ザ・インタビューズにはインタビュアーが足りなかった

2011年9月にスタートしたインタビューズですが、2014年の1月に終了するそうです。
サービス開始直後はTwitterでバズっでいましたが、徐々に下火になり僕自身も2012年の1月を最後に回答していません。まぁそれも、そういえばインタビューズどうなったのかなぁ?と覗きに行って 「最近のザ・インタビューズになにか言いたいことはありませんか?」 に回答したという残念なものですが。僕の周りでは、2011年の10月頃にはみんな飽きてたかなぁ?という気がします。また、楽しんでいた人も、公式からと思しき当たり障りないインタビューが投下され始めた当たりから萎えたケースもそれなりに多かったのではないかなと。

みんな質問に応えるのは好きなんだけどね・・・ 100の質問とバトンの問題

質問に答えるといえばテキストサイトの頃に流行った 100の質問 - Wikipedia が思い出されます。一問一答式で、それだけで一つのコンテンツになるのですが、作るのも大変だし、答えるのも大変だし、そして読むのも大変だしというわけで、今ではあまり流行っていません。質問が多すぎるので質問と回答のクオリティを維持するのが大変でもあります。

2005年頃に、「バトン」が流行りました。数個の質問があり、それに答えて、次に答えてほしい人にバトンを回すという形式です。ブログや mixi で流行っていました。恐らく、発端は Muical Baton で Musical Baton ミュージカル・バトン!(歴史+回答つき)[絵文録ことのは] でも述べられていますが、あっという間に広まり、あっという間に廃れました。バトンを回すことで爆発的に広まりますが、そもそも答えても対して面白くないし、答えるのも面倒だし、次に回す人がすぐにいなくなってしまうなどなどすぐに収束してしまう理由の方が多いです。
この「バトン」の収束から判断するに、ザ・インタビューズでインタビューのサイクルを作っても割とすぐに収束しただろうなと。みんなインタビューに答えるのは好きだけど、興味を引くインタビューを定期的に提案するのは難しいため、割とすぐに飽きられてしまうのでしょう。

インタビューに答えるのって結構大変なんですよ。しかも、面白く答えようとすると結構大変。単発のインタビューだけでコンテンツとして楽しめるようにするのは、高いレベルが求められrます。ただ、ザ・インタビューズが盛り上がらなかった大きな理由はインタビューに回答する方ではなく、インタビューをする、つまりインタビュアーが不足していた点にあるのではないかなと。

インタビュー不足

ザ・インタビューズが盛り上がらなかったのは、最も重要なコンテンツであるインタビュー不足にあると考えています。インタビューが少なかったから公式と思われる当たり障りないインタビューが追加されたのでしょうし。

なぜ、インタビューが増えなかったのか。それは、、インタビュアーのインセンティブが無かったのが最大の原因でしょう。その点は、ザ・インタビューズ #theinterviews インタビュアーを開示しないからダメ - ゆとりのミカタ で既に述べられているのですが、インタビュアーを開示するのはザ・インタビューズ独自の良さを損なう面があります。
ザ・インタビューズで質問者を匿名にする利点は、有名人に気軽にインタビューでき、有名人も気軽に回答できる点にあります。ラジオでリスナーがお便りを送り、それにDJが返答するスタイルに近いでしょうか。匿名ならではのインタビューができますし、答える方もインタビューを選別できます。
しかし、有名人がインタビューに回答する形式を中心に据えると、有名人がインタビューに答え続けない限りサービスが盛り上がりません。有名人がザ・インタビューズを続ける利点がないと判断すれば、サービスの存続が危うくなります。しかし多くのインタビューはテキストサイトに頃に流行った100の質問のようなありきたりのもので、有名人のファンであっても興味を引くようなものがなかったのも、サービスが今ひとつ盛り上がらなかった理由でしょう。
ザ・インタビューズはラジオの関係に似ているのですが、決定的に違うのは「ハガキ職人」に当たる存在がないこと。つまり、面白いお題や空間を作り出す人の不在。そのため、コンテンツとしてのインタビューが不足する。これは、有名人でない場合のインタビューでも同じです。

有名人の場合は、有名人とインタビュアー、そしてその回答を見るファンという関係性が生まれます。しかし無名の人の場合は、インタビューする人とされる人の関係しか生まれません。一回のインタビューからは、一つの回答しか得られません。もし、匿名でなかったらお返しにインタビューをすることでサイクルが生まれます。匿名でのインタビューにはしがらみが生まれない代わりに、新たなインタビューが生まれることもありません。そのため、ザ・インタビューズの仕組みでは、サービスを維持していくために不可欠なインタビューが不足してしまうのです。
「ザ・インタビューズがかつての輝きを取り戻すためには何が必要だと思いますか?」 でも書いたんですが、無名の人にとってのザ・インタビューズの面白さは、インタビュー「されて」、有名人っぽく回答できる点にあります。この「される」ってのが重要で、インタビューを探してするのでは面白さが損なわれるのですよね。しかし、そもそも面白いインタビューをされる機会がないという悲しい結末に、それもこれも、インタビュアーにインセンティブが無いからでしょう。

