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5. 架空の紋章考察

紋章はフィクションにも登場することがあります。名前に紋章がそのまま入った「星界の紋章」という作品もあります。私は未読なのですが、貴族が紋章を保有し、それを管理するために紋章院が存在し、戦艦にも紋章が描かれ、誰の所有物か識別できるという点はまさに紋章そのもの。アーヴ根源二九氏族 によると氏族ごとに象徴が決まっているようです。彩色などのルールは不明ですが、配色は比較的自由で色の違いで家系を区別する場合があるようです。
同じく紋章の名の冠された「王家の紋章」なる作品もありますが、こちらは古代エジプトのお話なので、本稿で扱う「紋章」ではないですね。
日本は紋章に馴染みが無いためか、紋章を取り扱った作品はそこまで多く無いように思われます。また作中で「紋章」という言葉が使われいても、所謂これまで説明してきたようなルールがしかれた紋章ではなく、印やシンボルとしての紋章が多いようです。そもそも、史実を元にした作品を除いて、ルールをがっちりと決められた「紋章」を描くことに意味があるのかという話で。そこまで世界観をがっちり決める必要があるのという問題もありますし、また設定上は存在するが、作中で見ることは殆ど無い場合もある。

コードギアス 神聖ブリタニア帝国旗は違反紋章?

神聖ブリタニア帝国国旗 は青地に赤十字の中央に国章が描かれています。
コードギアスの世界は我々の世界と歴史的に共通する点が多く、神聖ブリタニア帝国 によると、テューダー朝期のイングランド王国まではほぼ同じ。しかし、その後エリザベス女王に息子がいてヘンリー9世として即位し、アメリカ合衆国が成立していない。ここから我々の歴史と分岐したようで、革命勢力により王家の存続が難しくなった折、ブリタニア公により王家は植民地であったアメリカ大陸に逃れ遷都。その後テューダー朝の血筋が途絶えた際にブリタニア公爵リカルドが王位を継承し帝政を施行。国号も「神聖ブリタニア帝国」に変更し、リカルド・ヴァン・ブリタニア1世として皇帝に即位している。
さてさて、改めてブリタニア帝国の国章を見てみると、黒地に赤いライオンと緑色の蛇である。盾は金色で装飾され、皇帝を示す冠が被せられている。ライオンは王権を、蛇は死と再生および知恵を象徴するそうである。また、ライオンの尻尾が蛇になったキマイラであり、互いの頭を食い合う姿は「ウロボロス」で、永遠を意味する。イングランド王の象徴がライオンなので、そのラインを踏襲したと考えられるのだけど、待てよと。「紋章」のルールに従えば、黒地に赤と緑を被せてはいけないのではないか?
歴史的に見て、コードギアスの世界は15〜16世紀前までは我々の世界とはほぼ同じ。「紋章」のルールはそれ以前の13〜14世紀に決められたはずなので、コードギアスと我々の世界の「紋章」のルールは大きくは違わないはず。つまり、原色の上に原色を重ねるのは違反紋章のはずだ。ブリタニア帝国が元々「紋章院」で「紋章」を厳しく管理していたイングランドだったのなら尚更、神聖ブリタニア帝国の国章は紋章のルール的にはありえないことになってしまう。そもそもイングランドの紋章はスリーライオンである。一体いつ変更されたのか。それはやはり、イングランド王の血筋が絶えブリタニア公爵リカルドが皇帝となったときだろう。この時、過去のイングランドとの決別を示すためスリーライオンを捨て、さらに皇帝の権威を示すために紋章のルールすら独自変えてしまったのかもしれない。これは、先の右向きの鷲が描かれたナポレオン皇帝の理屈と同じでしょうか。ちなみに、ナポレオンも紋章に独自のルールを加えました。あるいは、紋章のルールは変わっていないが、皇帝の特権として認められた配色なのかもしれない。こちらの方が、絶対的な支配力を持つブリタニア帝国を象徴しているように思われます。
またブリタニア皇帝が「皇帝」なのに鷲を使わない理由は、鷲はローマ帝国の、つまりブリタニアを追い出したヨーロッパの象徴だからかもしれません。ちなみに、イギリスの紋章にはあまり「蛇」が描かれることがありません。これもやはり、過去との決別、そして新たなる再生を意味しているのかもしれません。
権威を有する王族でありながら、「死」を意味する黒地を用いるのは通常では珍しいのではないでしょうか。そういえば、実際の紋章は不明ですが、ナウシカに出てくるトルメキアの旗は黒地に金の尾を持たない二つの頭をもつ蛇です。紋章も旗に基づいているのではないでしょうか。
ちなみに、我々の世界でブリタニア帝国に位置する、アメリカ合衆国の国章 はアメリカ国旗を模した盾を持ち、それぞれの足に13枚の葉のあるオリーブと13本の矢を持ったの鷲。これは別に帝国だからではなく、ハクトウワシ がアメリカの国鳥だから。

