実写版「カイジ」は役者を見に行け!

カイジを見てきました。シネコンの前でギリギリまで仏陀再誕を見るか悩みましたが、同じ1800円払うならカイジにしとこうかなと。そういえば、映画グッズコーナーに給料袋入りペリカが売ってました。1000ペリカが91枚、つまり91,000ペリカの入った給料袋が450円で売ってました。破格です。帝愛グループの慈愛はすばらしいですね。
さてさて、ネタバレ無しで感想を書くなら、漫画を実写映画にした作品の中では上手くまとまっていたかなと。デスノート後編風のアレンジと言いますか、原作を知らない場合はやや意味の通らない部分もありながら、役者などの勢いでなんとか見られる。原作を知っている人だと「あれ?原作と違う設定だけど、この後どうするの?」と言う楽しみがあります。ただし時間が無い分だけ話のつながりや、各キャラクターの動機に弱い部分がありますけど。


カイジ役は藤原竜也でしたが、映画を見る前は少々不安でした。何せ、彼の演技は舞台役者過ぎてテレビや映画などの作品では大げさに映ってしまうのです。そして。その大げさな演技故に他の役者から浮いてしまう。しかし、本作では周りが天海祐希香川照之であったのでその心配はありませんでした。そもそも、原作からして大げさなセリフ回しですから、むしろ彼が適任だったのではないかなと思います。ただ、感情が入りすぎて度々「オレァクサムヲムッコロス!!」みたいなオンドゥル語的になったセリフが聞き取れないことがありましたけど。
また、以前見たときには結構ふっくらしてましたが、本作では役作りのために減量したそうです*1。確かにほっそりしてましたが、元の骨格が太いのか原作のように尖ってはいませんでしたけど。カイジが地下に堕ちて、久しぶりのビールを飲むシーンを撮影するために実際に禁酒したりとかなりの入れ込みよう。禁酒しただけあって、原作どおりの台詞回しである「キンキンに冷えてやがる。悪魔的な旨さだっ!」と心の中で叫ぶシーンも実に良かったですね。ちょっと今度ビール飲むときに再現したくなっちゃいました。
「悪魔的に」代表されるように、本作では原作の台詞回しをほぼそのまま使用。良く言えるものだなと。そして、利根川役である香川照之が本当に良かったですね。原作とはちょっとイメージは違うものの、エリートの雰囲気が漂います。演説の件も良かったですが、やはり見所はEカードですね。あのシーンは漫画で何度も読んでいるにも拘らず、やはり熱い。「蛇がっ!」や「毒を盛ったな」などのセリフがイチイチ様になるのは香川照之だからでしょうか
原作と若干違うのは、遠藤が女になっている所。演じるは天海祐希。ドスの聞いた台詞回しは流石元宝塚の男役で、なかなか様になっています。最初は、映画に花を添えるために女性にしたのかな?と思いましたが、遠藤を女にすることで、かつては利根川のライバルだったことや、最後の大勝負でカイジに金を貸す動機や、ある種のしたたかさを上手く表現でき、さらに短い時間でまとめることができた、という点で結構重要な役所になっています。名前が「凛子」なのは頂けないですけど。俺の「凛子」を返せ!


結構良かったですが、やはり時間が短いせいで色々矛盾点や気になる点もあります。例えば、カイジが地下に堕ちた理由も動機付けが弱いです。原作ならば「信頼」というカイジの強みでありながら弱さが長い時間かけて説明されるので、その展開もありえなくも無いですが、ちょっと唐突かなと。また、鉄骨渡りはやはり漫画的なのだと気づかされました。石田さんがカイジに金券を託すシーンは原作でも濃い内容で、今後のカイジの糧となる場面です。本作でもそのシーンは十分に再現されているのですが、実写化するとどうやっても役者が動くし、周りの背景も動く。つまり、鉄骨の上にいることを否応無しに認識させられる。すると、そんな不安定な、今にも落ちそうな鉄骨の上で、そんな悠長に話をすることなんて出来ないだろ、と中に入っていけない。漫画でもそれは同じなのですが、漫画の場合絵は止まっている。そのため、読者は鉄骨の上にいるのだと強く意識されない。それ故、中に入っていきやすいのかもしれない。この辺は、漫画と映画の違いなので如何ともしがたいのかもしれないが。

後どうでもいいけど、おなじみの「ざわ・・・ざわ・・・」はわざわざ再現しなくても良かったんじゃないかなぁと(笑)。そこら辺は役者やカメラの「溜め」で何とかなる部分だったように思います。面白かったけど。