都市伝説の作り方教えます

タイトルは釣りです。「釣りタイトル」だけを読み本文を吟味しない人によって都市伝説は広まっていきます。
最近は「創作実話」という言葉がありますが、「都市伝説」も「釣り」もある種の「お話」になっています。

「お話」には内容があります。その内容を伝えるために「お話」をするのです。「釣り」にも伝えたい内容があります。「釣り」は、なぜ作られたかを考えると、本当に伝えたかったことが見えてくる事があります。「都市伝説」は謎を説明する役割を担っています。「都市伝説」とは謎の因果を説明する「お話」です。

都市伝説も釣りも広がりやすい「お話」としての特徴を有しています。キャッチーな釣りほど広まりやすいです。「釣り」も「都市伝説」も真偽の程は不明なのに、事実であるかのように拡散していきます。特徴をまとめると、

1. インパクトがあり心に残りやすく
2. 単純で分かりやすく
3. 思わず人に伝えたくなる

思わず人に話したくなるのが最大のポントですが、そのためにはインパクトが必要ですし、簡単に人に伝えられる内容でなければなりません。どちらが欠けても広まりません。

話のネタに

「簡単に人に伝えられる内容」ってのは、実は単純ではありません。話を分かりやすく伝えるにはそれなりの技量が求められます。

自分の体験を誰かに伝える場合を考えてみましょう。
初めの頃は要領が得られず、何度も説明しないと話を分かって貰えないでしょう。何度も繰り返し話す内に、無駄な部分が省かれ、順序も整理され、話自体が分かりやすくなっていきます。つまり、何度も話すことで話が洗練されたわけです。

落語の噺や、メディアで見聞きする「面白い話」は洗練された構成になっています。
このような「面白い話」を「ネタ」と言います。「ネタ」は「種」の倒語で、お笑い以外にも、手品や寿司などでも使われます。共通するのは「あらかじめ仕込んである」こと。手品は言うに及ばず、寿司の場合もただ魚を切ってシャリに乗せるのでは無く、あらかじめ種々の下処理がなされています。

寿司や手品には、その種類によって決まったネタの仕込み方があります。プロトコル、テンプレートと言っても良いでしょう。「お話」の場合も同じです。「お話」の型によって仕込み方が異なってきます。
起承転結も仕込み方の一つです。

お約束の展開を

物語には決まったパターンがあります。所謂「お約束」です。

正直じいさんと意地悪じいさんが出てくる昔話は、話の展開がよく似ています。
先ず、正直じいさんが無欲な行動をして利益を得ます。次に、意地悪じいさんが真似するのですが、欲をかいて失敗する筋となっています。
花咲かじいさん、おむすびころりん、こぶとりじいさんや舌切り雀などがそうですね。

これらの昔話は勧善懲悪で、悪が滅びる「お約束」です。話の筋がある程度確立された物語は、決められたパターンを有しており、少年漫画では「王道」とも呼ばれます。

お話全体といった大きな話では無く、もっと小さな「お約束」もあります。たとえば「フラグ」。元々はゲームの進行管理に使われた言葉ですが、最近では物語にも使われるようになりました。「死亡フラグ」などが有名でしょうか。「フラグ」を上手に紛れ込ませると伏線となります。

このように、お話には「型」があります。つまりテンプレートです。「型」に則るとお約束が内容を伝えやすくなります。逆に、この「型」を外すことであっと驚く展開へと持っていくことも可能です。

型にはまったお話をしよう

「型」を利用すれば、話すのが下手な人でも、比較的簡単に「お話」を伝えることができます。2ちゃんねるなので見られた二次創作SSや、やる夫シリーズなどの対話形式もある種のテンプレートと言えます。キャラが確立されている場合、そのキャラを利用すれば比較的簡単に対話式のお話が作れます。やる夫シリーズなどは、一時期学ぶシリーズが流行っていましたね。説明するためのテンプレートとして優秀だからでしょう。