フラダリなロマサガ2 バレンヌ帝国

紋章が出てくるゲームといわれて個人的に思いつくのはロマンシングサガ2。ロマンシングサガ2はバレンヌ帝国と七英雄との戦いを描いたゲーム。バレンヌ帝国はアバロンを首都に持つ帝国で、かつては世界を広く統治していたようですがゲーム開始時の帝国暦1000年では衰退し、アバロン周辺にしか領地がありません。世界を広く統一していた頃から、「王」ではなく「皇帝」の位を自称できたのではないでしょうか。ってそもそもゲームの「帝国」の成立過程は謎ですね。多くは、バレンヌ帝国のように多くの国を平定している国の王を「皇帝」と呼ぶことが多いようです。

バレンヌ帝国の国章はステータス画面で確認できます。クラウンとその下にメット。メットの周りにはマント。シールドはサポーターであるユニコーンにより支えられている。そして、盾にはフラダリが描かれいます。所謂大紋章に近く、皇帝や帝国兵の鎧にも描かれています。ただし残念なのは配色が一切不明である点。クラウンやメットにマントは王ですから金色だったのではないでしょうか。
さて、バレンヌ帝国にはフラダリが描かれています。フラダリは先に述べたとおり、我々の世界では現在では百合、あるいはリリスを模したものとされますが、ロマサガ2の世界でも同じなのでしょうか?フラダリは現在百合などを意匠化したものだとされますが、世界的にも似たような図案が多く、そのオリジナルは不明だとされます。それほどにまで古く、ある意味人類共通の図案ならば、ファンタジーであり我々の世界と殆どかかわりが無いはずのロマサガ2の世界でも同じ図案があっても不思議ではないかもしれません。帝国の紋章に描かれているくらいですから、我々の世界と同様に王権を意味するのでしょう。もしかしたらトライデントが起源かもしれませんね。残念ながら、ロマサガ2において、他の貴族や国が使用する紋章は描かれていません。
続編であるロマサガ3の世界でも紋章が使われている形跡を見ることが出来ます。例えば王遺物には、剣を模した×字の紋章が描かれています。ただ、なぜか聖王と魔王共に同じ紋章が描かれています。×字は、運命の子を意味する紋章なのでしょうか。ならば、神王たるサラや少年も同じ紋章が用いられるのかもしれません。また、設定資料集を見る限り、カタリナも紋章を有しているようです。ただ、残念ながらロアーヌ侯であるミカエルの紋章は不明です。鎧には太陽を模した文様が描かれています。太陽が重要な世界観になっており、ロアーヌは聖王三傑の一人が建国したので王権の象徴として太陽が用いられていても不思議ではないかもしれません。

ロト紋

ゲームの紋章といえば、ドラゴンクエスト1, 2, 3に登場するロトのしるしは、ロトの紋章とも呼ばれます。王者の剣の柄、鎧にも描かれますが ロトの盾 はまさに紋章かなと。この紋章は、ドラクエ1の勇者、ドラクエ2のロトを血を引く三国家にも受け継がれています。ロトの紋章は継承という点では「紋章」ですが、ルールが不明で勇者ロト以外にも紋章を使用していたのか分からないなので実際には印でしょうか。ロトの盾のように、青地に金のラーミアはまさに紋章といっても良いデザインです。ただし問題は、ドラクエ1で登場しない点。1の勇者が印として盾を持っていた可能性も考えられます。1の勇者の装備欄に盾が無いならば、初めから持っていた説も有力なのですが…。ドラクエ2のサマルトリアにあったトロの盾は本物なのでしょうか…。

ところで、ロトの紋章は何故ラーミアなのでしょう。ロト、ルビスに関する考古学。 によると正史とされる「精霊ルビス伝説」が言うには、本来ロトとは、ルビスの夫であるディアルトのことです。ディアルトは大地を司るコリドラス家の跡継ぎですが、神と人間の女性との間に生まれた異端児です。神の律から外れた彼は、ラーミアを駆ることの出来る唯一の存在でした。恐らく、ラーミアがディアルトのシンボルだったのではないでしょうか。
彼らの住むイデーンは彼らの結婚する頃には崩壊の危機にありました。その渦中で6つのオーブで世界を救おうとしたのがルビスであり、魔王と戦ったのはロトたるディアトルでした。魔王と戦った際に「王者の剣」「光の鎧」「勇者の盾」を作ったのかは謎ですが、それぞれの武具にラーミアの意匠が施されているのは「ロト」のシンボルがラーミアだからでしょう。このような経緯があり、ラーミアを復活させ、魔王を討ったドラクエ3の勇者は「ロト」と呼ばれ、その紋章は象徴たるラーミアなのでしょう。

その他

その他、紋章が出てくるゲームとしては、紋章デザイン - テイルズ オブ ヴェスペリア。こちらは我々の世界とは全然違うルールが敷かれているようです。紋章の複雑さから見て、戦争で識別し易いという意味は薄れ、花押のように個々を識別する図案や文様に近いような気がします。
ファイヤーエンブレムも「紋章」とされ、「紋章」に集いし者の戦いの物語ですけども、エンブレムなのでどちらかというと印。
ゼノギアスでは国章が出てきますが所謂「紋章」を元にしたものではなく、図案や文様。ゲーム中で印象に残るのはセフィロトの樹を模したソラリスの国章と、十字架を模したニサン、そして羊と十字を模した「教会」の印。この中で最も目にするのは教会の印で、それが羊を模している理由はゲームの根幹にかかわる部分でもあります。ゼノギアスは設定資料が濃すぎです。

6. 現代に息づく紋章 エンブレム