DOMれメロス

メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。メロスには流通経済がわからぬ。メロスは、村のゲーマーである。コントローラーを持ち、ソフトと遊んで暮して来た。けれどもマジコンに対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明メロスは村を出発し、上京しゆりかもめに乗り、此のコミケの市にやって来た。メロスには職も、金も無い。当然のように女房も無い。十六の、内気な(脳内)妹と二人暮しだ。この(脳内)妹は、とあるゲーム、所謂美少女ゲームのキャラクターで、近々続編が発売されることになっていた。発売日が間近なのである。メロスは、それゆえ、(脳内)妹の抱き枕やオカズを買いに、はるばる市にやってきたのだ。先ず、目当ての壁サークルに並び、それから島をぶらぶら歩いた。メロスにはオタクの友があった。セリヌンティウスである。今はアキバで、メイドカフェをしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく逢わなかったのだが、メイドを見る方が楽しみである。歩いているうちにメロスは、アキバの様子を怪しく思った。ひっそりしている。もう夜で、コミケ組がいないのは当たり前だが、けれども、なんだか、暑さのせいばかりでなく、アキバ全体がやけに寂しい。のんけなメロスも、だんだん不安になって来た。リナカフェ前で逢った若い衆をつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の街に来たときは、歩行者天国があって、まちは賑やかであった筈はずだが、と質問した。若い衆は、首を振って答えなかった。しばらく歩いてメイドに逢い、こんどはもっと、オンドゥル語を強くして質問した。メイドは答えなかった。メロスは両手で太陽拳のポーズをとり質問を重ねた。メイドは、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。

  • 「たくさんの人にR@Mを配ったのか」
  • 「はい、はじめは王様の妹婿さまへ。それから、御自身のお世嗣よつぎへ。それから、妹さまへ。それから、妹さまの御子さまへ。それから、皇后さまへ。それから、賢臣のアレキス様へ。」
  • 「おどろいた。国王は厨二か。」
  • 「いいえ、厨二ではございませぬ。法を、信ずる事が出来ぬ、というのです。このごろは、クリエイターの飯の種を、お奪いになり、プロテクトをするメーカーには、タダで遊ばせろと罵詈雑言を浴びせまする。御命令を拒めばプロテクトを破られ、潰されます。きょうは、クリエイターが六人殺されました。」


聞いて、メロスは激怒した。「呆た王だ。生かして置けぬ。」


メロスは、単純な男であった。リュックを、背負ったままで、のそのそ路地裏にはいって行った。たちまち彼は、巡回中の警察に職質された。調べられて、メロスの懐中からはクリムゾンが出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。メロスは、王の前に引き出された。

  • 「このクリムゾンでナニをするつもりであったか。言え!」暴君ディオニスは静かに、けれども威厳を以てツイートした。その王の顔は蒼白で、眉間の皺は、フィギア萌え族のように深かった。
  • 「アキバを暴君の手から救うのだ。」とメロスはハルヒのように悪びれずに答えた。
  • 「おまえがか?」王(笑)。「仕方のwwwww無いwwwwwwやつじゃ。おまえwwwwには、わしのwwwww孤独がわからぬwwwwうえwwっうぇwwwww。」
  • 「草を生やすな!」とメロスは、いきり立って反駁した。「人のモノを奪うのは、最も恥ずべき悪徳だ。王は、クリエイターの飯すら奪っておられる。」
  • 「フリーライドするのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、2ちゃんねらーたちだ。クロスレビューなど、あてにならない。人間は、もともと私慾のかたまりさ。信じては、ならぬ。」暴君は落着いてツイートし、ほっとエンターキーをおした。「わしだって、良きR@Mを望んでいるのだが。」
  • 「なんの為のゲームだ。神と呼ばれる為か。」こんどはメロスがm9(^Д^)プギャー。「罪の無いクリエイターを潰して、何がR@Mだ。」
  • 「だまれ、小僧(ry。」王は、さっと顔を挙げてオマエモナーした。「口では、どんな清らかな事でも言える。わしには、人の腹綿の奥底が見え透いてならぬ。おまえだって、いまに、トゥゲッターで晒しあげになってから、泣いて詫びたって聞かぬぞ。」
  • ララァはかしこいな。自惚れているがよい。私は、ちゃんと死ぬる覚悟で居るたし。命乞いなど決してしますん。ただ、――」と言いかけて、メロスは足もとに視線を落し瞬時ためらい、「ただ、私に情をかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限を与えて下さい。たった一人の(脳内)妹の、続編を買いたいのです。三日後、私は店で続編を購入し、必ず、ここへ帰って来ます。」
  • 「ばかな。」と暴君は、嗄れた声で低く笑った。「この味は嘘をついている味だぜ。逃がした殻の中の小鳥が帰って来るというのか。」
  • 「そうです。帰って来るのです。」メロスは必死でふぁぼった。「私は約束を守りますん。私を、三日間だけ許して下さい。(脳内)妹が、私を待っているのだ。そんなに私を信じられないならば、よろしい、このアキバにセリヌンティウスというコスプレイヤーがいます。私の無乳の友人だ。あれを、人質としてここに置いて行こう。私が逃げてしまって、三日目の日暮まで、ここに帰って来なかったら、あの友人を安価で好きにして下さい。たのむ、そうして下さい。」


