マジこんな話、本気になってどうするの

何を主張したいのか分からない。wiseler さんは自身の主張は以下の通りであるとまとめている、

日本国内でマジコンの販売が禁止されても、家庭用ゲームの不正コピーはなくならない。むしろ不正コピーの状況・被害は悪化すると私は主張する。

しかし、悪化する根拠があまりに薄いと感じる。また、主張が不透明になっている原因は、マジコンとアマチュア開発者との関係、および Steam に関する主張が冗長であることもあるだろう。この点は枝葉ではないかなと感じた。
マジコン販売禁止だけではなく、ロムイメージをアップロードすること、違法なロムイメージをダウンロードすることも規制しなければ不正コピーによる損害を減らすことは出来ない、という主張なら分かる。ちなみに、この主張は「不正コピーの状況・被害は悪化する」とは意味が異なります。

任天堂などのゲームメーカーがマジコン販売規制以外していないということはなく、ダウンロード違法化がほぼ決まったけど何か質問ある? における津田大介さんの話によると以下に引用したように、ゲーム業界もダウンロード違法化に取り組んでいるようだ。

プログラムに関しては現時点では適用除外だけど、ゲーム業界がプログラム含めろと 強く要望しており、どうなるかは微妙な状況。

私自身は、先ずはアップロードしている方を厳罰すべきだという考えは変わりませんが、現状ではサーバーが日本国外にあって手出しが難しいこともありますし、メーカー側もロムイメージの違法アップロードに対して手をこまねいているだけではないことの裏づけにはなるのではないでしょうか。

1.エミュレータとマジコンは同等ではない

wiseler さんはマジコンが販売規制されても、ロムイメージは簡単に手に入るのだから、エミュレータを利用すればよいと主張している。しかし、私はエミュレータはマジコンを利用するよりも簡単ではないと考える。DSのマジコンであるR4はロムイメージがあればプレイできる。一方DSのエミュレータの現状は、再現性にやや難があるようだし、ゲームソフトごとに設定を調整することが求められるようだ。また、PCのスペックにもよるので、エミュレータとロムイメージを手に入れるだけでプレイできるわけではない。さらに、マジコンとエミュレータではプレイ環境が大きく異なる。特にDSのような携帯型ゲーム機は持ち運べ、プレイ時の姿勢を問わないという利点がある。エミュレータではそうはいかない。さらに、DSの場合、どれだけソフトの再現性が上昇しようが、タッチスクリーンである以上プレイ環境は100%再現できない。つまり、エミュレータの利用はマジコンほど簡単ではないし、またプレイ環境も全く異なるため、マジコンが販売規制されればエミュレータを利用すると、直線で結び付けることは出来ない。
マジコンが販売規制されればエミュレータの開発が進むかもしれない。しかし、ロムイメージとエミュレータだけで一体誰が儲かるのか。マジコン販売においては、マジコンを売るためにロムイメージのアップロードが行われていた面がある。また、マジコンなどの不正コピー対策として、痛いニュース(ノ∀`):DS版「ドラクエ5」、マジコンでプレイすると船が港にたどり着けないトラップ が記憶に新しいですが、このプロテクトも直ぐに解除されている。ソフトのプロテクトはマジコン販売業者としては死活問題である。マジコン販売業者がマジコンを売るためにロムイメージがアップロードされる側面がある以上、マジコン販売規制はロムイメージのアップロード対策にもつながると期待される。
ちなみにエミュレータ規制に関しては、ハードメーカー、ここでは任天堂が特許を取ってしまえばよい話です。

2.カジュアルコピーの現状

カジュアルコピーの現状についてはよく分かりません。しかし、マジコン規制によって不正なロムイメージがどのようにコピーされ拡散するかを考える上では欠かせない事項です。
とは言うものの、私には推測するしかできない。全員が全員アップロードサイトにアクセスしダウンロードしているのではないでしょう。マジコンやロムイメージに詳しい子がハブとして働き、コピーが出回っている場合もあるでしょう。ハブとなるほどの子の場合、マジコンの販売が規制されても、マジコンの自作、あるいはエミュレータへの鞍替えするほどのモチベーションがあるかもしれません。しかし、とりあえずマジコン買ってきて、ロムイメージは友達から、あるいはウェブサイトで紹介されているもの程度の子に果たしてわざわざエミュレータなどでプレイするモチベーションはあるでしょうか。

マジコンの自作はあまりにも閾値が高すぎます。自作したマジコンのオークション販売についても、大量に生産することは出来ないし、ヤフオクでは業者を問わず 「マジコン」出品禁止のお知らせ がなされている。ここまで来るとまったくカジュアルではない。

