしろ本流となっています。

LIVE A LIVE は、キャラクターデザインが先行し、出版社とのコラボレーションなど、クロノトリガー(1995年)と共通する点が多いです。異なる世界観を接続する方法が、時空とオムニバスと異なるものの、非常に似通っています。時田貴司クロノトリガーを勝手にライバル視していたと冗談めかしていましたが、意識はしていたのでしょう。

スクウェア・エニックスになった現代から振り返ると、当時のスクウェアは出版などのメディアミックスを切望していたように思えます。その点で、売れなかった LIVE A LIVE は成功した企画ではなかったのでしょう。

奇跡のリメイク

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LIVE A LIVE がリメイクされる契機となったのは、HD-2D であったようです。スクウェア・エニックスによる OCTOPATH TRAVELER で採用された HD-2D はドット絵と 3DCG を組み合わせた表現手法です。SFC のドット絵の雰囲気をそのまま現代に持ち込んだ雰囲気がありました。逆に、SFC や FC のリメイクにはもってこいのはずです。

スクウェア・エニックスの社内で HD-2D によるリメイクが検討される中で、LIVE A LIVE が選ばれました。できあがった本作を見れば、HD-2D と LIVE A LIVE の愛称は抜群です。OCTOPATH TRAVELER を手がけた浅野智也も LIVE A LIVE が好きだったようです。OCTOPATH TRAVELER もオムニバス型式で、最後にシナリオが融合する点で LIVE A LIVE と共通する点があります。

順当進化なリメイク

HD-2D によって SFC 版のドット絵の雰囲気をそのままにリメイクされた Switch 版は、まさに順当進化した LIVE A LIVE です。

近未来編の「GO!GO!ゴーゴーブリキ大王!」が流れるオープニングは、スーパーロボットアニメ感がさらに増しています。SFC 当時にはできなかった技術が、ようやく表現したかったものに追いついた感があります。
SF編では、ベヒーモスが絶妙な大きさになっており、演出もさらに磨きがかかっています。3DCG と船内との相性が抜群すぎます。

フィールドやマップの構成は SFC 版と同じなのですが、別の雰囲気を醸し出しています。幕末編では城の立体感が増しており、マップ構成は同じなのにほぼ別物と感じられます。功夫編の澄んだ山岳には高度を、原始編はフィールドは広大さを感じられます。魔王山のおどろおどろしさも不気味です。

戦闘の演出やバランス調整はすばらしいが気になる部分も

戦闘フィールドの表現も細かくなっており、現代編では観客が、西部劇編での決闘には街の住人が追加されており臨場感があります。近未来編の隠呼大仏戦では、小さく表現されたシンデルマン達によって、ブリキ大王の大きさが感じされるのもにくい作りです。

戦闘の演出も派手になっているので、目が楽しいです。ただ、少しテンポが悪くなったかな?と感じる部分もあります。技の待機時間が短くなった技も多いので、総合的に戦闘のテンポは良いです。ただ、ターン制のRPGバトルに慣れ親しんでいない人だと、煩わしく感じるかも知れません。

戦闘では、バブとデバフによるレベル増減がなくなりました。本作は、レベル差がダメージ量や命中率に大きくかかわってきます。SFC 版では戦闘中に味方のレベルを上げる、または敵のレベルを下げることで有利に立ち回ることができましたが、Switch 版ではそれができなくなりました。
基本的には問題ないのですが、キングマンモーを倒すのが大変になりました。レベル差が大きいので、なかなか麻痺が通りません。そのくせに地相による超回復は相変わらずです。ただ、近づくと地面が揺れる演出が追加され、臭いを特定すればレーダーに表示されるため、再戦はしやすくなりましたが。

バランス調整がおかしいと感じる部分もあります。最終編でオルステッドを選択した際のブリキ大王が強すぎます。レベル増減ができなくなったのもありますが、最終編での隠呼大仏が弱体化されているためです。オルステッド以外の主人公なら嬉しい仕様なのですが、オルステッド側だとブリキ大王をハメないとほぼ勝てません。アルマゲドンを起こしやすくはなりましたが、調整を間違っているような気がします。