それを聞いて王は、残虐な気持で、そっと北叟笑んだ。生意気なことを言うわい。どうせ帰って来ないにきまっている。この嘘つきに騙された振りして、放してやるのも面白い。そうして身代りの男を、三日目に安価してやるのも気味がいい。人は、これだから信じられぬと、わしは悲しい顔して、その身代りの男を安価を実行してやるのだ。世の中の、正直者とかいう奴輩にうんと見せつけてやりたいものさ。

  • 「うはwwっおkwwwww把握wwwwww。三日目には日没までに帰って来い。おくれたら、その身代りを、きっと安価に処すぞ。ちょっとおくれて来るがいい。おまえの罪は、永遠にゆるしてやろうぞ。永遠にだ!」
  • 「なに、何をするだー。」
  • 「はは。いのちだいじに。おくれて来い。おまえの心は、わかっているぞ。」

メロスは口惜しく、タッカラプト・ポッポルンガ・プピリット・パロと唱えた。ブログを閉鎖したくなった。


竹熊の友、セリヌンティウスは、深夜、王城に召された。暴君ハバネロを食わされ、佳き友と佳き友は、二年ぶりで相逢うた。メロスは、友に一切の事情をkwsk語った。セリヌンティウスは無言でRTし、メロスをひしとふぁぼった。友と友の間は、それでよかった。セリヌンティウスは、規制たれた。メロスは、すぐに出発した。初夏、福満しげゆきである。


メロスはその夜、一睡もせず十里のネカフェを急ぎに急いで、村へログインしたのは、翌る日の午前、陽は既に高く昇って、村人たちはヴァナ・ディールに出て仕事をはじめていた。メロスの十六の(脳内)妹も、きょうは兄の代りにレベル上げをしていた(メロスの脳内で)。よろめいて歩いて来る兄の、疲労困憊の姿を見つけて驚いた。そうして、うるさく兄に質問を浴びせた。「さーせんwww」メロスは無理に笑おうと努めた。「市に用事を残して来た。またすぐ市に行かなければならぬ。あす発売のおまえの続編をブラゲしよう。早いほうがよかろう。」
(脳内)妹は頬をあからめた。

  • 「うれしいか。綺麗なDLCも買って来た。さあ、これから行って、ニコ生の民たちに知らせて来い。生放送は、あすだと。」

メロスは、また、よろよろと歩き出し、家へ帰ってPCを起動し、RSSをチェックし、間もなく床に倒れ伏し、呼吸もせぬくらいの深い眠りに落ちてしまった。


眼が覚めたのは夜だった。メロスは起きてすぐ、GEOを訪れた。そうして、少し事情があるから、続編をフラゲさせてくれ、と頼んだ。店員は驚き、それはいけない、こちらには売り場の仕度も出来ていない、発売日まで待ってくれ、と答えた。メロスは、待つことは出来ぬ、どうかフラゲさせてくれ給え、と更に押してたのんだ。店員も頑強であった。なかなか承諾してくれない。夜明けまで議論をつづけて、やっと、どうにか店員をなだめ、すかして、説き伏せた。ニコ生は、真昼に行われた。ゲームの、OPが済んだころ、エラーウィンドウがディスプレイを覆い、ぽつりぽつりウィルスが検出され、やがてCtl + Alt + Del を流すようなブルースクリーンとなった。ニコ生に列席していたニコ厨たちは、何か不吉なものを感じたが、それでも、めいめい気持を引きたて、狭い家の中で、むんむんウィンドウズアップデートにも怺え、陽気にミクをうたい、コメントした。メロスも、満面に喜色を湛え、


