尾身氏はガラスを割ってない

見出し文は文字数が制限されるため独特な表現が多いですが、もうちょっと考えて欲しい事例。

”(尾身氏が理事長)の(医療機構のガラス)割った疑い”と区切れば尾身さんが割ったわけでないとわかりますが「尾身氏が」で始めると、尾身さんが割ったみたいですよね。
見出しの文字数制限かと思ったのですが、スペースを含めると43文字もあるので、見出しとしては長い方です。

NHKニュースのように”尾身氏が理事を務める医療機構”とすることも可能ですが、そうするとやや身が氏が長くなるため「嫌いだからやった」を入れられないのかも知れません。

他の新聞やニュースサイトの見出しを見てみましょう。

尾身氏理事長の医療機構のガラスを割った疑い

見出し文としては「尾身氏理事長の法人」や「尾身氏理事長の機構」として、「が」を用いず「ガラスを割った疑い」として、「男を逮捕」で締めるのが一般的に思います。

東京新聞なら「が」をそのまま省けば、このパターンになりますが、やや冗長ですね。
“尾身氏理事長の医療機構のガラス割った疑い 「嫌いだからやった」39歳の男逮捕 警視庁”

被害のあった場所を先ず述べる

被害にあった医療機構を文頭にもってきて、それを補う形で「尾身氏が理事」とする見出し。
この場合も尾身氏がガラスを割ったとは思わないでしょう。

東京新聞の見出しを並べ替えると以下のようになりますが、スペースが増えて「嫌いだからやった」の収まりが悪いように思います。
“医療機構のガラス割った疑い 尾身氏が理事長 「嫌いだからやった」39歳の男逮捕 警視庁“

犯人の動機を文頭へ

  • 「尾身会長が嫌いだった」尾身氏が理事長務める施設のガラス割った39歳の男逮捕

犯人の動機を最初に持ってくるパターン。TBSの見出しは「尾身会長が嫌い」をあるので、ガラス叩き割るのは尾身氏でない事が分かります。
このパターンで東京新聞の見出しを書き換えると以下。
”「嫌いだからやった」尾身氏理事長の医療機構のガラス割った疑い 39歳の男逮捕 警視庁”

手法を文頭に

動機の他に手法を文頭に持ってくるのもありでしょう。日刊スポーツだけが手法を書いていたのが面白かったのですが、実は事件が起こった3週間前に報じられた際には犯人が不明なのもあってか見出しとして使われています。
ただし、朝日新聞は「シャベル」で読売新聞は「スコップ」ですけど。JIS規格では足をかけるものを「シャベル」でそうでないのが「スコップ」という規程がありますが、あまり厳密には区分されていません。

伝えたいことが多すぎる

東京新聞の見出しは、伝えたいことが多すぎます。また、30字から40字を越えない見出しが多い中で、40字以上と文字数も多すぎます。

他のニュースの見出しから考えるに、最低限必要なのは被害のあった場所である「尾身氏が理事長を務める医療機構」と起こった被害である「ガラスを割った」ことで「男が逮捕」された件です。

東京新聞の場合は、そこに動機である「嫌いだからやった」に加え年齢である「39歳」および、情報の発表元である「警視庁」まで入れ込んでいるので情報過多です。速報としてならありの見出しですが、本文で説明すべき事まで盛り込まれています。
見出しの文字数規程が他よりも長いのかもしれませんが、結果として情報が盛り込まれすぎて分かりにくい見出しになっています。