これらのテンプレートはモノマネです。モノマネ芸は、ある人物などの特徴を誇張した「テンプレート」による芸です。どのような特徴を抽出するか、それをどうやって表現するかがモノマネ芸人の腕の見せ所です。

素人が誰かのモノマネをやる場合、モノマネ芸人のモノマネになってしまうことが多々あります。モノマネ芸人により作られた「ネタ」を利用した方がインスタントに受けをとりやすいです。作られた「ネタ」、つまり「型」=テンプレートを利用すれば、素人でも簡単に笑いが取れます。

都市伝説の多くも内容が「型」にはまっています。洗練されているので、理解しやすいですし、そのまま誰かにも伝えやすい構成にもなっています。

ニュートンは落ちるリンゴを見たか あるいは 雪舟は涙で鼠を描いたか

お話が伝えやすくても、インパクトが無ければ心に残りません。
「型」を利用すれば「お話」にインパクトを付与できます。

都市伝説に限らず、伝説は元となる話はあるものの、脚色された結果、真偽がよく分からないものになります。脚色は「お話」にインパクトを与え、「演出」とも呼ばれます。

ノンフィクションであっても、ある程度の「演出」をしないと、面白味に欠けることがしばしばあります。インパクトが弱いと内容が上手く伝わりません。内容=事実とは淡々としたものです。あるいは、複雑すぎてよくわからないこともあります。事実にインパクトを与え伝えやすくするのは「演出」と呼ばれます。ただし、「演出」は行きすぎると「捏造」になります。良くできた話はしばし「捏造」であることがあります。STAP細胞などは、科学における「捏造」も良くできた話を構築するために行われることがしばしばです。

偉人の逸話には、そのすごさを伝えるために過度な脚色がされた「お話」があります。
ニュートンはりんごが木から落ちるのを見て万有引力に気がついたとされますが、これも良くできた「お話」でしょう。ニュートンのすごさを伝えるために脚色され作られた「伝説」と言えます。
水墨画家である雪舟は涙で鼠の絵を描いたとされますが、これも「伝説」でしょう。
この「伝説」は子ども向けの伝記に好まれるようで、他の画家の伝記でも、その画家の幼少時におけるエピソードとして使われることがあります。

都市伝説がある一定のテンプレートに則っているのは、発生や発展過程が「お話」と似ているからです。都市伝説は民間伝承でもあり、口伝によって伝わるのが特徴です。
都市伝説が、口伝により伝わる過程で洗練される場合もあれば、そもそも古い伝承や伝説、神話などの類型が元であったり、取り込む場合があります。

生ける伝説

現代でも逸話が行きすぎると「伝説」になってしまいます。

『ゲームボーイ』を変えた、任天堂・山内溥社長の「二つの逸話」 で紹介されている、任天堂の故山内社長がゲームボーイを床に投げて強度テストをした逸話は真偽が不明で都市伝説だと思われます。
DS故障は無償交換!?任天堂の“神対応”は本当か によると、この話を任天堂の広報は認知していないようです。山内社長なら実際にやりそうですが、ゲームボーイの強度テストが厳しかったことから生まれた「お話」ではないでしょうか。

都市伝説の発生過程を追うのは中々難しいのですが、現在進行形で発展している都市伝説があります。
それは「松岡修造が訪れた国の気温は上がり、その間に日本は寒くなる」という都市伝説です。
2014年のソチで行われた冬季オリンピックの頃にはネット上では割合ポピュラーなネタになっていたように思います。その後は、テレビなどでも取り上げられ、本人も知るところになっているようです。
ただし、松岡修造 気候の都市伝説を神妙に語る「辛い思いをしている人いる」 によると、ノーコメントとしながらも、あまり良く思っていないように感じられます。

松岡修造とネットといえば、2009年頃にニコニコ動画でMADが大量に作られましたが、MADに関しては 松岡修造『ニコ動』の無断編集動画に「あっぱれ! 感謝したい」 なる本人のコメントもあり、気温の都市伝説とは対照的だなとも感じます。MADは本人が"いじられる"だけですみますが、気温はそれにとどまらないからでしょう。

さて、「松岡修造が訪れた国の気温は上がり、その間に日本は寒くなる」なる都市伝説はどのように発生したのでしょうか。

もっと暑くなれよ!!

