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池田信夫氏が不破雷蔵氏のグラフを直リンクしたのは何が問題か

池田信夫老いてゆく日本で格差は拡大する(池田信夫) - BLOGOS(ブロゴス) において不破雷蔵年齢階層別の金融資産保有割合をグラフ化してみる:Garbagenews.com(旧) で作製し利用した円グラフを直リンクしていた問題。

池田氏と不破氏の対応を時系列に

池田氏がライブドアブログ
(cache) 池田信夫 blog : 老いてゆく日本で格差は拡大する - ライブドアブログ をアップする。その際、不破氏のエントリである 年齢階層別の金融資産保有割合をグラフ化してみる:Garbagenews.com(旧) における年代別個人金融資産残高(比率)(2007年度末)の円グラフを直接リンクして記事中に表示。その後、BLOGOSへ (cache) 老いてゆく日本で格差は拡大する(池田信夫) - BLOGOS(ブロゴス) として掲載される。共に、不破氏のブログから円グラフを掲載したことは明言されておらず、リンクも掲載されていない。

その後、池田信夫さんのグラフ無断転載と不破雷蔵さんの反応 - Togetter でまとめられるように不破氏が気が付き池田氏が参照していた円グラフの画像を差し替える。その結果、(cache) 池田信夫 blog : 老いてゆく日本で格差は拡大する - ライブドアブログ(池田信夫) - BLOGOS(ブロゴス) と円グラフのあった部分はゆるふわお詫び画像に差し替えられる。Web魚拓によると、この時点で「もう一つは、現役世代と高齢者の資産格差である。今でも次の図のように個人金融資産の6割を60歳以上が保有しているが、」における「次の図」から不破氏の記事を参照できるようになっている。

すると、池田氏は不破氏の 円グラフ(Web魚拓)ライブドアブログにアップして掲載する。騒ぎが大きくなったので現在は、老いてゆく日本で格差は拡大する(池田信夫) - BLOGOS(ブロゴス) に示されるように [画像をブログで見る] として不破氏の記事を参照するように修正されている。

池田氏の問題点は何か

今回の件は問題点が複雑だ。大雑把に切り分けると以下の3つに分けられるだろう。

  1. データやグラフに著作権はあるか
  2. 直リンクは引用か転載か
  3. 上杉隆を糾弾する資格はあるのか

それぞれについて以下で詳しく解説するが簡単に述べると、不破氏の円グラフには著作権は認められないが、イラストがあるのでその点の著作権は問える。また、池田氏の行った直リンクは著作権法上の引用とは認められない可能性が高い。上杉氏の件に関してはややこしいのであまり深入りしない。

データやグラフに著作権はあるか

データは著作物として保護されるのか、データを勝手に使って良いかは データやグラフは著作物なの?/【漫画】僕と彼女と著作権・第4話 | Web担当者Forum が詳しい。

日本の著作権法では、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(2条1項1号)が著作物とされる。調査データは単なる事実であるため、著作物として保護されない。これはデータを元に作られたグラフや表も同様。グラフや表はありふれた表現であり、創作性が認められないからだ。デザイン性があるなら別だが単なる円グラフは創作物として認められないだろう。
そもそもデータ自体がそれを収集し、作製した人の思想、または感情を表現するものならば、そのデータは恣意的にまとめられた可能性があるため、データとしての信頼性に疑問符がつくだろう。ちなみに、データベースは著作物であるが、データベースとは種々のデータを検索できるように構成されたものであるから、データそのものではないことに注意。
単なる調査データは著作物として保護されないので、不破氏が 高齢者の金融資産の有効活用及び社会的責任投資等への資金流入の可能性に関する調査(PDF) を元に作製した円グラフ自体に著作権はない。
ただし、データやグラフに著作権がないからといって流用してよいわけでもない。例えば、勝手に利用したことで相手に経済的損失を与えたならば法的責任が発生する可能性もある。法的責任がなくても、トラブルを回避するためにもグラフや表ならば自分で作った方が望ましい。

直リンクは引用か転載か

データやグラフに著作権は認められないのだが、不破氏の図 を確認すると猫のイラストが描かれている。猫の絵には著作権があるだろう。池田氏は猫のイラストもそもまま直リンクしていた。
さて、「直リンク」は人によって意味が異なる言葉である。例えばトップページではなく該当ページに直接リンクする方法を「直リンク」と呼ぶ人もいる。現在は少なくなったがリンクする際はトップページにするべきであると主張する人がしばし用いるが、この場合は正確にはディープリンクと呼ぶべきである。また、2ちゃんねる等ではURLを書くと勝手にリンクが生成されるため、httpの冒頭の「h」を抜く人がいる。この時、hを抜かない行為を「直リンク」と呼ぶ人もいる。
ここでは、インターネット上に公開されている画像データなどのURLを参照し、別のウェブサイトに掲載することを「直リンク」と呼ぶ。つまり、今回の池田氏のように自身のブログに不破氏のサイト上にある画像のURLを参照し表示するのは「直リンク」である。

直リンクは引用なのか転載なのかは議論が分かれる。栗田/Web出版における引用 における「3.イメージ等のソースファイルとして、他人のファイルを指定すること」にも書かれているが、著作権法32条の範囲内、つまり著作権法上では「引用」にあたると解釈するのが妥当であろう。著作権法32条の条文は以下に示す。

著作権法32条
(1)公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

「引用は、公正な慣行に合致するもの」であり「目的上正当な範囲内で行なわれるもの」でなければならない。つまり、引用する場合は「公正な慣行」で「正当な範囲内」のみで行わなかればならない。「公正な慣行」は曖昧であるが、一般に以下の要件を満たす必要があるとされる。

  1. 引用先が主であり、引用部が従
  2. 引用部分を明確にする
  3. 引用する必然性がある
  4. 引用元を明示する

「公正な慣行」とはローカルによって変わる可能性がある。インターネットならば、引用する際はリンクを掲載するのが一般的だろう。Twitterなどは、非公式RTに誰も異議を唱えなければ「Twitter上での公正な慣行」とみなされる可能性だってありえる。

インターネット上にあっては直リンクはマナー違反だとされる。その理由の一つは引用元のサーバーに負荷をかける可能性があるから。一方で、ITmediaが画像への直リンクを禁止、通常のアクセスにも弊害発生 | スラッシュドット・ジャパン のように自サイト以外のリンクをリファラーで弾くべきだとの考え方もある。
ただどちらにせよ、今回の池田氏のように画像に直リンクして自分のブログに掲載した場合は、引用元を掲載しておらず、引用であることも明確にしていないので「公正な慣行」とは言えないだろう。そもそも、画像を直リンクして掲載する場合は今回の不破氏が行ったように画像を差し替えられたり、リファラーで弾かれたり、相手サイトが閉鎖した場合に掲載されなくなる等の不確定要素が多すぎる。その点からも、直リンクは控えたほうが良い。

上杉隆を糾弾する資格はあるのか

上杉氏は読売新聞記事を流用し自己のメルマガを配信した疑惑がある。この件に関して 【上杉隆氏盗用疑惑】上杉氏からの訴状が池田信夫氏に到着 - Togetter というややこしい事態になっている。
上杉氏の流用した 原発事故、自国民に退避を求めている主な国・地域 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) はただのデータであり著作物として保護されるのかは疑問なのだが、新聞は商品であるし、自身のメルマガの記事として配信するのは問題があるだろう。
上杉氏を盗用であると糾弾しておいて、一方で自身もほぼ流用と言って良いことをやってるのはどうなんですかねぇ。この点に関しては面倒なのでこれ以上深入りしませんが。