史跡のグルメ

二条城の国宝・二の丸御殿にカレー粉?警察が成分調査中:朝日新聞デジタル
「そういうのもあるのか。」
新聞を読んでいたら思わず大きな声を上げてしまっていた。周りに誰もいなくて助かった。寺ではやはりどうしてもベジタブルカレーになってしまう。肉を入れるなら城ということになろうか。江戸幕府を開いた家康が建造し、大政奉還が行われ江戸時代に終わりを告げた二条城。そこに明治海軍の象徴とでもいうべきカレーをあしらうとは、 素人の発想ではない。見事に明治海軍というスパイスで徳川臭を抑えてしまっているのだ。大政奉還が行われて今年で調度150年であるのも狙っているのだろう。 二重の堀に囲まれ、白い漆喰に彩られた二の丸御殿をカレーで喰らおうとは大胆不適。まさに皿に盛られたライスカレーでそのものある。ここに、それぞれ江戸、明治、昭和に整備された庭が一服の清涼剤としてカレーの辛みを抑えるサラダとして利いてくる。インドから一度英国に渡り、日本へと伝えられたカレーを和洋折衷な清流園が仲立ちしてくれている。そしてまた、黒書院と白書院の二つのペアがそれぞれ性格の異なる薬味として働くのも心憎い。
二条城にカレー。ただ者ではない。しかし、これでは折角の二条城の内装が残念である。狩野派による壁画を生かし切れていない。探幽も泣いているであろう。 狩野派は権力の御用達でアクが強いのは確かであり、どちらかというと関東の醤油ベースの方が合うだろうが、 やはり京都であるので、 出汁で頂きたいものだ。そのまま煮物でも悪くはないが、煮すぎると狩野派もでろでろになってしまう。うどんにしてさっと頂くのが美味しいのではなかろうか。関西はやはりうどんである。かの時そばも元々は上方の落語で時うどんとして演じられていたものらしい。うどんなら、鶯張りをさっと食べたり汁に浸したりと、二つの食感で楽しめる。二重折上格天井を潰すタイミングを慎重に見定めたものだ。これだけ多くの具を一度に楽しめわけだから、さながら煮込みうどんである。
ここまで夢想して、はたとカレーうどんもありではなかろうかと思い至る。なるほど、二条城にカレーはここまで深いものであったとは、恐れ入った。
しかし、幾ら史跡グルメマニアとはいえ、実際に凶行に及ぶとはマニアの風上にも置けぬ奴である。本当に調理して喰うことは適わぬのだから妄想ですますのが史跡グルメマニアの理ではなかったか。組み合わせの妙が素晴らしい故に残念な輩でもある。
それにしても、マニアの人数が増えれば、一般人と衝突する確率も上がるわけで、 一部の不届き者が目立ってくるということは、それなりにマニアがいるのかも知れぬ。同好の士で集まって、不届き者が出ぬよう協力した方が良い頃合いなのかもしれないな。