以下メロスの(脳内)妹との妄想のためルイズコピペで代用

妹!妹!妹!妹ぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!妹妹妹ぅううぁわぁああああ!!!
あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ!妹たんの桃色ブロンドの髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!
間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!
俺の妹たんかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
アニメ決まって良かったね妹たん!あぁあああああ!かわいい!妹たん!かわいい!あっああぁああ!
続編も発売されて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
ぐあああああああああああ!!!コミックなんて現実じゃない!!!!あ…よく考えたら…
い も う と ち ゃ ん は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!
そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!ハルケギニアぁああああ!!
この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?表紙絵の妹ちゃんが僕を見てる?
俺の妹ちゃんが僕を見てるぞ!妹ちゃんが僕を見てるぞ!脳内の妹ちゃんが僕を見てるぞ!!
アニメの妹ちゃんが僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!
いやっほぉおおおおおおお!!!僕には妹ちゃんがいる!!やったよケティ!!ひとりでできるもん!!!
あ、コミックの妹ちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!!
あっあんああっああんあアン様ぁあ!!セ、セイバー!!シャナぁああああああ!!!ヴィルヘルミナぁあああ!!
ううっうぅうう!!俺の想いよ妹へ届け!!脳内の妹へ届け!


メロスは笑ってFF11民たちにも会釈して、ログアウトし、クンカクンカ!して、死んだように深く眠った。
眼が覚めたのは翌る日の薄明の頃である。メロスは跳ね起き、しまった、でおくれた、いや、まだまだ大丈夫、これからすぐに出発すれば、約束の刻限までには十分間に合う。


以下の行程は吉野家コピペでお送りいたします

そんなこより聞いてくれ セリヌンティウス
昨日、近所の川行ったんです。川。
そしたらなんか水がめちゃくちゃいっぱいで渡れないんです。
で、よく見たらなんかどうどうと響きをあげる激流が、木葉微塵橋桁を跳ね飛ばしてるんです。
もうね、アホかと。馬鹿かと。
お前らな、大雨如きで普段流れてない川に来てんじゃねーよ、ボケが。
大雨だよ、大雨。
なんか渡し守もいないし。泳ぎ切るより他に無いし。おめでてーな(俺が)。
よーしメロスざんぶと流れに飛び込み、百匹の大蛇のようにのた打ち荒れ狂う浪を相手に、必死の闘争を開始するぞー、とか言ってるの。もう見てらんない。
ゼウスな、めくらめっぽう獅子奮迅の人の子の姿を見せるから、その川渡らせろと。
走れメロスってのはな、もっと殺伐としてるべきなんだよ。
目の前に躍り出た山賊といつ喧嘩が始まってもおかしくない、
刺すか刺されるか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。女子供は、すっこんでろ。
で、やっとアキバが見えたかと思ったら、フィロストラトスが走るのは、やめて下さい、とか言ってるんです。
そこでまたぶち切れですよ。
あのな、まだ陽は沈んでねーんだよ。ボケが。
得意げな顔して何が、(バリバリー)やめて下さい、だ。
お前は本当にセリヌンティウスの弟子かと問いたい。問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。(陽沈むけど)
お前、ああ、あなたは気が狂ったかって言いたいだけちゃうんかと。
走れ通の俺から言わせてもらえば今、走れ通家通の間での最新流行はやっぱり、
待て。その人を殺してはならぬ、これだね。
メロスが帰って来た。これが通の叫び方。
いま、帰って来た瞬間は陽が、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光。これ。
で、それに、約束のとおり、いま、帰って来た。これ最強。
しかしこれを叫んだつもりでも、のどがつぶれて嗄れた声が幽かに出たばかりで、群衆に当尺を気づいてもらえない危険も伴う、諸刃の剣。
素人にはお薦め出来ない。
まあお前らド素人は、磔台に昇り、釣り上げられてゆく友の両足に、齧りつきなさいってこった。


セリヌンティウス。」メロスは眼に涙を浮べて言った。「私を殴れ。ちから一ぱいに頬を殴れ。私は、途中で二度、悪いコピペをした。君が若し私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ。」
セリヌンティウスは、すべてを察した様子で首肯き、刑場一ぱいに鳴り響くほど音高くメロスの右頬を殴った。殴ってから優しく微笑み、


「メロス、私を殴れ。同じくらい音高く私の頬を殴れ。私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。生れて、はじめて君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない。」
メロスは腕に唸りをつけてセリヌンティウスの頬を殴った。
「一回は一回です」二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。
群衆の中からも、歔欷の声が聞えた。暴君ディオニスは、群衆の背後から二人の様を、まじまじと見つめていたが、やがて静かに二人に近づき、顔をあからめて、こう言った。
「おまえらの望みは叶ったぞ。おまえらは、わしの心に勝ったのだ。信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。どうか、わしの願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい。」
どっと群衆の間に、歓声が起った。


「アッーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」


勇者は、ひどく赤面した。