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第8回 旧スクウェアゲーム音楽を語る 「音楽でシンクロさせるファイナルファンタジー5」

前回からずいぶん間を空けてしまいました。

はじめに

ゲームソフトは1992年12月6日発売で、9,800円(税抜き)。1998年3月19日にPS移植版が、2006年10月12日には追加アビリティやダンジョン等が加わったGBA版が発売された。
FF3のジョブシステムをさらに発展させたアビリティシステムを軸とし多彩な戦術を組めるため、今も尚低レベルや特定ジョブクリアなどの様々なやり込みプレイがなされている。個人的には、システム面ではシリーズで一番好きです。全員が同じジョブになれることから無個性だと言われがちですが、キャラごとのジョブの絵を見るとそれぞれのキャラにあった衣装を身に着けていることが分かります。クルルの着ぐるみバーサーカーとか、ファリスの踊り子など。
ストーリー自体はキャラクターが少ないためFF4よりも複雑ではないが、表現力はアップしておりドット絵ながら多彩なアクション、漫画的吹き出し、大きな建物をカメラ移動で表現したり、SFCの拡大縮小機能などの試みが行われている。特にエンディングでの飛竜の演出は本当に飛んでいるようで、そしてこれがFF6の飛空艇につながるとは当時は思いもしませんでした。

サントラは1992年12月7日にNTT出版より発売。販売元は、アメリカーナ・レコード。スクウェアのサントラとしては恐らく初の2枚組み。値段の関係から1枚組みにしたかったそうですが、50曲ともなると流石にそれは無理だったようで。個人的には、これまでのサントラに比べ一曲が2ループ半と長くなったのが嬉しかった。冊子には植松さんと天野さんの対談が収録されています。植松さんのゲーム音楽観から、共にゲームのテーマをイメージさせるための音楽や絵という話がなされています。読み返して心に響いたのは植松さんの以下のつぶやき。

いま小学生くらいの年頃の子供たちが大学生くらいになって同年代のヤツらと話してて、「そういえば子供のころファイナルファンタジーってやったよな」って、そういう話とかでるといいですね。

今こうやってFF5の音楽について語っているのも何かの縁だなぁと。まぁ、大学すら卒業してもFFやってますが(笑)。

外せない「ビッグブリッヂの死闘

ビッグブリッヂの死闘」はFF5で、いやFFシリーズを通して外せない曲でしょう。人気の高い楽曲でゲームではPSP版のFF1の追加要素、FF12のおまけイベント、最新作のディシディアでも使用され、CDとしてはピアノコレクションや The Black Mages にアレンジバージョンが収録されている。ゲーム音楽同人界隈でも人気が根強く多くのアレンジバージョンが存在する。人気は根強いが本人曰く「あと一曲外さなきゃならんかったらビッグブリッヂを外していた。ただのアルペジオ(アルペッジョ)の連続なのに」とのこと。アルペッジョとは和音を構成する音を一音ずつ低いものから順番に弾いてゆくことで、リズム感や深みを演出する演奏方法である(参考:アルペッジョ - Wikipedia)。
イントロは階段状の音階を繰り返し、聴くもののテンションを徐々に上げ、それが終わると疾走感に満ちたメロディーが始まる。終盤の音階が連続的に下がる部分の後は行って戻ってを繰り返し、息を落ち着かせたかと思うと再度翔け始める。まさに、ビックブリッジを疾走しているような曲だ。
初めて聞くのは曲名通り(?)のビックブリッジ*1であるが、実際はギルガメッシュのテーマである。二度目はゼザの船団上。エクスデス城のバリアを破壊するため船団を率いてバリアの塔に向かうが奇襲を受ける。その際に「ビッグブリッヂの死闘」が流れ、ギルガメッシュとの再戦を予期させる。戦うたびに敵ではあるが憎めないキャラクターであることが分かって来るが、三度目はエクスデス城ではあまりの使えなさにエクスデスにより次元の狭間に飛ばされてしまう。これで永久にお別れかと思いきや、なんと本当に次元の狭間にいるというオチ。そして、ギルガメッシュを語る上で外せないのがやはりネクロフォビア戦。エクスデスの最後の刺客であるネクロフォビアだが、苦戦するバッツたち。そこに颯爽と登場するギルガメッシュ。ボス戦闘音楽から「ビッグブリッヂの死闘」へ曲が変わるのは熱すぎる展開である。

