虚構新聞騒動とは何だったのか

橋下市長、市内の小中学生にツイッターを義務化はてな界隈を中心に物議を醸した。嘘とネタに関する話題といえば 「ゲーセン少女」が人を激昂させる理由 - 未来私考 などが記憶に新しい。駄文にゅうす 『嘘を嘘と見抜けないと難しい & ネタにマジレスかっこ悪い』の名言も過去のモノとなりました

本稿は まなめはうす の5月15日から21日にかけまとめられた虚構新聞に関連する話題を中心に私の述べたいことをまとめてた。

2ちゃんねるまとめサイトを中心に流れを追う

同じスレのまとめでも、サイトによって微妙にまとめ方が違うのが面白い。

5月14日 記事投稿からお詫びで火に油をそそぐまで

橋下市長、市内の小中学生にツイッターを義務化 に端を発し、ネット上(主にはてな界隈)で虚構新聞のあり方について多くの反応が見られる。「虚構新聞」リテラシー議論の時系列(1日目) を追うと、記事が発表された5月14日だけでも目まぐるし流れである。同日中に虚構新聞Twitterアカウントにて以下に示すお詫びを掲載するも、火に油を注ぐ結果となった。

【お詫び】本日付記事でネット界隈をお騒がせしたことをおわび申し上げます。現実にありえないことをお伝えするのが本紙のポリシーですが、今回非常に多くの方から「橋下氏ならやりかねない」と思われたのが最大の誤算でした。今後はもっと現実離れした虚構報道を心がけます。申し訳ありませんでした。

5月15日 ニセモノとひろゆき登場

15日には記事中に嘘と書きちらしたヤケクソのような 虚構新聞デジタル:「書店にレモン仕掛けた」 京都、6800人が避難 を更新。同日、【お詫び】虚構新聞の更新を一時停止します。大きくなりすぎました。 なる嘘記事がアップされ 虚構新聞が更新停止? 嘘ニュースの応酬にTwitter大荒れ となったため、虚構新聞Twitterにて更新停止の予定はないとアナウンスする。

【編集部】本紙「虚構新聞」が更新停止との情報が一部飛び交っているようですが、その予定はなく、現在も取材活動はおこなっています。賛否はあるかと思いますが、今後も通常通りの更新を予定しております。


ちなみに上記のブログ以外にも、日常的に虚構報道か 虚構新聞に捜査当局が重大な関心 FBI やインターポールも - 世界はあなたのもの。UnNews:虚構新聞社が社名を変更―来月より『予言新聞』に - アンサイクロペディア らが虚構新聞の騒ぎに乗っかり嘘ニュースを配信している。


また、ひろゆきが以下のようにツイートしたことでも騒ぎはますます盛り上がる。

虚構新聞を「騙された!」って非難してる人って、「自分は読解力の無いバカです」って公言してるようにしか見えないけど、恥ずかしくないのかな?

騒ぎはなぜ広まったか

虚構新聞の騒ぎはなぜここまで大きくなったのだろうか。大きく二点の問題があったと考えられる。一つは、虚構新聞が騒ぎになりやすいネタを取り扱ったこと。もう一つはTwitterなどで話題が拡散しやすくなったこと。

発狂トリガーは諸刃の剣

大きな騒ぎになった要因は ブログはどこまで嘘をついていいのか で述べられるように「橋下徹」が発狂トリガーだからであろう。発狂トリガーとは「石原都知事」「南京虐殺」「従軍慰安婦」など、話題にするだけで発狂したかのような反応が見られるキーワードのことである。発狂トリガーはPVを稼げるものの炎上しやすい。そのため取り扱いが難しい。発狂トリガーを用いて嘘やネタを扱えば慎重に慎重を期しても火傷では済まない危険を伴う。

虚構新聞「橋下」「維新」も不可 政府、ツイッター規制語リストを公表 などを読むに、社主も「橋下徹」が発狂トリガーであることは認識していたようだ。だから敢えて橋下市長をネタにしたのだろう。しかし、問題となった記事は 虚構新聞は「文脈」足りうるのか虚構新聞は風刺サイトじゃないよね で語られるように「虚構新聞であること」でしか嘘だと判断できる要素がない。嘘ニュースが嘘だとわかりにくかったのも、騒動が大きくなった一因だ。嘘と判断できるポイントは、以下に引用した「はい論破」くらいだろうか。ダンガンロンパくらい書いておけば違ったかもしれない。ちなみに、Twitterはかつて13歳未満の利用を規約で禁止していたが、現在その条項は無いため、「小中学生にツイッター」からも嘘だと断定できない。

