原爆投下が「しょうがなくない」理由

久間防衛相の引責辞任

久間防衛相が原爆発言で防衛相を引責辞任しました。長崎県出身なのに、

「原爆を落とされて本当に悲惨な目に遭ったが、あれで戦争が終わったのだと、そういう頭の整理で今、しようがないなと思っている」
「(米国は)日本が負けると分かっているのに、あえて広島と長崎に原爆を落とした。長崎に落とすことで日本が降参し、ソ連の参戦を止めることができると思ってやった」

とか言ったら駄目だ。

ところで、国のロバート・ジョゼフ核不拡散担当特使が、原爆投下に関して

広島、長崎への原爆投下について、「さらに何百万人もの日本人が命を落としたであろう戦争を終わらせたという点に大半の歴史家は同意すると思う」

と論じてました。アメリカの主張ですが、「さらに何百万人もの日本人が命を落としたであろう戦争を終わらせた」というのは言い過ぎ。

原爆投下に関する覚書

以下原爆投下が全然「しょうがなくない」理由を並べてみる

  • 死者数に関して
    • 広島市:約14万人(1945年12月末まで)
      • 当時の広島市の人口は約35万人
      • たった一発による犠牲者数では最大と思われる
    • 長崎市:約7万人(1945年12月末まで)
    • 負傷者や被爆者数も換算すると犠牲者の数は倍近くに
    • cf. 1945年3月10日のB29爆撃機340機による東京空襲は死者数8〜10万人
      • 原爆、空襲共に被害者の多くは民間人
  • 原子爆弾の型
    • 島型:コードネームはリトルボーイ
    • 長崎型:コードネームはファットマン
      • プルトニウム239を用いたインプロージョン方式
      • 威力はリトルボーイよりも1.5倍であるが、投下された長崎市が起伏に富んだ地形であったこと、第3標的であった長崎市の投下地点が吟味されていなかったことから被害は広島よりも少ない。
      • 長崎よりも平坦な小倉に投下されていた場合の被害は計り知れない。
  • 広島に原爆が投下された理由
    • 投下目標は、原爆の効果を正確に測定できるよう、直径3マイル(約4.8km)以上の市街地を持つ都市
    • 原爆の威力を正確に計測できるように、空襲を禁止
    • 当初の候補は、新潟、広島、小倉、長崎。新潟は遠いので除外
    • 京都も候補に上がったが、文化財云々で除外。ただし、盆地なので地形的には最適。
    • 広島には、連合国軍の捕虜収容所がないと思われていた(実際は米軍捕虜が被爆している)
    • 目標とする都市が、高度な戦略的価値を持つ
    • 参考:なぜ広島に原爆が投下されたのか
  • 長崎に原爆が投下された理由
    • 広島とは異なる地形で、造船所など戦略的価値があった
    • ただし、長崎は原爆の効果を正確に測定できる地形とは言いがたい。
    • 当初の目標は製鉄所のある小倉市。曇天、あるいは工場の煙のため投下地点がはっきりしなかった為長崎に変更された
    • 小倉投下時には、厳命を厳守し慎重に投下地を吟味したのに、長崎ではたった数十秒の雲の間見えた工場地帯めがけて投下した。
    • 長崎の投下地点が吟味されなかった理由は、みすみす投下せずに帰還することできなかったが、帰還する燃料が足りなかったから。
    • しかし、そのお蔭で被害が少なかったともいえる。
    • 参考:投下! 小倉上空10時44分
  • 原爆投下への疑問
    • 無条件降伏を早めた云々に関しては諸説あるので何とも言えない。
      • 投下前に受諾していたとも言われるが色々はっきりしない。
      • 参考:59回目の8月15日を前に の 言葉は魔物「Ignore」と「Subject to」 の件
    • 原爆投下によって、更なる犠牲者を減らしたとは言えないだろう。何せ、原爆たった二発で約21万人が亡くなっている。340機のB29による東京大空襲ですら8〜10万人であるから、原爆以上の死者数が出るには大変な労力が必要である。
    • 終戦を早めるためなら、二発も落とす必要が無い。広島だけで十分。型の異なる二発を投下したのは実験的である。
    • ソ連侵攻前(8/8)に広島に投下(8/6)し、長崎に投下(8/9)したのはソ連への牽制?ただ、これにより東西分裂が避けられた可能性はあるかもしれない。
    • 終戦後に、米軍の医師団が広島・長崎に派遣されている。被害者及び、被害状況が当時としては珍しいカラーフィルムにより動画が撮られている。被害者の症状に関しても、詳細に記録されている。
    • 原爆の死者数=約21万人。なぜか南京大虐殺での死者数=約20〜30万人と一致する不思議。