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迷子が出たら店舗を完全にシャットアウトするのがアメリカ

自閉症である我が子がアメリカのホームセンターで迷子になった際に、警察の対応がすばらしかったという話。私も現在アメリカ*1に住んでいますが、アメリカは日本よりも自閉症など障害に対して理解がある!って点は、確かにその通りだと感じます*2。ただ、迷子への対応は自閉症であるか否かはあまり関係が無く、アメリカの施設内で子どもが迷子になった際の通常の対応なのだと思います。そのように考える理由は、アメリカと日本における誘拐に対する認識がかなり異なるなと感じたからです。

アメリカは、誘拐や行方不明者が日本と比較して桁違いに多いです。誘拐は身近な問題で、またそのためには迅速に対応すべきと考えられています。誘拐が発生したら、ラジオやテレビにスマートフォンに犯人や誘拐された子どもの特徴などを発令するシステムがあります。店舗で迷子が出たら、出入り口を完全にシャットアウトするのは通常の対応なのです。
つまり、冒頭で紹介したはてなダイアリーの方が体験したことは、誘拐が問題となっているアメリカの現状そのものなのですが、その背景が十分に共有されていないと感じたので記事を書いてみることにします。

行方不明者情報が目につくアメリカ

アメリカ全土がそうなのかは分かりませんが、私の住んでいる地域ではスーパーマーケットのチラシなどは郵便受けに届けられます。恐らく、チラシを地域に郵送できる郵便局のサービスがあるのでしょう。チラシを眺めているだけでも色々な発見や驚きがあって楽しいです。
チラシには地域の小さなお店がまとまって発行しているミニタウン誌のようなものもあります。そのチラシには毎回行方不明者に関する情報を求める広告があります。子どもも多いですが、大人の場合もあります。大人は女性が多いようです。はじめは、行方不明者情報など特に気にもとめてもいませんでしたが、段々アメリカでの生活になれ、周りを見渡せるようになるにつれウォールマートなどのスーパーマーケットにも行方不明者情報のポスターがあったり、テレビの地元ニュースにおいても行方不明者情報を毎日のように報道していたりと、結構な頻度で行方不明者情報に出くわすことに気がつきました。

行方不明者情報を良く目にするため、「アメリカってそんなに行方不明者が多いのか。怖いななぁ」と考えていました。ただ目下、自分のとってのアメリカの脅威はトルネードです。先日もトルネード警報が発令していました。トルネード警報は地域のサイレンやテレビやラジオの他、日本の緊急地震速報のような仕組みで携帯電話などにも通知されます。私はiPhoneを使用しているのですが、その通知がきちんとされるかを確かめるために通知センターを確認していたら、一番下に緊急速報と並んで「アンバーアラート」とい耳慣れない単語を見かけました。
よく分からないことはすぐ調べるのが私の癖などで、ググってみるとウィキペディアなど幾つかのページが見つかりました。

アンバーアラートとは

アンバーアラートとは、誘拐事件などが発生した際に、各種のメディアを通じて発令される緊急警報のこと。誘拐事件の発生を地域住民に速やかに知らせることで、事件の解決を目指すシステムを指すこともあるようです。
アンバーの名前は、1996年にテキサス州で誘拐され殺害された少女の名前から。誘拐が発覚した直後に地元の警察は、犯人と誘拐された少女の特徴を把握しており、早期に地元住人にその情報を公開していれば少女を発見できる可能性がありましたが、当時はその情報を速やかに知らせるインフラが無かったことで、対応が遅れ、少女は強姦された後殺害されるという、凄惨な結果となってしまいました。

この事件を受けて、地域住民へ速やかに誘拐事件の発生とその情報を知らせるシステムとして、アンバーアラートが構築されました。当初はラジオ局のみでしたが、現在はテレビや高速道路の電光掲示板、インターネットへ一元的に配信できるようになり、2005年からはモバイル向けにも発信されるようになりました。2013年からはモバイル向けのアンバーアラートは、マナーモード中であっても必ず音で知らせるように変更されました。

日米では警察機構の仕組みが異なるなど一概には比較できませんが、アメリカではアンバーアラートを構築しなければならないほど誘拐や行方不明事件が多く、問題視されているのでしょう。

誘拐、行方不明が問題となっているアメリカ

アメリカでは、誘拐、拉致、行方不明事件が問題になっているようです。ただし、日本とは異なり離婚した親やその親族による子どもの奪い合いも拉致・誘拐に含まれるため件数が多くなります。ただし、それを省いても年間で5万件ほどの誘拐が起こっています。日本の場合は、[セコム]子どもを狙う犯罪の実態-統計データ によると年間の認知件数が200件ともっと多い可能性はありますが、それでもアメリカは桁違いに多いと言えるでしょう。
また、アメリカで行方不明者として報告される18未満の児童も年間約80万人と非常に多い。日本は 行方不明者の現状|日本失踪者捜索協力機構 によると全体で10万人です。18歳未満に限ればもっと少なくなるとので、やはりアメリカは桁違いで誘拐、拉致、行方不明が多いと言えます。
つまり、アメリカでは子どもの拉致、誘拐、行方不明が身近な問題だということ。そして、これらの問題を解決するにはアンバーアラートのように迅速に対応するのが望ましいと考えられています。その対応の一つが、子どもが迷子になったさいに店舗をまるごとロックアウト、あるいはシャットアウトのです。
アメリカで子どもが迷子になった際に、店舗の全出入り口をシャットアウトする話は 外で子供が迷子になったらアメリカ人のお母さんたちはどうするの? でも紹介されています。誘拐の場合は即座に犯人を逮捕できますし、事件性の無い行方不明であっても早期に動いた方が見つけやすいでしょう。子どもの誘拐や行方不明が身近な問題だからこそ、店舗がシャットアウトするのも当たり前の対応と受け取れるのでは無いでしょうか。
つまり、冒頭の記事は「アメリカは自閉症の子どもへの対応がすごい」のではなく、「アメリカは迷子への対応がすごい」なのだと思います。その理由は迷子が身近で重大な問題だから。

子どもを目の届かない所におくのは児童虐待?

誘拐が日常茶飯事のため、アメリカでは子どもを送り迎えするのが当たり前だそうで、子どもを目の届かない所におくのは児童虐待とも考えられるようです。

以前、アメリカの一部の親が子どもを紐でつないでいる写真が話題になっていますが、上記のようなアメリカの背景を考えると、一概には迷子紐を批判できないなと思いました。

*1:ESTゾーンの郊外とだけ

*2:ただし、予算は削られているし案外バリアフリーではない