Twitterでみかけるデマをまとめて指摘

未だに、「赤青のカスタネットの正式名称はミハルスだった」とか「ビー玉の語源はB玉」などを見かけるので、過去に私が検証した記事を紹介しながら指摘します。

  • 「ビー玉の語源はB玉」説は信憑性がない
  • カスタネットの正しい名称はミハルス」でなく、それぞれ別の打楽器
  • 「ひな祭りの甘酒は精液の象徴」ではない
  • 「日本の食品添加物は世界一」なわけがない
  • トイレットペーパーの三角折りの正式名称は「ファイヤー・ホールド」なんて言わないよ
  • 「Vault Boyのサムズアップ」は距離を測っていない
  • 「膝に矢を受けてしまってな」はノルド語で結婚を暗喩しない

「ビー玉の語源はB玉」説は信憑性がない

ビー玉の語源は、はっきりとはしませんが、多くの辞書は「びいどろ玉」が転訛したものとする説を紹介しています。
B玉説では「規格内をA玉、規格外品をB玉と称し、規格外品を遊具として売った」とされます。この話は1990年に自費出版された「びんの話」に書かれているのですが、それ以前の文献ではそのような記述はありません。また、「びんの話」を読み込むと、B玉説を取るにはおかしな点がわかってきます。
ラムネ瓶が製造され始めたのは明治30年前後で、当時のガラスは高価でした。安価になった現在でも再利用されるのですから、当時も再利用されるのが前提でした。ガラスが高価ならば、ラムネ瓶の蓋として使えないガラス玉は、融かして新しいガラスを作った方が効率的です。わざわざ、遊具用のガラス玉として売る必要がありません。また明治中期に規格内と規格外を分けるのにAとBなるアルファベットを用いているのも不自然です。
ラムネ瓶の中のガラス玉は魅力的だったようで、ラムネ瓶が生まれたイギリスでは割って中のガラス玉を取り出す人が多かったため、割ってもガラス玉を取り出せない瓶が考案されました。ただし、その後に王冠が普及したため、ラムネ瓶は廃れてしまいました。

B玉説の文献としては「びんの話」しかなく、それも口伝を書き記したもののため、信憑性はかなり低いと考えられます。

カスタネットの正しい名称はミハルス」でなく、それぞれ別の打楽器

赤青の板をゴム紐で括った木製打楽器は「ミハルス」か「カスタネット」か - 最終防衛ライン3
カスタネットとミハルス:音楽よしなしごと:So-netブログ

学校教育で用いられる赤と青のカスタネットの本当の名称は「ミハルス」だとする説が定期的にbuzzりますが、現在一般的にカスタネットとして知られる打楽器と「ミハルス」は別の楽器です。一時期はWikipediaもこの説を取っていましたが、現在は書き換わっています。未だに、 全音 教育用カスタネット (ミハルス) | 全音楽譜出版社(ZENON)|木のおもちゃ.jp では教育用方ネット=ミハルスとしているのですが、いい加減取り下げて欲しいです。

カスタネットは本来スペインのフラメンコに用いられる木製打楽器で、その名は栗を意味する「カスターニャ」が由来とされます。栗の木で作ったからとも、栗の形に似ているからとも言われ、正確なところはよく分かっていません。

ミハルスは日本舞踊家の千葉みはるが考案した木製打楽器で、スペインのカスタネットや沖縄の四つ竹を参考にしています。学校教育においてリズムを取るために作られ、小さな子どもでも片手で扱えるように、二つの板が蝶番で繋げられ、親指と中指で挟めるようになっています。
ミハルスは戦前の小学校の指導要綱にもその名があり、教育現場で広く使われたそうですが、戦中になくなり、現存するものはほとんど無いようです。