落差による心情のシンクロ

FF5は前作のFF4に比べるとストーリーが弱いと言われますが、音楽によるストーリーの盛り上げ方はFF4よりもさらに進化している。これは音楽だけでなく、表現力自体が向上しているからできることだろう。FF4に比べ曲数が増えたことからも、場面に合った音楽の使い分けがなされている。先のネクロフォビア戦における「ビッグブリッヂの死闘」の使い方もシンクロである。また、プレイヤに危機感を与える曲として「急げ!急げ!!」と「危機一髪!」、「脱出!」の三つもあり、それぞれ使い分けがなされている。「急げ!急げ!!」は曲自体は短く単純ですが、単純ゆえに、そしてテンポの速さで本当に急かされます。特に急かされるのは、カルナック城の脱出。宝箱をとりさらにデスクローをラーニング、可能ならばエアロもとなるとかなり急がされてしまいます。

シンクロ率が高い例として「オープニング」を用いて説明してみましょう。
ゲームは夜明けの城と共にスタートします。日が徐々に昇り明るくなると、画面は飛竜が羽を休めるバルコニーへと移動していきます。その際に流れるのがタイトル通りの「オープニング」。イントロは朝の目覚めを感じさせる幻想的な立ち上がりです。飛竜が羽を大きく広げ鳴き声をあげます。この飛竜の声はクロノトリガーの作曲をした光田康典が担当しました。レナとタイクーン王との会話から今後の予兆が示唆され、それに合わせるかのように曲調も不穏なものへと変化していきます。王が飛竜で飛び立つと場面は海賊船に。ドーンという音がさらなる不安を煽ります。海賊の長であるファリスの髪が風でたなびいていますが、突如風が止まってしまいます。何やら良くないことが起きそうな曲調と共に、場面は風の神殿のクリスタルへ。曲が速くなり不安から焦りを覚え、そして王の目の前でクリスタルが砕け散る。この際「ドーン」という音が三度なりますが、一度目はクリスタルが砕けた音、二度目以降は王の衝撃を表現しているかのようです。最後は主人公であるバッツとボコが森で休んでいるシーンへ。曲調がメインテーマをベースとした牧歌的な雰囲気に変化しますが、曲が終わった途端に空から隕石が降ってくる。SFCの拡大や回転を使った効果は当時ではびっくりしたものです。こうして、バッツたちの物語が動き出します。
オープニングの最後はフィールド音楽へ通じます。フィールド音楽も、その使い分けによりプレイヤの心理を巧みに操っています。フィールド音楽は世界の数に合わせて三つある。第一世界のフィールド音楽は「4つの心」で「ファイナルファンタジーVメインテーマ」のアレンジとなっています。「4つの心」の主旋律はまるで歩くかのような、そして裏で鳴る太鼓の音は踏みしめる大地を表しているようです。まさに、冒険にふさわしく曲名が「4つの心」で4人で旅をするんだ、という思いが篭っているようです。
第二世界のフィールド音楽は「未知なる大地」。これもテーマ曲の編曲ですが「4つの心」とは逆で暗い雰囲気。最初に聞くのは第二世界に入りビックブリッジ後にエクスデスにより辺境の地に飛ばされた後。飛ばされるまでのイベント展開が怒涛で熱いため、そこで使用される曲もアップテンポな曲が多い。そのため辺境に飛ばされた途端に静かな「未知なる大地」を聞くと落差により心が沈み込む。右も左も分からない場所で感じる悲壮感にマッチした曲です。イントロは悲壮感漂うのですが、ずっと聞いていると美しい曲だなと気づかされます。この美しさは第二世界の自然、特に森を表現しているようです。最後の方はなんだか希望を感じさせる仕上がり。勇ましさはありませんが、世界の綺麗さを表現する上では素晴らしいフィールド曲です。
第三世界は「新しき世界」。第三世界に着いた直後は「4つの心」がフィールド音楽のままですが、タイクーン城が次元の狭間に吸い込まれた後に「新しき世界」へと転じます。これは、最初バッツたちは自身の世界に戻ってきたと思っていたため最初は「4つの心」が流れ、イベント後はまさに新しい世界だったことに気づくからこそ「新しき世界」へと変わるのでしょう。勇ましく軽快な「4つの心」から静かで幻想的な「新しき世界」へのギャップは大きく印象的です。
フィールド曲の使い分けだけでも、バッツ達とプレイヤの心情をシンクロさせることができる。そして、そのポイントは落差。安心と不安を繰り返すことが徐々に希望につながっているかのようです。またイベント要所で「ファイナルファンタジーVメインテーマ」を使用することで、プレイヤの心を盛り上げる手法も多用されています。例えばバッツとレナとガラフの3人が風の神殿に向かうことを決めたシーンや、第一世界の最後でガラフたちの世界へ旅立つ時など。バッツたちの、またプレイヤの先は見えないが一歩前に踏み出そうとする勇気を後押しするかのように鳴り出す「ファイナルファンタジーVメインテーマ」が、バッツたちとプレイヤの心をシンクロさせます。

