まとめ方が恣意的ではありませんかね?
アメリカと中国の企業ロゴはシンボルだけが多いのに、日本の企業は文字ベースが多いと主張する記事である。しかし、日本の例として挙げられる企業が恣意的に選ばれているのではないか?との疑義が寄せられた。それを受けて、記事を執筆した Brandon K. Hill 氏は以下の記事を投稿した。
なぜか、日本の企業しか調べられていない。”ロジカル”に検証するなら、前の記事で挙げたアメリカや中国とも比較すべきだろう。
というわけで、グローバル、アメリカ、中国のトップ100企業のロゴについて上記の記事の分類に基づき「文字ベース」、「文字とシンボル」、「シンボルっぽい文字」、「シンボルだけ」で分類した。後に述べるが、この分類は主観が入り込みやすく、あまりよい分離方法ではない。
企業のロゴの分類
以下のサイトからグローバル、アメリカ、中国のトップ100企業を選定した。
- グローバル トップ100
- アメリカ トップ100
- 中国 トップ100
それぞれに分類した図を掲載した。左上が「文字ベース」、右上が「文字とシンボル」、左下が「シンボルっぽい文字」で右下が「シンボルだけ」である。
一部の「文字ベース」と「シンボルっぽい文字」は判別が難しかった。「Lenovo」は長方形に囲われているため「シンボルっぽい文字」としたのだが、「文字ベース」との違いはわずかにしか無い。
また、マクドナルドやフォルクスワーゲンは「文字ベース」あるいは「シンボルっぽい文字」に思えるが、元記事を参考に「シンボルのみ」とした。
分類に主観が入り込むため分類方法として大雑把である。ただし、全体の傾向は見てとれるだろう。
USA トップ100 2020年
BrandZ Top 100 Most Valuable US Brands - 2020 (Kantar) | Ranking The Brands
文字ベース | 14 |
文字とシンボル | 38 |
シンボルっぽい文字 | 40 |
シンボルだけ | 8 |
日本とアメリカは実質的に「文字」が多い
まとめてみると、日本は確かに「文字ベース」が多い。アメリカでは「文字とシンボル」と「シンボルっぽい文字」が、中国では「文字とシンボル」多い。グローバルでは「シンボルだけ」は少なく、その他がほぼ30%ずつとなっている。
日本とアメリカでは「文字ベース」と「シンボルっぽい文字」が共に40%であるため、実質的には「文字」のロゴが殆どだ。私は「VISA」などを「シンボルっぽい文字」に含めたが「文字ベース」としてもほぼ問題ないようにも思える。
中国は「文字とシンボル」が突出して多く、また中国は国内外を視野に入れた起業は漢字とアルファベットを併記している。
「グローバル トップ100」に向けると、ルイ・ヴィトン、シャネル、グッチ、プラダ。ディオール、カルティエなどのブランドは「文字ベース」なのが興味深い。特に、ルイ・ヴィトン、シャネル、グッチなどは誰もが知るシンボルマークがあるのに使用していない。ヨーロッパ企業を調べるのは面倒ではあるが、日本で「文字ベース」が多いのはブランド名をアピールしたいのだろう。
ミスリードの図
私の結論としては「世界的にブランドは文字ベース」にあると考える。
なぜ日本のブランドロゴは文字ベースのデザインが多いのか? デザイン会社 ビートラックス: ブログ におけるアメリカと中国のブランドロゴとされる図はミスリードである。
同記事においてアメリカではシンボル部分がメインに使われているとされるが、スターバックス、ナイキ、マクドナルド、アップルを除けば、実際は文字とシンボルとなっている。ちなみに、メンソレータム社のロゴはナースちゃんではない。また、アメリカでは軟膏の商標としても用いられていない。さらに、メンソレータム社はロート製薬の傘下となっている。
実際のロゴに修正すると以下となる。
また、中国の例は動物のキャラクターが抽出されているが、本来は記事中に説明されるように社名を含むシンボルである
多くの場合、動物のキャラ+社名の文字になっているが、その文字は中国語である。
社名を含むブランドロゴに修正すると以下のようになる。ちなみに、パンダのキャラクターである Pnada TV は2019年にサービスが修了している。
シンボル化は一長一短
本当に日本のブランドロゴは文字ベースのデザインが多いのか? デザイン会社 ビートラックス: ブログ で述べられるように、アプリを主とするなら企業ロゴをアイコン化していく方が視認性もよく、周知しやすい。中国のIT企業が動物のキャラクターを用いているのも、アプリのアイコンのためであろう。
一方で、ブランド名を知らしめるならルイ・ヴィトンやシャネル、グッチなどように「文字ベース」にした方が、ハイ・ブランド化できるだろう。¥
シンボル化は文字を読めなくても認知できる利点があるが、一方でブランド名そのものを知る術がないのが欠点である。また、シンボルは被る可能性が高くなってくる。動物を使いにも数に限りがある。このように「シンボルだけ」は一長一短である。
シンボルだけのロゴの戦い
「シンボルのだけ」のロゴを維持するのは難しい。中国のIT企業のように動物を使うにしても、その種類は限られている。動物でなくても、既存の「何か」をモチーフにする以上は被る可能性が高い。
そのためには、スターバックスのようにレアなモチーフを用いるか、ナイキのように単純だが独創的な図形が必要だ。
ただし、独創的だと考えて考案しても、佐野案の東京オリンピックのシンボルのように、似たようなものは見つかるものである。
アップルやツイッターはリンゴと鳥とありふれた具象をシンボルとしている。そのシンボル保つために多大な労力をかけている。
たとえば、アップルはナシのロゴを有するアプリ会社を提訴している。両者を比べてみても似ているとは言い難い。
ツイッター社は、鳥アイコンを普及させるために文字だけのロゴの使用を禁止したり、過去に用いていた鳥のアイコンも使用禁止にしている。
アップルがナシのロゴを提訴したり、ツイッター社が鳥アイコンの使用をコントロールしたりするのも、そのシンボルが単純だからだろう。「シンボルだけ」のロゴでブランドイメージを維持するのはかなりの労力が必要そうだ。