松岡修造はメディアで熱い男であることを売りにしています。熱い思いを持っている人は、時に暑苦しいと受け取られることもあり、周りの気温を実際に上昇させる、というネタに結びつくのも不思議ではありません。

2006年のオリエンタルラジオの武勇伝

松岡修造と日本の気温をグラフ化した画像が話題! オリラジは数年前から知っていた(笑) – grape -「心」に響く動画メディア においてまとめられるように、オリエンタルラジオは「松岡修造 黙らせる! すごい! 地球の温度が チョイ下がる!」というネタを武勇伝でやっていたようです。【お笑い】オリエンタルラジオ風のネタ ( バラエティ番組 ) - 【ROKBOX】三日月みっつ♪ - Yahoo!ブログ などから判断するに2006年より前に確立されたネタだと推測できます。

武勇伝のネタから、松岡修造は「いると気温が上がり、いないと気温が下がる」というイメージを持つに十分なキャラクター像を有していると考えられます。ただし2006年頃は、都市伝説という程に広まった段階ではなく、良くある「ネタ」の一つに過ぎません。

2010年頃に都市伝説への種蒔きが始まる

Googleで期間を指定して検索すると、2010年頃にも松岡修造の気温伝説がヒットします。
ヤフー知恵袋には、2010年2月12日に オリンピックが開幕しますがバンクーバーの気温が上がってるのは松岡修造が現地にいってるから
なのでしょうか?????
なる質問が投稿されています。

2010年頃は先に紹介した松岡修造のMADがニコニコ動画に投稿されていた頃で、2月10日には「松岡修造さんは気候を自在に操れるようです(sm9599909)」なる動画も投稿されています。ただし現在は非公開になっています。

2010年9月10日にはpixivに、偽新聞 | Illustration: “連日の猛暑 松岡修造氏が原因” by olo [pixiv] がアップされています。この画像は広く転載され「松岡修造により気温が上がる」という都市伝説が拡散されるきっかけになったと考えられます。

徐々に寒くなり始めた10月1日には、ヤフー知恵袋最近寒いから松岡修造が欲しいです。 なる質問がなされています。

2010年以前では、2009年7月26日に投稿された 初のメダルなし: 辛口な漢の日記 において「松岡修造にガッツポーズさせると世界の平均気温が3度上がる。」なる都市伝説が紹介されています。現在広まっている都市伝説とはやや異なるものの、根幹は同じでしょう。

2010年頃から松岡修造の都市伝説の種が蒔かれ始めたようです。MAD動画が投稿されていたのも一つのきっかけでしょう。MAD動画により、ネットにおいて"いじっても良い人"という空気が生じました。この辺は、昭英や川越シェフのコラ画像が広まった空気に近いと感じます。

2014年からの拡散

ネットにおいて2010年頃に「松岡修造がいると暑くなる」という都市伝説の種が撒かれ、それが徐々に広まっていったと考えられます。2013年8月16日には、R25のウェブ版に 記録的猛暑は松岡修造氏のせい!? | web R25 という記事が投稿されており、この頃にはネット上では十分に広まり都市伝説化していたようです。

その後、2014年のソチオリンピックからさらに伝説がネット以外にも広まっていきました。特に、Twitter【悲報】 松岡修造氏が海外にいる間、本当に日本の気温が下がるかどうかを調べてみたら、 本 当 に 下 が っ て た「松岡修造氏が海外にいる間、本当に日本の気温が下がるかどうかを調べてみたら、本 当 に 下 が っ て た」というツイートが決定打に思われます。ちなみに「松岡修造がいないと気温が下がる」の方は2014年頃からポピュラーになったと考えられます。