FF5の曲はアイルランドとこだわりの音源 そして光田康典

FF5は曲数が増えたことで、特定のイベントやダンジョン専用の曲も増えました。「おれたちゃ海賊」、「大森林の伝説」、「タイクーン演舞曲ヘ長調」、「はるかなる故郷」や「想い出のオルゴール」などなど。特に、バッツが自信の故郷に戻りかつて住んでいた家にあるオルゴールを聞きながら家族、特に母親のことを思い出す際に流れる「想い出のオルゴール」は涙を誘います。哀愁漂う曲であり聴いていると視界がセピア調になったように感じます。ぜんまい式なのか最後はだんだんと曲がゆっくりと、それと同時に母親が倒れるという演出は感動せずにはいられません。曲だけ聞いても切なくなります。ちなみに、かつてのバッツの家には吟遊詩人がいるのですが、「想い出のオルゴール」を聴いて思いついた曲が何故か「誘惑の歌」。なぜだ。アレンジバージョンでは最初オルゴール調だったのがオーケストラに変わるのですが、その変化が自然で変わったと気づいたときに驚愕します。
曲の音の演出といえば、「タイクーン演舞曲ヘ長調」では、バッツとクルルが城の外に出ると音が小さくなるというちょっとした演出がきらりと光りますね。

FF5の曲の特長して上げられるのが民族音楽的、特にアイルランド調の曲が多いことでしょうか。これは、FF4のアレンジバージョンであるケルティックムーンにおいてケルト音楽に触れたことが植松さんの作曲に大きな影響を与えたのかもしれません。先に挙げた「はるかなる故郷」なんてまさにですね。バッツの生まれ故郷であるリックス村の音楽です。懐かさを感じさせつつも、故郷にいるのに遠い情景を思い浮かばせる不思議な曲。リックス村はバッツの故郷ではあるけども帰るべき「家」はない。だからこそ「はるかなる故郷」なのだろう。「ハーヴェスト」はバグパイプなのでスコットランド調。こちらは、イントロの手拍子からして踊りだしたくなるような陽気な曲です。「ハーヴェスト」を聞くと、第二世界のバル城北にあるケルブの村を思い出します。宿屋で自慢の料理が食べられ、全快してポーションまで貰えますが…。