声の追加は熱いが、気になったところも

声優によるセリフが本当に素晴らしいです。もともと素晴らしいセリフ回しに、声が加わることでさらに感情が揺さぶられます。
声優陣が豪華すぎます。セリフのない原始編のポゴやゴリを、緒方恵美橋詰知久が引き受けてくれて本当に嬉しい限りです。

戦闘中にも声が当てられています。イベント戦では擬似的な掛け合いを演出できますが、状況やプレイヤーによって異なるのがゲームならではといえるでしょう。
全編に登場している杉田智和中村悠一のように、SFC 版のファンが多く参加しているのは、本当に愛された作品だと思います。


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一方で、主人公たちの名前が呼ばれないのは違和感がありました。
SFC 版では主人公の名前を好きに設定できたので、それを踏襲したのでしょう。
主人公の名前を呼ばないようなセリフ回しにはなっていますが、無理な部分も多くあります。
特に、中世編でオルステッドの名前が呼ばれないのは、かなり残念です。やはり「あの世で俺にわび続けろオルステッドーーーーッ!!!!」の「オルステッドーーーーッ!!!!」の程嶋しづマで聞きたかったです。DS版のFF4でセシルをやっているからこそ!

デフォルトネームに設定した場合のみ、セリフで名前を呼ぶという仕様でも良かったのでは?と思いつつ、それでは収録や処理が煩雑になってしまいます。中世編や最終編の仕組みは、オルステッドの名前を好きに設定できるからこその裏切りでもあります。

薄まった呪い

最終編に少しだけ変更点と追加要素がありますが、これにより裏切りが僅かばかり緩和しています。SFC 版とは異なる解釈とも取れます。

変更点は最終編の心のダンジョンにいるストレイボウのセリフで、SFC 版よりも自責の念が強まっています。
追加要素は、シン・オディオです。各編のラスボスを倒した後に戦うことになります。シン・オディオ戦では、パーティーに加入していない主人公3人も戦いに加わります。そして、最後にオルステッドも参戦します。展開としては非常に熱く、オルステッドへの救いが示された形で、そこには優しさがあります。


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LIVE A LIVE が語りづがれた一因は、オルステッドのあり方でしょう。
主人公の名前を変更できるのは、当時の RPG としてはお約束ではありますが、主人公とプレイヤーの近さを意味する不文律でもありました。
聖剣伝説では主人公のみならず、ヒロインの名前を付けられるからこその重みがあります。バハムートラグーンでは、それがプレイヤーへの裏切りとして作用しています。
LIVE A LIVE も後者で、特にオルステッドへの名付けはプレイヤーへの裏切りとなっています。この裏切りのインパクトが大きかったからこそ、LIVE A LIVE が長く語り継がれることになりました。私にも、しこりとして残っています。呪いとも言えるでしょうか。
リメイク版は、そのしこりが完全に取り除かれた分けではありません。オディオや魔王の謎は残されてままです。ただ、呪いは薄まったように思います。自分としてはそれが少し寂しく感じます。

TERALOMANIA を誰よりも信じます

シン・オディオ編では新たに作曲された GIGALOMANIA が流れます。各オディオ編で流れる MEGALOMANIA のオマージュです。

LIVE A LIVE がリメイクされた経緯は様々な要因があります。
SFC 版は販売本数こそふるいませんでしたが、プレイヤーには壮絶な印象を残しました。結果的に、長きに渡り語られることになりました。
プレイヤーの中にはゲームにかかわる仕事に就く人もいました。素晴らしいリメイクとなったのは、まさに幸運でしたが、LIVE A LIVE が心に刻まれた人々がいたからこそ成し遂げられたのではないでしょうか。
ファンが語り続ければ、次の30年でリメイクが生まれるかも知れません。その時は、TERALOMANIA が出るかも知れません。「いいえ、TERALOMANIA を誰よりも信じます。」