このグラフ、一見するともっともらしいのですが、他の気温が下がっている日をまるっと無視していおり、典型的な誤ったデータの見方です。それでもグラフのインパクトは大きく伝説を拡散させるきっかけとなりました。

さて、先のデータは松岡修造が日本にいるのに寒い日のデータを説明できないのですが、それを解決する方法として「松岡修造の体調が悪いと寒い」というこじつけが発生しました。松岡修造が訪れた国は気温が上昇し日本の温度は下がる!ぎっくり腰で春に雪!【画像】 - NAVER まとめ にまとめれていますが、2015年4月に東京などで雪が降ったのは松岡修造がぎっくり腰になったからという解釈が生まれたのです。

拡散される過程で「お話」に尾ひれが付いていくのも「伝説」の特徴です。新たな解釈やこじつけは理屈がやや複雑で決して分かりやすいものではありません。これらを理解するには、元々の「お話」を知っている必要があります。裏を返せば、尾ひれがつき始めるのは「都市伝説」として比較的認知された段階にあるとも言えます。

「謎」を説明するための、ジンクス オカルト サイエンス

「松岡修造が気温に影響を与える」という都市伝説が広まった過程を追いましたが、そもそもなぜこのような「お話」が発生し、広まるに至ったのでしょうか。松岡修造が尋常では無いほど熱い男であることだけでは説明できない何かがあります。

因果応報

「都市伝説」とよく似た意味を持つ言葉として「ジンクス」があります。元々は、縁起の悪い言い伝えですが、日本では験担ぎに近い意味でも使われます。多くは迷信です。
黒猫に横切られると縁起が悪い、ツバメが低く飛ぶと雨が降る、などがよく知られたジンクスでしょうか。このようにジンクスには因果があります。

原因:猫に横切られた→結果:縁起が悪い
原因:ツバメが低く飛ぶ→結果:雨が降る

人間は因果を求める習性を持っています。この習性が科学の発展につながるのですが、一方で因果がきちんと検証されないと、迷信やオカルトになります。因果を求めるのは「謎」を理解するための習性だと言えます。学習とも言いますね。

科学では因果の再現性が検証されます。検証過程も公開されています。オカルトはその過程が覆い隠されます。オカルトとは元々隠すモノという意味です。「都市伝説」や「ジンクス」も因果がきちんと検証されていない点で迷信や、オカルトに近いでしょう。

「謎」の説明を求める人は、科学であろうが、迷信であろうが、納得できれば事足ります。「謎」の理由が説明されれば、効果としてはどれも同じです。通常は、わざわざ検証したりはしません。そのため、間違った因果に関係を見出してしまうことがあります。

間違った因果関係を引き起こす要因としては、同時期に起こった印象深い別々の事象に因果を求める傾向があるからです。
同時期に起こったことに因果関係を見出すのは人間だけではありません。
犬をしつける際は、間違ったことをやったら、すぐにしかる必要があります。そうでなければ、犬はしかられた原因を理解できません。これは犬に限らず、人間も同じ。子どもに限らず、大人もです。時間的に近いほど因果関係を想起しやすいからでしょう。

また、印象に残った事象同士ほど因果関係が構築されます。先ほどの犬のしつけも、しかること自体が印象の強い事象です。
黒猫が横切ると縁起が悪いのも、黒猫が横切ること、縁起が悪いこと、その両方が記憶に留まりやすいからです。また人は縁起の悪さに、その理由を求めたいものです。そのため、全然関係が無いのに、因果を結びつけてします。結果として迷信が生まれます。


イメージや印象により、因果が生み出される場合もあります。
イメージや印象に引っ張られる例として、スポーツにおける「二年目のジンクス」を挙げます。一年目に活躍した選手は二年目は活躍できないとされます。あれだけ活躍した選手がなぜ・・・という「謎」でもあります。これは、種々の原因が考えられますが、活躍して期待された選手が調子を落とすと、それだけ印象に残りやすいという「お話」でしょう。