FF5の曲のもう一つの特徴が、音源への挑戦。音源への拘りはやはりサウンドエンジニアに光田さんがいるからでしょうか。特徴的な音源としては「古代図書館」のギロでしょうか。スネアが左右に振れ、右耳ではギロの「ギーコ」という音、左耳にはメトロノーム(?)の軽い音が鳴り響く。薄暗く先が見えない本だらけの海を彷徨っているような妖しさの光る曲です。
ロンカ遺跡などで流れる「ムジカ・マキーナ」も音源への拘りが見られます。ラテン語で機械の音楽という意味だけあって、鉄と鉄とが打ち付けあうような音をベースにサイレンが鳴り響き、細かな破裂音が駆け巡る様は電気がスパークしているようで、まさに機械的な曲です。機械をイメージさせながらも、何故だか有機的な不安定さを兼ね備え、生きた機械をも連想させます。
その他FF5特有だなと思う曲は封印城クーザーなどで流れる「封印の書」、ピラミッドなどの「古き地の眠り」。共に幻想的でオリエンティックな雰囲気中に不安、不思議さを感じさせるファンタジーに相応しい曲です。これらのFF5の音源に拘り、そして異国を感じさせる主旋律はエクスデス戦の音楽である「決戦」にも通じる。イントロは不協和音から始まり地響きを思わせる音がエクスデスの強大さを表現しているようだ。地響きが終わると脳内を駆け巡る妖しげな音とともに静かでゆっくりと対峙するかのようなメロディーが、そして曲は徐々に重々しく変化し再度地響きが始まり曲が繰り返していく。地響きが一種のトランス状態へと導くかのようだ。
次元の狭間で流れる「虚空への前奏曲」はプレイヤに孤独を与える曲です。「ゴー」という風のような音は空間の不安定さから来るようです。「ムジカ・マキーナ」のような機械的な雰囲気を含みつつ、「古代図書館」の先の見えない不安感を感じさせます。さて、音源への拘りや曲内への効果音の組み込み、また民族音楽風の曲調はこの後クロノトリガーを作曲した光田康典の原点となったとでも言うべき曲群ではないでしょうか。

最後に

植松さんといえば女性曲。本作だと「レナのテーマ」。やさしく落ち着きのある曲です。レナの心の優しさを表現しているようで、心が温かくなります。また、その温かさは森の木漏れ日のようで、全体的に森をイメージさせます。FF5には森そのものを表現した「大森林の伝説」、「未知なる世界」など森をイメージさせる曲が多い気がします。
全体的にシリアスな曲が多いですが、「モーグリのテーマ」などコミカルな曲もある。「モーグリのテーマ」としてはFF5が初となります。チョコボのテーマは、本作だけ「ボコのテーマ」と固有名詞となっている。特にコミカルなのはやはり「マンボdeチョコボ」。チョコボのテーマのマンボ版。「ウッ!」という掛け声と共にコンガとギロが軽快なリズムをきざみます。ゲームの発売に先駆けて「マンボdeチョコボ」が収録されたシングルCDが発売されているのですが、パッケージがマラカスを持った植松さんとなっております(参考:GAMERS EDEN ファイナルファンタジーV マンボdeチョコボ)。

FF5は前作に比べ曲数が増えたことで、曲の使い分けができるようになり、効果的な曲の挿入ができるようになった。「メインテーマ」のように同じ曲を使い印象付けたり、フィールド音楽を使い分けたり、「オープニング」のように曲と場面を一致させたり。バッツたちと曲を合わせることで、プレイヤとのシンクロ率を高める演出となっています。例えば、「離愁」は別れの哀しさを引き立てます。特にガラフとの別れの際に流れる「離愁」には特別な意味がこめられているような気がします。

さて、気になる次回は下地が整った所でFF5と同時期に発売された「半熟英雄」を紹介できたらな、と考えています。

*1:ゲーム中の舞台は「ビッグブリッジ」だが曲名は「ジ」ではなく「ヂ」。FF12崎元仁がアレンジした際の名前は「ビッグブリッジの死闘」で「ジ」。