身内で回しても発展しない

インタビュアーの詳細を明らかにするだけでは、インタビューのサイクルは持続しません。これは、バトンの収束を見れば明らかです。同じことを繰り返すだけでは、いずれ収束してしまいます。特に、狭い世界で身内同士て繰り返せば、あっという間に収束します。また身内同士がが相互に評価しあうと、身内以外はさっぱり面白く無いという問題が生じます。

最近、身内ブックマーク問題 - Life like a clown で語られるようにはてなブックマークにおける身内が話題になっています。この話題は、身内の規模の問題です。はてなのホットエントリーが自分の趣味と合っていると感じでいた人も、大きな身内の一つです。もちろん、小規模な身内が全体に影響を及ぼし、それが問題となることもあります。特にその身内が全体のことに興味が無いというなら尚更です。これが、現在はてブで問題視されていることでしょう。

この身内問題を、ザ・インタビューズに当てはめてみると、100の質問やバトン同様に狭い身内のみでしかサイクルを生み出せなかったために収束してしまったのではないでしょうか。

インタビューは難しい

ザ・インタビューズは有名人にしても、無名の人にしてもインタビューが不足していました。その理由は、インタビュアーにインセンティブが無いからですが、インタビューってのは簡単じゃないんですよね。

元巨人・川相を見習え! なぜ、ヒーローインタビューはつまらないのか? - リアルライブ でインタビューに答える野球選手に問題があるとしてるのですが、インタビュアーのレベルの問題もありますよね。野球選手は別に話のプロではないのですから。ただ、インタビュアーのプロってのもナカナカいないものです。

プロインタビュアーといえば吉田豪さんはが有名です。吉田豪に学ぶ「プロインタビュアーのインタビュー術」 | 世界は数字で出来ている などで吉田豪さんのインタビュー術が語られています。インタビューするなら、する人を徹底的に調べ上げないといけない。質問の仕方、聞きたいけど本人があまり答えたくない事象へのアプローチの仕方など、様々な手法があります。面白いインタビューを生み出すには、技術が必要となります。面白いインタビューってのは場を設けるだけでは生まれない。インタビューをコンテンツとするザ・インタビューズはインタビュアーを育てるべきだったのでしょう。

「釣り」に学ぶ、話題の生み出し方

良いインタビューってのは、思わず答えたくなるようなものでしょう。何か一言物申したくなるのは良い話題と言えます。ネットにおける「釣り」はついつい言及したくなるという点で、良い話題といえるでしょう。つまり、釣り師は持続的に興味を引くインタビューを提供できるインタビュアーになれるかもしれません。元トピ職人の解説など のトピシュさんはザ・インタビューズで良いインタビュアーになりそうです。

釣り師は、ヤフー知恵袋大手小町などにいます。釣り師のモチベーションも色々で、単純な愉快もいれば、小町などに見られる自己正当化の手段の場合もあるでしょう。叩きたい人になりすまし小町の皆さんから叩かれる意見を集めて自分の正当性を確保できます。議題として論じさせることが自体が目的の人もいるんじゃないでしょうか。2ちゃんねるの場合は、何かを馬鹿にすると、優良な回答が得られることがあります。これも「釣り」ですが、例えば アスペはこの4コマ漫画のオチが理解できないらしい:哲学ニュースnwk などはアスペとバカにしたいのではなく、4コマの意味を知るためにスレを立てたとも考えられます。

ブログと釣りの相性もよいです。釣れれば多くのアクセスがあり、宣伝効果やアフィリエイトなどが得られます。ちきりん「ネット上では議論をしません。する意味ないから」宣言に見る、マッキンゼーらしさ - Market Hack を読んで思ったのは、ちきりんさんは「釣り」として議題を提起するのが上手いなと思います。だからこそ、いろいろな意見が見られるようにはてブのコメント欄を開放して欲しいのですが・・・。

「釣り」ではないですが、みんなが是非とも答えたくなるインタビューであれば、それが運営からのやらせであっても、みんな面白がって答えたと思うんですよ。あるいは、この人にインタビューして欲しい!というインタビュアーが生まれる場であったならばまた違ったのかなと。
この辺は ゼゼヒヒ - インターネット国民投票 にも同じ感想を感じていて、みんながぜひとも回答したい!って質問がない限りはここまま廃れちゃうんじゃないかなぁと。

まとめ

ザ・インタビューズの面白さはインタビューを「されて」答えることにあります。また、有名人に普段聞けないことをインタビューをしてその回答を見る楽しさもあります。しかし、どちらにせよザ・インタビューズは慢性的なインタビュー不足にあったと考えられます。インタビューが不足すれば、面白いインタビューに出会う確率は減ります。
有名人で集客するシステムとしても、インタビューが面白くなければファンは離れていきます。すると、有名人も回答するメリットがなくなります。
無名の人はそもそもインタビューされる機会がない。あったとしても、結局身内だけで収束してしまいます。

ザ・インタビューズに必要だったのは、インタビューに回答する人ではなく、優良なインタビュアーだったのかなと。公式からのインタビューだった、興味を引くものならみんな面白がって答えたのでしょうしね。インタビュアーとしてのアカウントがあり、インタビュアーとして評価されるシステムがあればよかったんじゃないかなと。