スポーツ選手といえば独自のジンクスを持っていることがあります。例えばバッターボックスで決まった動作をするように心がける選手がいます。験担ぎとも言いますが、これらの動作は平常心を取り戻したり、適度な緊張を保ったりと、ある程度心理面に作用すると考えられます。メンタルが結果に作用をするスポーツにおいて、これらの験担ぎは必ずしも迷信と言えない側面があります。


間違った因果関係によるジンクスもある一方で、経験則として正しい場合もあります。「ツバメが低く飛ぶと雨が降る」などは、雨が降る前は湿気が多くなり、湿気を含み重くなった虫が低く飛ぶから、それらを捕食するツバメが低く飛ぶのだと言われます。ただし要検証ですが。その他、天気のジンクスは経験則的に正しいことが多いようです。

お話を紡ぎ紡ぎ、謎を解きほぐす

天気のジンクスといえば、「雨男」「晴れ男」というジンクスがあります。これは、印象による因果の誤謬ではありますが、「お話」として「ネタ」になりやすい性質もあります。


遊びに行こうとしたら、雨が降った。そういえば、いつもあの人がいるな。あの人は「雨男」にちがいない、という間違った因果の構築が行われるわけですが、その一方で「雨男」を「ネタ」にした方が話が盛り上がる側面もあります。

「こいつ雨男で、この前こいつと沖縄行ったときも雨だったんだよ」
「そういえば、俺もこいつと富士山行った時も雨だったな」
「すまん。多分、俺雨男だわ。大体、イベント毎は雨だった記憶がある」
「でも、俺晴れ男だぜ」
「じゃあ、お前等が一緒に行動したらどうなるんだ?」

上記は「雨男」や「晴れ男」のテンプレートではないでしょうか。つまり「雨男」や「晴れ男」はある種の「お約束」である「型」でもあると言えます。つまり、「ジンクス」は話の「ネタ」でもあります。

「ジンクス」に限らず「都市伝説」も因果を説明するためのシステムです。「お話」というのは因果の連続で作られ、因果を説明する役割があります。勧善懲悪は、その典型でしょう。「やまなし、おちなし、いみなし」と言われる「やおい」であっても、受けと攻めの組み合わせを伝えるための「お話」です。

「都市伝説」は「謎」を説明する役割を担っています。不可解な現象が起こった際に天狗の仕業にするのと同じ現象です。不可解な事件が起こった際に、漫画やアニメにゲームのせいにされるのとおなじです。
正しいかどうかではなく、納得できる方が「謎」を説明するのに効果があります。それ故に、正しいとされる科学的解釈は、必ずしも「謎」を説明するのに有効ではありません。科学的解釈には、前提とする知識が必要であったり、複雑な場合があるからです。科学的な解釈は「お話」として考えると、理解しにくいし、単純ではあっても、拍子抜けすることもあり、印象に残りにくいです。そして、伝えるのも簡単ではありません。

「お話」として構成され、山も落ちもある「都市伝説」の方が納得しやすいです。また、「お話」になっているため広まりやすくもあります。

気温を上げ下げする程度の生け贄

「松岡修造の影響で気温が変化する」という都市伝説も「雨男」や「晴れ男」に近い「ジンクス」です。ただし、スケールがすごく大きいですが。

松岡修造は熱い男であるというイメージがあります。本人も、熱い男であることを売りにしています。
暑苦しい人がいるとその周囲も暑く感じられる「ネタ」があるため、松岡修造がいると周囲の気温が上がるというネタも想起しやすくあります。
ここに「ジンクス」で良く起こる間違った因果の構築が加わります。
松岡修造自身が熱い男であるイメージと共に、目立つ人でもあります。印象に残りやすい人です。また、異常気象も記憶や記録に残る出来事です。特に、異常気象は「謎」の現象であり、理由が求められます。
風が吹けば桶屋が儲かるバタフライエフェクトなど、天気や気候の変化にはさまざまな事象が絡んでおり、とても複雑です。異常気象の原因も、ある程度は特定できますが、完全に突き詰めることはできません。それ故にオカルトが入り込みやすいです。これは、病気にも同じ事が言え、種々の原因が相互に絡み合っているため、同じ治療をしても同じようには治癒しません。そのため、やはりオカルトが入り込みやすい分野です。

