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粗探しをして騒がず、結果は寝て待て。ねないこだれだ。

STAP細胞は再現性や論文の不備で物議を醸し出しているようです。

小保方晴子のSTAP細胞論文の疑惑: 他研究者の論文からの文章拝借疑惑 によると実験項で他の論文からのコピペが見つかったそうです。実験項は、同じ操作をすれば同じような文章になるため、コピペなのに参考文献を提示せず引用してない点は問題ですが、論文そのものの正当性を揺るがすほどでは無いと考えます。また、EDTA (EDTA) と略称の後に何故かまた略称が括弧付きで書かれていたり、KCl(塩化カリウム)と書くべき所がKC1となっているそうですが、この点は著者のミスというよりも、Natureという権威のある雑誌にも関わらず校正の段階で間違いが見つからなかった事の方が不思議に感じられます。

2枚のマウスが酷似している件は STAP論文の画像は「単純ミス」 共著者の山梨大教授:朝日新聞デジタル だそうです。画像や論文の内容に関しても、KCl(塩化カリウム)と書くべき所がKC1となっている細かなミスも含めて、共著者がきちんと論文をチェックしていないようにも思えます。

再現性にもついても疑惑がもたれてるようです。ただし、試薬の会社やロットで結果が再現できないことは良くあることです。精密な測定を行うと、その差が顕著です。また、論文を発表したものの解釈が間違っていた、という場合もあります。諸般の事情により言語化されていない手法が存在し、論文の通りにやっても再現できない場合もあります。

ただ、STAP細胞の論文に関しては、共著者が論文をきちんとチェックしていないのと同様に、論文を投稿する段階で、どの程度の再現性を担保とするか、という議論がきちんとなされていないようにも思えます。小保方さんは若いながらもユニットリーダーとして独立して研究していますが、そのため理研内で経験のある研究者のチェックがきちんとなされていないのではないかな?と。

どの程度の再現性が求められるか

論文として発表する際に、どの程度の再現性が求められるのかは、分野や研究室などによっても違うでしょうが、私が大学の頃にお世話になった先生は「学部の4年生に教えたらできる程度」を基準としていました。これは、卒業研究のために配属された学部の4年時を意識しているのでしょう。研究室に配属された4年生が再現できなければ、その4年生は卒論を書けません。また、大学院へ進学する学生もいますが、学生は毎年入れ替わります。4年生が再現できないレベルの実験では、研究を継続できず、研究室が停滞してしまいます。
もちろん、ある程度習熟しないと上手くいかない実験や測定というのはあります。ただし、これも装置の進歩により随分と楽になっています。電子顕微鏡なども随分と扱いやすくなってます。高価な装置は、4年生だけに扱わせるのは心配なので先輩や助教などが付き添ったりもしますが。透過型電子顕微鏡などは専門のコーディネーターが管理するのが一般的ですが、撮影するだけなら4年生でも可能です。
学部の授業や実験の実習を受けてきた大学4年生がレクチャーを受けたらできるレベルってのは適切な再現性と言えるでしょう。


アメリカなどでは、サマーセッションとして夏休み期間中のみが学部の2, 3年生が研究プロジェクトに参加することもあるようです。また、研究所などではパートのアシスタントが実験を行う場合もあります。それこそ、科学実験を殆どしたことの無い所謂パートのおばちゃんがレクチャーを受け実験を行う場合もあります。簡単なレクチャーで再現できない場合は、研究が停滞してしまいます。この場合は、学部の4年生が行うよりも、さらに簡単に再現できる実験といえるでしょう。

STAP細胞は簡単にできるという点が売りなので、上記の研究アシスタンが再現できるレベルが望まれるのではないでしょうか。

好意的に解釈すれば・・・

最も好意的に捉えるならば、特許など知財を守るため詳しい方法を掲載していない可能性があります。万能細胞などは、はやりの研究でもあり生き馬の目を抜くような分野です。査読時に方法を盗まれて、わざと査読を遅らせつつ、査読した人が新規の実験をさきにやってしまう、なんてこともあります。特に、NatureやScienceなどは、論文を投稿してから出版されるまで1年以上かかることもあり、その間に査読した人に実験を進められていたなんて事例があります。

英語論文と日本語論文のジレンマ - 最終防衛ライン2 でも紹介しましたが、1986年から始まった高温超伝導体の探索も生き馬の目を抜くような世界でした。1987年にアメリカのチューが、イットリウムを含むY-Ba-Cu-Oなるセラミックが液体窒素温度以上でも超伝導体になることを発見しました。製法自体はとても簡単で、高温超伝導体を扱っている研究室ならすぐにでも再実験ができるレベルです。そのため、査読時に盗まれる恐れがありました。そこで、チューはYb-Ba-Cu-Oとして論文を投稿し、出版する前の段階になってY-Ba-Cu-Oと書き換えたそうだ。実際に、チューが論文を発表する前にはYb-Ba-Cu-Oが超伝導を示すとの噂が漏れていたそうですから、チューの目論見は成功したと言えるでしょう。

粗探しをして騒がないで、結果を待とう

再現性に関しては、言語化されていない、あるいはできていない手法が隠されている場合もあります。また、これまで知られていなかった現象では、データは正しくても解釈を間違っていることもあり得ます。
続・STAP細胞が映し出すもの――「科学」と「社会」の関係 | SYNODOS -シノドス- にて、造血細胞が幹細胞へと変化すると言う報告があったそうですが、3年間の検証の結果、造血細胞が肝臓の細胞と融合し分裂することもあることが明らかになり、造血細胞の多能性は否定された例が紹介されています。これまで知られていなかった現象があったため、実験結果に間違いは無かったけども、解釈を間違ってしまった報告をしてしまった例で、これをねつ造だと非難するのは違うでしょう。

STAP細胞の論文には、画像の不備など怪しい部分も見受けられます。再現性に関しても、思ったほどは簡単では無いのかも知れません。理研やNatureも調査をするようですし、その他の研究者が追実験を行っているようなので、遠からず、と言っても数年かかるかも知れませんが結果は出るでしょう。粗探しをして騒がず、結果は寝て待て。ねないこだれだ