戦後にミハルスの代わりに学校の音楽教育で使われた始めたのが赤と青の二枚の板からなるカスタネットです。スペインのカスタネットとは異なり、二枚の板がゴム紐で繋げられ、ミハルスと同じく片手でも扱いやすくなっています。現在は、両手で使われることが多いですけども。
この教育用のカスタネットは、戦前にミハルスを使っていた教育者が白桜者に発注して製造したもので、それが全国に広まりました。つまり現在の教育用カスタネットミハルスを元にした楽器ではありますが、ミハルスそのものではありません。よって、教育用カスタネットミハルスとするのは誤りです。

「ひな祭りの甘酒は精液の象徴」ではない

菱餅が女性器で甘酒が精液を象徴しているというのは疑わしい - 最終防衛ライン3
ひな祭りの甘酒は精液の象徴とか、菱餅は女性器の象徴など、ひな祭りは性教育の意味もあったとする話。2017年のひな祭りの際にもTwitterで見かけましたね。三砂ちづるが提唱していますが、それ以外に文献がありません。

菱餅が菱形の由来は、植物の「菱」にあやかったからです。「菱形」そのものが植物の「菱」が由来です。ただし、形の由来が実なのか葉なのかはよく分かっていません。菱は繁殖力が高く葉がびっしりと水面を埋め尽くすことから、「菱形」は子孫繁栄の象徴として古来から扱われてきました。

かつて桃の節句に甘酒は飲まれていませんでした。甘酒は夏の季語で、夏バテ予防にとして飲まれていたようです。今だと、むしろ冬に神社などで振る舞われるイメージがありますね。
元々、中国では桃の花を酒に浸した桃花酒が飲まれており、日本も同様の風習が伝わりましたが 江戸時代の頃から「白酒」が飲まれるようになりました。白は百に通ずるので縁起が良いとされたようです。それがいつの頃からか、アルコールの入った白酒から、アルコールをほとんど含まない甘酒へと変わっていったようです。桃の節句が、ひな祭りへと変わっていく過程で、甘酒へと変わっていったのでしょう。
酒を飲むのは邪気を払うためで、大蛇を宿した女性が桃の節句に白酒を飲んだら堕胎させることができたとの言い伝えもあるので、精液とは関係がなさそうです。

ハマグリに関しては、昔から夫婦和合の象徴です。桃の節句で食べるかどうかは地域性がありますが、食べる地域があるのは旬の食材だからではないでしょうか。
ちらし寿司はいつ頃から食べられるようになったのかは分かりません。ちらし寿司を食べる否かや、中の具材も地域性があります。具材の由来も、お節料理のようなダジャレのようなものでしょう。

「日本の食品添加物は世界一」なわけがない

日本の食品添加物の種類は世界一では無い - 最終防衛ライン3
日本、EU、USAと比較しても、そんなに違いはありません。各国が加工食品を頻繁に輸出入する現在に置いて、一国だけ食品添加物の規制が甘い、あるいは厳しいと大変ですよね。そもそも、食品に添加して良いものは、その種類と量を厳密に規定されるべきで、種類が少ない方がむしろ揺る揺るだと思うんですけど。また、消費速度の早い弁当やパンなどは食品添加物を使用しない方向になっていると思います。故に、油断すると直ぐに悪くなってしまう。冷凍・冷蔵技術、流通が発展した現代では、食品添加物のありがたみが下がってはいますが、食品添加物がないと塩や砂糖をたっぷりと使わないと食品保存できなかったわけで。まぁ食品添加物を悪だとする人は、塩や砂糖も悪だとする人と被っている気がするので馬耳東風かもですが。

日本では一般添加物と既存添加物などが存在し、おおよそ1000種類くらいになります。既存添加物は日本において古くから使用されており、経験的に安全だとされている添加物です。既存添加物はアメリカのGRASに相当します。日米で食品添加物の種類に大きな違いはありません。
EUは、E番号によって食品添加物が管理され、その数は300種類ほどです。ただし、加工補助剤や香料、酵素などは含まれせん。加工補助剤などは、日本の既存添加物に相当するものであることもあり、各国の歴史的、文化的背景に左右されるためでしょう。