橋下氏は「あきれるほどの机上の空論。識者とかいう連中は政治の現場を分かっていない。よって批判する権利などない。はい論破」と、学者相手に用いるいつものレトリックで反論した

複雑化する優越感ゲーム

騒ぎが多くなったもう一つの要因は、虚構新聞に関わるレイヤーが複雑だからである。

そもそも虚構新聞って、記事のリンクを開いて虚構新聞だったときのガッカリ感、逆に「これは虚構新聞だろう」と思って開いて本当にそうだったときの勝ち誇った感を味わうような、僕と読者との一種のゲームだったのですよね。

確かに、最初は虚構新聞と読者によるゲームであった。騙せたら虚構新聞の勝ちであり、騙されなかったら読者の勝ちだ。
しかし、虚構新聞が知れ渡るにつれ虚構新聞を知っていることが攻略法となって行く。その中で、虚構新聞に騙された人を肴に楽しむ風潮が生まれる。パロディサイトの「Twitter義務化」に騙される人続出中 / ネットユーザー「やめとけ」「ありえねえだろ」 のように2ちゃんねるやそのまとめサイトなどで見られる「Twitterはバカ発見器」や、「バカッター」などは騙された人を消費する楽しみ方である。
一方で虚構新聞の記事をよくできた、ありそうな嘘として楽しむファンもでてくる。虚構新聞現代日本におけるもっとも優れた知性のあり方 (一部抜粋)とツイートする茂木健一郎もその一人であろう。


ネタにマジレスしているからと言って必ずしもネタに騙されているとは限らないのがインターネットの怖いところだ。はちま起稿の記事である、<なぜ未だに『虚構新聞』の記事にマジレスする人がいるのか・・・「橋下市長、市内の小中学生にツイッターを義務化」記事に騙される人たち(http://blog.esuteru.com/archives/6212964.html)>が削除されたのも、虚構新聞にマジレスする遊びによるものだ。その経緯が 【私的記事】虚構新聞を真に受けるネットリテラシーの低さ【ちゃんと嫁】|ロブスター速報@VIP などにまとめられており、以下に箇条書きする。

  1. はちま起稿が虚構新聞の記事に対してマジレスしているTwitterユーザーの発言のキャプチャし記事を掲載する。
  2. マジレスは虚構新聞に釣られたふりをしたものであった。キャプチャされたユーザーがはちま起稿へその旨を伝える。
  3. はちま起稿が該当ユーザーをキャプチャから黙って削除し、修正した画像をアップする。
  4. 該当ユーザー周辺が盛り上がってはちま起稿が記事を削除する。


マジレスをして釣る遊びはメタ構造である。メタメタしいと表現したい。虚構の意味知ってる?とか言ってる奴は人の話を聞いた上で死ね で代表されるように虚構新聞に対して苦言を呈すると「虚構新聞に騙されて口惜しいのだ」という前提に立たされる。「くやしいのうくやしいのう」とはだしのゲンから借りてきたコメントが見受けられるが、これらのコメントはブログ筆者を煽りたいだけでブログの中身はどうでも良いと考えている可能性もあって非常にメタメタしい。


さらには、虚構新聞に関する記事評価したり、スタンスを分類したりする遊びもある。切り込み隊による 試される虚構新聞 などはその典型であり、代表的な意見を鋭く切り込んでいるが、遠くから対岸の火事を眺めるネットウォッチそのものである。虚構新聞に関してポジショントークする人々の16種類の本音虚構新聞に云いたいことは特にないけど俺もいっちょ噛みしたいです!虚構新聞に関わる複雑なレイヤーを解きほぐしているが、書いた本人たちのスタンスはなんか楽しそうだから参加してみたである。

ちなみに私のスタンスは幽遊白書の仙水のセリフを借りるとこんな感じ。
「ふと 優越感ゲーム を思い出してしまった…… オレはね 散々反応が出てヲチも終了しかかった頃に記事を書き始めるんだ 読まなければいけない記事は100くらいかな… オレは全然ダメージを受けない しかしオレの記事は誰にも相手にされずせいぜい30ブクマくらいしか得られないんだ 妙な優越感を覚える反面ひどく虚しくなる 今丁度そんな気分だ 長くなってすまなかったな」

虚構新聞を取り巻く問題は情強を気取る 優越感ゲーム なのだ。虚構新聞が仕掛けたゲームの行方 で評されるように、強制的にゲームに参加させられる優越感ゲーム。参加したくない人にとってはクソゲーそのものである。クソゲーに参加したくない人々には、【やじうまWatch】 便利? それとも無意味? 虚構新聞にアクセスすると通知するスクリプト ほか にて紹介されている 虚構新聞にアクセスすると通知してくれるuser.js嘘ニュースチェッカー を導入するのもありかもしれません。

