交渉は最終防衛ラインの摺り合わせ

問い合わせとクレームの境界

揖保乃糸に、素麺が保存しにくいと問い合わせたら、ギフト商品に同梱されている素麺用のプラスチックケースが送られてきたというロケットニュース24の記事に対して、クレーマーであるとか、ゴネ得であるという反応が見られます。
素麺が保存しにくいので、パッケージの改良は検討しているのか、何か良い保存方法を教えてくれないかという問い合わせ自体は、お客様の声の範疇でクレームでは無いと思います。プラスチックケースが送られてきたのは揖保乃糸の善意によるものです。ロケットニュース24の記事を書いた人が、問い合わせをすればプラスチックケースを貰えることを知っていたならばゴネ得かな?と思わないでも無いですが。


この記事で糾弾されるのは以下の2二点でしょうか。

  1. 揖保乃糸に、メールの一部を公開してネット上で記事にすることを承諾を得たのか
  2. 問い合わせると素麺保存用のケースが送られてくることを記事にすればケースほしさに問い合わせが殺到する可能性があるのに、注意書きだけですませるのは問題では無いのか

事が起こってないのに可能性だけで糾弾するのはネットでよく見られますが、良くない現象だなぁと思います。仮に問い合わせが殺到すれば、揖保乃糸も対応を考えるでしょう。
揖保乃糸も、ロケットニュース24も、プラスチックケースが同梱されたギフト用の商品を購入する方法紹介すればよかったのではないかなと思いました。そうすれば、自分にケースが同梱されたギフトを送れば良いのですし。
興味があって調べてみたのですが、ケース付きの商品を見つけられなかったので、コメントなどで教えてくれると嬉しいです。


ところで、自分にギフトを送ると言えば、ヱビスビール好きの人が 「ヱビス 夏のコク」中元ギフト限定発売 を自分宛に送ったというツイートが私のTLでちらほら見られましたのを思い出しました。

ゴネない損

揖保乃糸の件はゴネ得では無いですが、ゴネ得というか、ゴネない損としては、「素直に承諾したものが損をする」というシステムへの疑問 - いつか電池がきれるまで が思い出されます。
ゴネ得した人が得をするのではなく、ゴネない人が損をしない社会が良いなと言う話。

例示としてある、伊集院光さんのPC修理の話や、病院での順番待ちはゴネない損だなと思いますが、価格交渉に関してはゴネない損とは思えないなと。価格交渉は「素直に承諾したものが損をする」システムに当たらないんじゃないかなと。


新車バイクを買うときの交渉方法 にもあるように値段に納得できなければ、買ってはいけません。

価格交渉は面倒くさいからやらない人でも、価格.com などで相場や安値を調べるのでは無いでしょうか。時間があれば、オークションサイトなどを巡る場合もあるでしょう。
家電などを買う際に、安値の店で買う人もいれば、少し高いけど家電量販店で購入する人もいるでしょう。少し高くても家電量販店で買う理由は、保障期間や、不良品があった場合はすぐに交換できるなどの、サービスがあるかではないでしょうか。家電量販店で購入する人は「安心」も購入していると言えるでしょう。
ジャパネットの高田社長が売っているから買う人も「安心」を購入しているのです。

「安心」の他に「手間」を買っているとも言えます。緊急に必要であれば、価格を調べている暇などありません、また、わざわざ価格を調べるは時間がかかり「手間」です。価格交渉も「手間」と言えます。

手間賃

さて、私は現在アメリカに在住しているのですが、先日軽い事故を起こされました。低速走行じに横から突っ込まれたので、
怪我などはなかったのですが、車のドアが凹みました。ドアの開け閉めに支障があるため修理が必要な状態でした。
状況としては、事故相手が違反切符を切られており、完全に相手が悪いので相手の保険で払って欲しいのですが、アメリカという国はとても面倒で、結局免責額である100ドルを支払って自分の保険で修理しました。

6.加害者側の保険会社に直接クレームするか?自分の保険(COLLISION)のカバーを使って修理するか? が詳しいのですが、先ず自分の保険会社に連絡し、その後事故相手の保険会社にも状況を説明しなければなりません。その後、自分の保険を使うか、相手の保険を使うかを選択します。
自分の保険を使う場合は、保険契約による免責額を支払う必要がありますが、後は自分の保険会社との交渉になるためスムーズです。
相手の保険を使用する場合は、相手の保険会社と交渉するのですが、事故相手が自身の保険を使って私の車を修理しても良いと承諾しない限り、修理ができません。相手が100%悪いのにもかかわらず。海外生活。アメリカで交通事故、弁護士。保険会社。今、転勤でアメリカ在住です。 - Yahoo!知恵袋 にもありますが、最悪のケースだと弁護士を雇うこともあるそうで、そこまでする気力もないので免責額を支払って自分の保険で修理することにしました。

やや泣き寝入りで、ゴネない損ではありますが、正直ゴネても時間もかかり気力も体力も奪われそうで、それだったら100ドル支払ってしまった方が遙かに楽だなと。つまり、免責額は手間賃みたいなものです。

最終防衛ラインがないからゴネない損が発生する

ゴネない損が発生するのは、ゴネればゴネるだけ、サービス提供側が譲歩するからです。つまり、サービス提供側に最終防衛ラインがないことが、ゴネない損を生み出すのです。
どんなクレームにも対応するのは、一見するとサービスが良さそうですが、それに対応していると他の客に対してのリソースが避けなくなるため、全体で見るとまさに「素直に承諾したものが損をする」状態にあります。超えちゃいけないラインを考えろよという話ですが、超えちゃいけないラインを超えた場合はサービス提供側が毅然とした態度で対応しないと、ゴネればゴネる人が得することになり、ゴネ無い人が損をしてしまいます。

価格交渉は、最終防衛ラインが存在します。超えちゃいけないラインよりも、価格を下げることはできません。また、購入する方にも最終棒ラインが存在します。ない袖は振れません。

交渉はしましょう

「素直に承諾したものが損をしない」システムを構築するには、サービス提供側が空気を読みまくる必要があります。しかし、客がして欲しいことは人それぞれです。どんな状況にも対応するのは、実質不可能です。して欲しいことは、むしろ率先して明示して交渉していくべきです。すぐには対応できないこともあるかもしれませんが、次に生かされることもあるでしょう。
例えば、不良品に当たってしまったときに泣き寝入りするべきでしょうか。通常は、購入した店やメーカーなどと交渉するでしょう。不良品への対応を無くすには、不良品を全くゼロにしなければなりませんが、そんなことは不可能です。メーカーなどの対応が

自分のして欲しいことを明示するのは、悪いことではありませんし、できないことをできないと断るのも悪いことでありません。こちらが交渉する前に、先回りして対応してくれるのは、とても良いことです。しかし、先回りしないしないからサービスが悪いなどと評価するのは残念だなと感じます。
して欲しいこと、できないことを明確にして、両者が妥協できる点を模索するのが交渉です。そのためには、両者が最終防衛ラインをきちんと意識しなければなりません。サービス提供側が最終防衛ラインを意識しないと、ゴネ得が発生します。サービスを受ける側が意識しないと、なんとなく損した気分になります。


さしあたって、素麺用ケースが欲しい人は、ケースが同梱されているギフトを探すなり、ギフト業者や揖保乃糸に問い合わせれば良いんじゃないかと。