トイレットペーパーの三角折りの正式名称は「ファイヤー・ホールド」なんて言わないよ

絶対

トイレットペーパーの三角折りの正式名称は「ファイヤー・ホールド」ではありません - 最終防衛ライン3

アメリカの消防士が直ぐに用をたせるようにトイレットペーパーの先を三角に折り、それを「ファイヤー・ホールド」と呼んだとする説ですが、これは色々な観点から否定できるデマです。
先ず、アメリカではトイレットペーパーの向きが一意ではありません。日本では、ホルダーに紙切りがついているので外側に向けますが、アメリカにはそれがありません。公衆トイレなどは50cmくらいの大きなロールが二つ、互いに向き合って横向きついているので、内も外もありません。
『Fallout 4』トイレットペーパーModに見る常識という名の没入感、紙の先端は本当に表向きが正しいのか | AUTOMATON

次に、トイレットペーパーを三角に折るのは日本で生まれた習慣です。ただし、その起源については銀座のママ説とホテル説があります。起源ははっきりしませんが、広めたのはホテルで間違いないでしょう。

「Vault Boyのサムズアップ」は距離を測っていない

「 Vault boy が Thumb Up してるのはキノコ雲からの距離を測っているから」というデマを検証した - 最終防衛ライン3
Fallout 4のVault Boyがサムズアップしているのはキノコ雲からの距離を測っている」というデマ。
先ず、デザイナーが否定しています*1
次に、キノコ雲の距離を測る暇があるなら逃げるべきです。政府が弾道ミサイルの落下時の対処法として窓から離る、地面に伏せるなどを案内していましたが、悠長にキノコ雲を見て距離を測っている暇があるなら、同様の対処をし、さっさと地下へ逃げるべきでしょう。
内閣官房 国民保護ポータルサイト

また、親指で距離を測るのは「親指の経験則」と呼ばれます。親指で対象物を隠せる場合、その対象物の大きさの約30倍くらい離れている経験則です。危険な事象から30倍くらい離れれば安全ではありますが、広島型原爆の場合で、キノコ雲直径が4, 5kmとされるため、親指で隠れると考えられる距離は100kmを超えます。十分に安全ではありますが、平原でとない限りキノコ雲を目視することすら難しいでしょう。

以上の3点から、デマだと断言して間違いないでしょう。

「膝に矢を受けてしまってな」はノルド語で結婚を暗喩しない

The Social Flotilla - “Arrow to the knee” as old Norse Slang: A tribute to Snopes-style Myth-busting
「昔はお前のような冒険者だったが膝に矢を受けてしまってな…」はスカイリムで衛兵がしばしば口にするセリフで、他にもしゃべってはいるのですが、非常に印象的で脳裏に焼き付いてしまいます。
それ故に、裏の意味があるのではないかと推測され「膝に矢を受ける」は古代ノルド古語で結婚を暗喩するなるデマが広まってしまったのでしょう。もちろん、そんな意味はありません。

ちなみに、スカリムで酔っ払いやゴロツキが愛飲しているハチミツ酒は、北欧で重宝されたお酒で、結婚するとハチミツ酒をしこむことからハネムーンの語源ともされます。ハチミツ酒が重宝されたのはワインが作れなかったからですが、アルトワインなどが輸入されるようになると、ハチミツ酒は次第に作られなくなりました。

真実は面白味がないがデマは面白いので広まる

デマが収束しない原因の一つは、常に新しい人が入ってくるためで、過去のデマが繰り返し拡散されるのでしょう。その都度、誤りであることが指摘されますが、真実よりもデマの方が面白く目を引くため、訂正されないままになりがちです。食品添加物のは善意で広める人がいるのも余計にタチが悪いですね。
都市伝説ってのも、こうやって形作られていくのだろうな。

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*1:ただし、このサムズアップしたVault Boyはデザインしていないが