ガラスは液体か固体か

ガラスは固体だ。そうじゃないと割れない。まぁ、一般に思われている固体とは性質がかなり特殊なのは確かです。
ちなみに本稿は、先のエントリを批判するものではなく、ガラスには面白い性質があることを紹介する主旨は同じで、身近なものでもよくよく観察してみると色々と面白い性質があり、その理由様々です。ガラス以外にもゴムが伸びたり縮んだりできる理由も面白いです。

結晶と非晶

固体と言えば一般的に結晶を想像するだろうか。金属も結晶だし、ダイヤモンドなどの鉱物も結晶だ。セラミックなどの焼き物も結晶である。結晶とは原子や分子が規則正しく並んだ状態である。何故そのような状態を取れるのかというと、温度が十分に低くいと原子や分子が自由に動けなくなるから。自由に動けなくなる際に、バラバラな状態で固まるよりも、規則正しく並んだ方が原子や分子をたくさん詰めることができるので結晶となる。
しかし、世の中には規則正しく並ばない物質もある。それがガラスやプラスチック。ガラスは結晶にならずに液体のようにバラバラな状態のまま固まる。固まってはいるが、結晶ではないので、結晶に非ずで「非晶質」と呼ぶ。液体がそのまま固まった状態なので、粘性が極端に高い液体と捉えることもできるが、液体ほど自由には動けないので固体と考えた方が適切。結晶=安定になる前段階とも考えることができるので「準安定状態」にあると言える。

ガラスはなぜ透明なの?

ガラスは非晶質で、結晶のように明確な融点を示さない。明確な融点は示さないが「ガラス転移温度」という相転移温度は示す。ただし、融点ほどはっきりした温度ではなく、比較的広い温度範囲を示すが、確かに相転移しているので液体とは異なる「相」と考えるべきである。つまり、融点は示さないがガラス転移温度以下では液体は異なる状態になっているということだ。

また、ガラスが透明なのは、ガラスが非晶質だから。
結晶自体は規則正しく透明と考えて良いが、我々の生活の周りにある物質のほとんどは、小さな結晶が集まったものだ。ミクロな視点で見ると規則正しく透明だが、マクロな視点で見ると規則正しくなく非透明だ。例えば、水晶は透明だ。それは、全てが同様に配列した単結晶だから。その水晶を砕いても小さな水晶の粒は透明のままだ。しかし、それを集めると白く濁って見えるだろう。それは、結晶同士の境目で光が散乱してしまうから。通常の結晶は、小さな結晶の集まりで、それぞれの結晶の境目が存在するため非透明になってしまう。
ガラスは非晶質だ。ミクロな視点で見るとバラバラな配列だが、マクロな視点で見るとバラバラ故に均一である。また、液体がそのまま固まった状態なので結晶の境目がそもそも存在しない。だから光を通し透明となる。これは、プラスチックも同じ。

ガラスは非晶質。非晶質は固体

ガラスは液体のようなバラバラな状態で分子が固まった非晶質である。結晶とは異なるが、分子の自由度は結晶と大きく変わらない。故に固体と考えた方が適切。ただ、結晶とは性質が異なるのも確か。無定形な固体と考えるのが吉。

ちょっと踏み込んだ補足

結晶のガラスもありますが混乱するので割愛。
ガラス転移温度は融点よりも低い。プラスチックのように、固体が結晶と非晶質が混在した物質を温めると、先ずガラス転移点で非晶質が液体になり始めるが結晶部分は結晶のまま。それは融点まで続き、融点に達すると結晶も融解し液体となる。この融点とガラス転移点との間は過冷却状態といえる。
融点のように明確ではないが、ガラス転移点を境に熱の出入りがあり、体積や弾性率などの物性の変化が見られることから、ガラスは液体とは異なると考えるべき。ならば固体なのだが、場合によっては物質の三態には含めず、液体と固体の間のガラス状態と考える場合もある。

今回は分子振動と分子間の結合力の観点から固体と液体を区別した。分子間の結合力≫分子振動が固体で、分子間の結合力>分子振動が液体。つまり、分子間の結合力が分子振動に対してきわめて強い場合が固体で、強い場合が液体。
ガラスを液体と考える理由は主に流動性だが、流動性は液体だけの性質ではない。固体であっても、非常にゆっくりと力をかければ流動する。例えば氷河はゆっくりと流れるが氷で固体だ。また、飴玉は固体だが、数日放置すると形が変わり流れる。このように固体的性質=弾性と、液体的性質=粘性を併せ持つ物質を粘弾性体と呼びます。粘弾性体は早く動かせば弾性体=固体的に、遅く動かせば粘性体=液体的に振舞います。それは、タイムスケール次第でであり、多くの物質は固体的にも液体的にも振舞う粘弾性体と言える。