3.販売の多様化

何のためのマジコン販売禁止なのだろうか において、wiseler さんの主張に関連して、以下のようなエントリがある。

ユーザーがより便利な方法で、より安く価値を得ようとするのは至極当然

その通りではあるのだが、だからと言ってロムイメージをアップしても良い理屈にはならない。
マジコンには、ソフトを入れ替えなくてもすむという利点がある。確かに、この点に関しては現行のゲーム機は不便である。ダウンロードコンテンツは存在するが、新作ソフトはDVDなどで発売される。今すぐ任天堂はソフトを入れ替えなくてもプレイできるようにすべきだ、とは言わないがユーザーの不便に目をつぶるのはビジネス上よろしくは無い。しかし現状では厳しいだろう。その理由をいくつか述べてみる。
先ず、ソフトを入れ替えなくても様々なゲームをプレイできるようにするには、ゲーム機本体あるいは外部メモリにダウンロードするという形態が望ましいだろう。これは、既に現行のゲーム機では可能であるし、ソフトのダウンロード販売も行われている。しかし、この販売方式を新作ゲームで行うのはまだまだリスクが高い。それは広告的観点において特に。先ごろドラクエ9の発売日が延期されました。ゲームソフト屋をはじめ、コンビニも大体的に予約キャンペーンを行っていました。小売店としても、たくさん売れるソフトだけに力を注ぎたいのでしょう。さて、このドラクエ9をダウンロード販売に限定するとどうなるでしょうか。小売店に掲げられたのぼり等は見られなくなるでしょう。ダウンロード販売により中抜きは可能になりますが、それだけ売れて欲しい人間が減る以上、どうしても露出が減ります。つまり、潜在的な広告効果が無くなってしまいます。
また、ゲームソフトをダウンロード販売できてもゲーム機本体は小売店で販売しなくてはなりません。ゲーム業界において小売店にしわ寄せが来てソフトを売ってもたいした儲けにはならないとは言うものの、ソフトがダウンロード販売だけされ小売店自身にほとんど旨みの無い代物を売ってくれでしょうか。その点、アップルは自社でも販売しているのが強みなのかもしれません。
ダウンロード販売が難しいならば、PCのようにゲーム機本体にソフトをインストールする方法も考えれますが、本体にインストールしてからソフトを売られる可能性がある。この時、中古市場は大打撃でしょう。そこで、ソフトをレンタルする方法も考えれますが、その場合ユーザー的にはダウンロード販売してくれよという話。

ゲーム機自体がどうなるかは分かりませんが、将来的には全てのソフトがネット認証になるのではないでしょうか。特にレンタル形式の場合、認証をその期間だけ買うというのもありかもしれません。

まとめ的な何か

マジコンとエミュレータではプレイできる環境も違うし、エミュレータの方がプレイするためのステップが多いため、マジコン販売規制→エミュレータに流れるとは言えない。というわけで、マジコン販売規制により不正コピーの状況や損害が悪化するという主張は大きな疑問である。
また、メーカーとしてもマジコン販売規制だけではなく、違法アップロード、ロムイメージのダウンロードの対策に取り組んでいる。もちろん、ユーザーに不便を強いるコンテンツは衰退するので、メーカーもダウンロード販売や、ネット認証などを模索しているだろう。
というわけで、何のためのマジコン販売禁止なのだろうか において、wiseler さんは「マジコンを販売規制すると、不正コピーの状況・被害は悪化する」ことへの根拠をより具体的に説明していただきたいところ。

はてブにコメント

  • id:wiseler
    • 「マジコン販売業者がマジコンを売るためにロムイメージがアップロードされる側面」の根拠は?
      • マジコン販売業の元締めはどこでしょうかという話。無関係でも、エミュレータはビジネスになりえないので、元締めがどこかというのはたいした問題ではない。だから「側面がある」と書いてるわけで。
    • 非合法化するから悪化
      • 良く分かりません。今回の判決は販売指し止めですので、非合法化ではありません。マジコン自体が非合法化するとは思えませんし、非合法化した時点でカジュアルではない。wiseler さんのいう中高生が非合法化の餌食になるという主張も疑問符です。餌食になるのだとしたら、それこそ大体的に規制キャンペーンが可能であるといえるでしょう。禁酒法を例に挙げられておりましたが、どちらかというと未成年者の喫煙や飲酒にの方が近いかなとも感じております。
      • また、被害が大きくなることを説明できませんね。
    • というか、マジコン販売禁止は緊急避難だと思う に「なるほどー」とコメントしてる暇あったら自分の言いたいことを書いてください。

再反論が上がっていたのでメモ書き程度の追記

本件は任天堂DSのマジコンの話なので、それ以外の家庭用ゲーム機のエミュレータに関しては除外。PSPならツールを使いロムイメージで遊べる云々は考えない。SCEIだってバカではないので対策はしている、とはいってもいたちごっこだが。
マジコン販売規制と不正コピーの問題が個別の問題なのはその通りだが、混同している人は多くは無いと思われる。反論者が混同したように見えるのは、wiseler さんがマジコン販売規制→不正コピーの状況被害が悪化すると書いたからではないか。マジコンの販売を規制できれば、少なくともマジコンの大衆化、拡散を抑えることが出来る。マジコンの大衆化を抑えれば、不正コピーでゲームをすることは恥ずかしいことになるとも期待できる。消費者が任天堂に利益目線で考えるのはおかしいが、不正コピーの氾濫で任天堂やソフトメーカーが潰れてしまうことは消費者にも不幸である。よって、良い落としどころを模索するのが良いだろう。
後、全体的にwiseler さんがアマチュア開発を擁護したい理由が良く分からない。僕自身も、アマチュア開発者がこそこそ作っているなら問題ないと考える。マジコンが違法になったら、アマチュア開発者の道が閉ざされるというが、マジコン販売規制が、マジコン開発の違法化につながるとは思えない。本件は不正競争防止法であり著作権やその他の話ではないからだ。またライセンス云々の話は、アマチュア開発者がソフトを流通したい場合の問題だろう。個人で作って、仲間内で遊ぶ程度ならハードメーカーもたいした影響が無いので目をつぶるだろう。しかし、アマチュア開発者が作ったソフトを流布させる場合はハードメーカーも黙ってはいないだろう。ハードメーカーのイメージもあるし、不具合なども懸念される。また、ソフトメーカー的には目障りな存在かもしれない。別に開発する権利は奪わないが、流通させるならライセンス取れという話なんだと思いますが。