松岡修造は異常気象の「謎」を説明する役割を担わされたわけです。
当初は猛暑などの「暑さ」の原因とされましたが、それが裏返りいないことで「寒さ」の原因となります。また、さらにいるのに寒いのは「体調が悪かったから」というこじつけがなされるようにもなりました。今後も、色々なこじつけが行われることでしょう。

松岡修造は異常気象を説明するための「贄」になったと考えることもできます。「贄」に選定された理由は、印象に残る人物であることもですが、”いじって”も良いという空気がネットにあったからでしょう。先のニコニコ動画に投稿されたMADやTwitterにおける修造botなども、そのような空気を感じさせます。

デスブログも「贄」です。デスブログとは、「東原亜希のブログで紹介されたモノは不幸になる」という都市伝説ですが、これも間違った因果の構築によるものです。要するにこじつけです。彼女の場合も”いじって”も良いという空気が醸し出されていました。

「贄」として最も酷い例がスマイリーキクチの事案でしょう。歪んではいるものの、正義感や善意によるものだけあって、余計に性質が悪いです。

デスブログスマイリーキクチの件も、「都市伝説」というよりも風説の流布と言った方が良いでしょう。

複雑怪奇な「陰謀論

最初は「都市伝説」の例として8.6秒バズーカの件について取り上げようと考えていたのですが、彼らの場合は「都市伝説」よりも「陰謀論」の方が適切でしょう。

911のテロはアメリカ政府の陰謀」、「月面着陸は嘘だった」などの陰謀論は、結論自体は単純明快で、またある種の「違和感」を説明するためのものですが、その内容は極めて難解です。陰謀論は多くのこじつけから構築されたものです。このこじつけを説明するには、巧みな話術が必要となります。テレビ番組、あるいは漫画などであれば、効果的に伝えることができます。
陰謀論が種々のこじつけを行いますが、姑息なのは説明できない事象を「陰謀だから事実が隠されているのだ」とできる点です。たとえば、「江戸しぐさ」において文献が残っていないのは弾圧されたからだ、のも陰謀論そのものです。

8.6秒バズーカの件のほとんどは、こじつけにしか思えません。特に酷いなと思ったのは、8.6秒バズーカーが広島でお笑いライブ→開催場所が原爆投下地点と一致 : watch@2ちゃんねる というもの。広島原爆の爆心地は、島病院 - Wikipedia のある場所だとされています。吉本の劇場は確かにその近くではありますが、原爆は街中に落とされたので、その周辺にライブ会場ができたとしても何の不思議もありません。そもそも、ライブ会場を決めるのは8.6秒バズーカーではなく吉本興業です。大体、吉本の下企業ですし。
その他もこじつけにしか思えません。わざわざ検証するのが面倒です。それもまた、陰謀論の特徴ではあるのですが。検証するにも、発生過程を追うにも、かなりの労力が必要になるので断念しました。

彼らの場合も風説の流布かと思います。

羊頭狗肉とならないために

最初に釣りタイトルであると宣言しましたが、すまない、ありゃ嘘だ。一応、都市伝説の作り方を説明しましょう。

単純明快にインパクトのある「お話」をでっち上げればよいのです。「お話」の内容は、不思議な現象の「謎」を説明するもので、既存の「お話」を参考にするのが良いでしょう。皆が知りたがっている事象に、印象深い事柄を関連づければ「都市伝説」のできあがりです。

「都市伝説」を広めるのが最も骨が折れるかと思われます。せっせと種を蒔く必要があります。最近だと、画像や動画を作るのが手っ取り早いですが、逆にそれがないとインパクトに欠けます。