長崎物語と博多の女と伊達絵巻

長崎は古くからの観光都市のせいか、お土産に事欠きません。お菓子もカステラに限らず種類が多いので色々探して見てください。夏にはびわが丸ごと入った、国産茂木ビワゼリー 、冬には角煮まんじゅうなどがおすすめです。湯せんぺいの一種である 長崎の銘菓「クルス」 も間にクリームが挟まっていておいしいです。
中身の無いまんじゅうである、一口香 - Wikipedia など面白いお菓子もあります。

しのぎを削っている長崎土産の中に、長崎物語 というお菓子があります。一口大のバウムクーヘンにクリームが入っています。箱は見た目豪華で、個別包装なので職場へのお土産として配りやすいです。何でも、宮城にも長崎物語そっくりな、伊達絵巻というお菓子があるらしそうです。販売しているのは、萩の月で有名な菓匠三全。調べてみると確かにそっくりで、伊達絵巻にはあんこの入っているバージョンがあるみたい。そういえば、同じ九州の 博多の女 は長崎物語のあんこバージョンでした。

さらに調べてみると、一口大のバウムクーヘンにクリームやあんこが入ったお菓子は日本全国に点在しているようです。ざっと調べただけで8点も見つかりました。

どれが一番古い?

代表的な4つのお菓子の写真を公式サイトから引用。どれもこれもそっくり。全国的に似たお土産物が出回るのはよくあることですが、どこが一番古いのでしょう。幸いにも、多くは公式サイトで販売年を確認できました。それをまとめたのが以下の表になります。

菓子名 社名 販売開始年 リンク
長崎物語 唐草 1967年(昭和42年) 菓舗 唐草|会社のご案内
万代太鼓 大阪屋 1969年(昭和44年) 新潟万代太鼓
小倉日記 つる平 1970年(昭和45年) つる平について
博多の女 二鶴堂 1972年(昭和47年) 二鶴堂
伊達絵巻 菓匠三千 1974年(昭和49年) 歴史と味の菓匠三全|菓匠三全について

博多美人と武蔵野日誌、伊豆の旅情は確認できませんでした。

調べた中では、長崎物語の1967年(昭和42年)が最古。また、長崎物語を販売する唐草のページによると

昭和42年(1967)6月 全日空の機内サービスに採用され話題となる。

なる記述があるので、1967年にはそこそこ日本中で知っている人がいたと考えるのが妥当ではないでしょうか。

日本でバウムクーヘンがポピュラーになったのはいつ?

各メーカーの記述には必ずしも「バウムクーヘン」との説明書きはありませんが、唐草は「細長いバームクーヘンの中にクリームがたっぷりと入ったこれまでにないお菓子」と説明しているので、バウムクーヘンの亜種でしょう。

さて、バウクムーヘンが日本でポピュラーになったのはいつ頃なのか。
日本で初めて焼きあげたバウムクーヘン | ユーハイム に日本におけるバウムクーヘンの広がりが詳しく書かれています。
日本で初めてバウムクーヘンが焼かれたのは、1919年(大正8年)の広島県だそうで、当時は「ピラミッドケーキ」と呼ばれていたそうです。現在のようにバウムクーヘンと呼ばれるようになったのは1960年代(昭和35年以降)から。以上の記述より、バウムクーヘンとして世に広まったのは1960年以降と判断できます。
長崎物語の販売年が1967年なので、その頃には随分とバウムクーヘンはポピュラーになっていたんじゃないでしょうか。

オリジナルは長崎物語?

バウムクーヘンの材料は、卵、砂糖、バター、小麦粉でカステラとほぼ同じです。共にオーブンを使い、焼き方に差異があるだけとも言えます。
1960年以降からバウムクーヘンがポピュラーになり、原材料がカステラと殆ど変わらない点からして、唐草の長崎物語が最初と考えて問題なさそうです。全日空の機内サービスで採用され全国で知られ、あんこを入れたバージョンとして博多の女、クリームとあんこのバージョンのある伊達物語が販売されたのでしょう。