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2010年上半期の電子書籍動向

[C78]むんくろ!読本2010(上) | MOON CHRONICLE
僕も寄稿しておりますのでよろしくお願いします。

コミックマーケット78 むんくろ!読本2010(上)

文字数の関係で削除した部分を改稿して掲載しますが、さて僕は「むんくろ!」の中で何を書いたのでしょうか。答えは、むんくろ!読本2010(上)で!

電子書籍の波が来る?

僕がiPhone 3GSを購入した理由の一つは青空文庫を快適に読むことでした。スマートフォンとしてW-ZERO3シリーズを持っていたのですが、解像度や電子書籍リーダーなどの関係から青空文庫電子書籍を読むには決して読みやすい端末ではありませんでした。できれば漫画も読めればいいなー期待して3GSを買いましたが、ちょっと厳しかったですね。
さて、今年の5月には画面のより大きいiPad、6月には画面の解像度の上がったiPhone4が発売されました。買ってはいませんが、触らせてもらった感触だと、どちらも漫画を読めるのではないかなーという印象。iPhone4の解像度のiPadがあれば最強のなのですが・・・。
iPadの発売とiBookにより、電子書籍の話題が活発化したのが2010年上半期ではないでしょうか。

電子書籍再燃

Apple以外にも、2009年の2月にAmazonより第二世代kindleの販売が開始され、googlegoogle booksというサービスを行っています*1。各社が溜め込んだコンテンツが今年花開いた状況なのでしょう。米国は日本と異なり生活圏に必ずしも本屋があるわけではなく、また書籍といえばペーパーバックのように質の悪い紙によるものか、持ち運ぶのに苦労するハードカバーがほとんどです。書籍の形式や販売方式、権利関係の違いから米国の方が電子書籍に積極的のようです。
日本も2003年にパナソニックΣブックを、2004年にはSonyLIBRIe*2などの電子書籍リーダーを販売。電子書籍フォーマットとしては、2001年にシャープがザウルス用に開発したXDMFなどがあります。また、1996年からパピレスなどの電子書籍を販売するサイトが存在していました。しかし、現在のところ電子書籍リーダーやパソコンで書籍を読むスタイルは広まっていません。広まらない理由は明確ではありませんが、電子書籍リーダーが普及していないことや、電子書籍のフォーマットが様々なため電子書籍リーダーと合致しないことがある、などなど。まぁ。通常の書籍のほうが便利だからでしょう。
むしろ、携帯電話向けの電子書籍販売の方が盛んであるかもしれない。携帯電話向けの電子書籍が普及したのは、携帯電話の普及率が高く、データのコピーを管理でき権利関係を処理しやすいため、出版関係各社が参画しやすかったからでしょうか。ただし、小説を読むには一画面に表示出来る文字数が十分ではありません。それ故、より気軽に読める形式としてケータイ小説などが誕生したのではないでしょうか。漫画も提供されていますが、携帯電話の画面は小さく決して読みやすいとは言えない。そのためコマごとにアップして表示するなどの工夫がなされていますが、それはコミックスで読む漫画とは別の体験であり、異なる作品だ。ケータイ小説同様に携帯電話の画面で見ることを主眼とした漫画もあり、既存の漫画とはまた違った表現方法があって興味深いです。携帯電話向けに電子書籍を提供してきた日本の出版社だが、kindleiPadなどの動きを受けて電子書籍に参入する動きが再び活発化している。特に、iPhone, iPad向けの電子書籍が増加しているようだ。

iPhone / iPod touch 向け電子書籍の動向

eBook Japanは2008年からiPhone向けに電子書籍を提供していました*3。2010年からは新たにXMDF形式の電子書籍ファイルを販売する電子文庫パブリiPhone用のアプリを用意しました*4。また、サンデーもうる星やつら名探偵コナンなどの名作をiPhone電子書籍を販売しています*5手塚治虫マガジンShop では手塚治虫の作品を購入可能。しかし多くは、一冊あたり400円前後とコミックスと変わらない価格帯なので割高である。もちろん場所を取らない利点があるが、購入したiPhoneでしか見られない場合もあり、食指は動きにくいだろう。
iPhone用のアプリ形式で電子書籍も販売されている。例えば、小飼弾氏による決弾や弾言、はてなダイアリーで更新していたハックルベリーに会いに行くが元で出版することになった、岩崎夏海による、もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだらなど。ただどちらも、書籍版が発売された後にiPhone用のアプリとして提供されている。そんな中、今年の5月に講談社京極夏彦著「死ねばいいのに」をiPadの発売に合わせて書籍版と電子書籍版を同時販売した。大手出版社の有名作者自らが電子書籍版を販売し、また記者会見で京極夏彦電子書籍に関する私見を述べたことでも話題を呼んだ*6。大手出版社としては文春文庫がアキハアラ@DEEPなどiPhone向け電子書籍の販売を6月に開始している*7。一冊あたり450円と悪くはない価格帯ではないでしょうか。

個人間では自身で書籍を裁断し、スキャナでPDFファイルに電子化する方法も盛んに行われている。一部では「自炊」とも呼ばれている。ただこの「自炊」、出版社でデータとなり、印刷所で印刷され製本、その後本屋で流通される流れを逆に自身で辿らなければならないのがバカバカしい。また、この自炊を代行するサービスも登場している。ただし、法律的には「私的複製でも複製権の侵害」の可能性もある*8。「自炊」する手間暇を考えれば、出版社が電子書籍のデータを提供してくれた方が良いだろう。

電子書籍化の利点と欠点

私は青空文庫を始めとして色々なiPhone向けの電子書籍を試してみた*9。小説に限ってはeBook Japanを除きどの形態でも読みやすい。eBook JapanはPDF形式で書籍の版組のまま提供しているためiPadのような大きな画面で見ると読みやすいのかもしれない。本を読むだけなら電子書籍で必要十分である。どこでも気軽に読めて嵩張らないのは嬉しい。青空文庫を利用すれば多くの本を無料で持ち歩ける。書籍にはない魅力が多い電子書籍だけども、やはり欠点もある。電子書籍ビュワーやリーダーが必要なこともさることながら、面白い作品に出会った際に簡単におすすめできない、つまり人に貸せないのである。京極夏彦の「死ねばいいのに」の読後感がなんともモヤモヤしており、誰かに貸して感想を聞こうと思ったのだが電子書籍では端末ごと貸すしか無いがそれは流石にやりたくはない。ケータイ小説やweb小説ならば無料で読めるので薦めやすいかと言えばそれもなかなか難しい。ケータイやPCのディスプレイで小説を読むのは辛いという人は多い。私もその一人であったけど、iPhoneのおかげで楽しめている。

ケータイ小説電車男も書籍化されなければまだまだ多くの人には読んでもらえない。作品を一般に広めるという点では、現在のところ書籍化するのが一番の方法なのかもしれない。そう考えると、まだまだ電車男の頃からほとんど変わっていないのだなと。しかしもしかしたら、人々が電子書籍に慣れれば作品を簡単に広めることができるようになるかもしれない。またさらに、瀬名秀明などが参加し編集を通さず作家が直接電子書籍を販売する「Air エア」がその流れの一つになり得るかもしれない*10