日本のミネラルウォーターは清涼飲料水

記事自体は2006年で古いのだけど[これはひどい]と思ったので。
欧州のミネラルウォーターのペットボトルがペラペラなのに、どうして日本のは分厚いの?と言う疑問に対する答として日本ではボトル詰めしてから加熱殺菌しなければならないため、というのはまさにその通りなんだけど、それに対する結論として「自然採取状態では販売できない仕様の原水を使用している」と導くのは飛躍しすぎ。

日本と欧州で、殺菌、非殺菌なのは水に対する文化的相違に基づくもので、それにより行政上の区分も異なります。欧州では硬度が高すぎるため、飲みやすい水を瓶詰めして販売していた下地があります。水は貴重な天然資源ですから、水源が汚染されていないこと、また汚染から守ることが重要となります。そのため、欧州のミネラルウォーターは水源から水質、運送などなど厳格な基準が設けられています。
一方、日本は「湯水のように使う」という言葉が象徴するように、水は無限に湧き出るものという感覚です。その感覚が一般的だからこそ、上水道=飲料水というインフラが整っているのでしょう。日本でミネラルウォーターが一般的になったのは、ここ20年で欧州の下地に比べると浅い。ミネラルウォーターが大手メーカーから販売され始めた頃は(六甲のおいしい水が1983年)、水に金を払うなんてという人が少なくなく、今でもそのように考えている人はいるでしょう。欧州からミネラルウォーターという文化が輸入されたと言ってよいでしょう。
さて、清涼飲料水(ミネラルウォーター)の表示 にあるように、日本ではミネラルウォーターは食品衛生法の管轄。でもガイドラインは、農水省と厚生省の二つから出ています。日本ではミネラルウォーター=清涼飲料水という区分となっており、そのため基準も清涼飲料水を元に作られています。清涼飲料水なので、殺菌することが前提。そのため、殺菌していない場合に「殺菌又は除菌を行っていない旨」を明記しなければなりません。
法律区分上清涼飲料水ですが、メーカー側から天然水に付加価値を付けています。例えば、日本のミネラルウォーターの先駆けである「六甲のおいしい水 - Wikipedia 」は、発売当初は法律の区分から加熱殺菌して販売していました。しかし、法改正により加熱殺菌する必要がなくなったのでミクロフィルターを利用し無菌化し販売しています。また、最近は大手のメーカーのミネナルウォーターはナチュナルミネラルウォーターという「特定の水源から採取された地下水で、沈殿、ろ過、加熱殺菌外の処理を行っていない水」も多くなっています。例えば、サントリーの天然水や日本コカ・コーラの森の水だよりなど。
というわけで、売っている水のトリビア における「自然採取状態では販売できない仕様の原水を使用している」は言いがかりでしょう。

ついでに、先のリンク先でペトボトルの原価が50円とかありましたが、いくらなんでも高すぎでしょう。明確なソースではないですが、武田邦彦 (中部大学): ゆっくり考える・・・ペットボトルのリサイクル(1)ペットボトル - Wikipedia によると通常の500mペットボトルの単価は10円〜15円。記事中ではミネラルウォーター用のペットボトルは透明度の高い良質なペットボトル云々とありますが非常にうそ臭い。分厚く透明なペットボトルが効果ならば、温かい〜お茶など赤字になるのではないでしょうか。そもそも塩ビですらそれなりの透過率なわけで。また、ペットボトルが60円もしたら、運搬、在庫管理などの費用はいったいどこから捻出するのでしょう。価格的に考えれば、飲料水におけるボトル、ラベル、運搬、在庫管理の費用が60円〜くらいじゃないでしょうか。そもそも、いつでも自動販売機で飲みたいものが適温で飲めるというサービスを買っているわけですから、飲料の値段そのものが安いのは道理なんじゃないでしょうか。