虚構新聞を取り巻く状況

誰が迷惑を被ったのか

今回の虚構新聞の記事で迷惑を被ったのは誰か。しばし、騙された人が議論の俎上になるが、迷惑を被ったのは、他でもない橋下市長だ。騙された人に関しては後述するが、虚構新聞の件をデマ扱いするのは納得できないというお話 の文末で語られるように本件へ正当に文句を言えるのは橋本市長や大阪市くらいだ。
虚構新聞の「橋下徹市長、市内の小中学生にツイッター義務化」ネタについて では虚構新聞の記事に反応し橋下市長のTwitterアカウントへ@を飛ばしたツイートを確認している。仮に大阪市役所に電話が殺到した事態になれば、実害が発生しており、最悪の可能性としては威力業務妨害にもなり得るだろう。

記事にされた「橋下徹」は発狂トリガーであり、燃えやすいキーワードである。「Twitter」もまた発火しやすい話題である。2011年3月に虚構新聞4月から、17文字に ツイッター なる記事をアップした際は、Twitter公式ナビゲーションサイト「ツイナビ」 が言及する次第となっている。ただし、Twitter側が虚構新聞に何らかののアクションをした事実は確認できない。

ツイッターが4月から17文字になると聞いたんですが本当ですか?」という問合せをいただいておりますが、こちらは虚構新聞という嘘のニュースをあくまでネタとして流すサイトの記事です http://twme.jp/tnav/00TT 念のためお知らせしておきます。

騙された人は迷惑を被ったのか

迷惑を被ったのは橋下市長である。では、虚構新聞の記事に騙された人々はどうか。
虚構新聞の偽記事「橋下市長、市内の小中学生にツイッターを義務化」にだまされて怒ってる人たち のように「橋下市長が嫌いな人とお子様が盛大に釣られています」とわざわざまとめるスタンスは下衆い。ヲチをするならヲチ対象に気付かれないように影で笑っておけと(これも大概下衆い)。虚構新聞に騙された人を笑うモラルのない自称“情報強者”たち とまでは言わないが、騙された人々を大勢で指をさして笑うのはやり過ぎだ。騙されたことは恥だ。しかし、恥を感じる度合いが高すぎると素直に恥を認められないのが人情というものだ。騙された反応をまとめる行為は恥を感じさせる度合いが高すぎる。

騙されたのを笑う行為は下衆い。では、騙された人々は擁護されるべきか。騙される方も悪いのだとは言わない。正邪の話をすれば騙したほうが悪いのだ。
一方で、メディアを面白くなくさせる奴等 のように強い口調は使いたくないが、クリックすることもなく見出しだけ見て広めた人は擁護されるべきなのか。もちろん、虚構新聞騒ぎを横目で見つつ思うこと で指摘されるように広めた人が悪いわけではない。虚構新聞の「橋下徹市長、市内の小中学生にツイッター義務化」ネタについて における虚構新聞の記事を信じて橋本市長のアカウントへ@を飛ばした人を全面的には擁護できないだろう。また、小中学生が騙されたのだから問題だとするのも違うのではないか(参考:そもそも、大人や子どもに関係なく、現実に脅威とならない限りで、不安を与えること自体が、社会的に広く容認されています。)  


さて、今回の虚構新聞の記事に騙されたままの人々はどれ位いるのか。これに関しては集計が難しい。虚構新聞騒動関連で調べた事を書いておくよ から判断するに比較的短時間で虚構新聞の記事は嘘だと気づいた人は多いのではないか。間違いに気づいた人がいるから虚構新聞に対して怒っている人が観測できるのだ。気づいてない人でも、殆どの人は数日経つと忘れてしまうのではないだろうか。

「嘘を嘘と〜」「ネタをネタと〜」「ネタにマジレスカコワルイ」は免罪符にならないよ

虚構新聞に限らず、ネタにマジレスする人、怒る人、そのまた周りで騒ぐ人 〜オムライス系女史江川紹子さんの場合〜 - Togetter などようにネタにマジレスをしてる人にたいして「ネタをネタと〜」を返す人がしばし見受けられる。大体はバカにしているわけだが、ネタをネタと見抜く必要もないし、ネタとして楽しむ必要もないからマジレスしようぜ

そもそも、ひろゆきの「嘘を嘘と見抜けないと難しい 」とは文脈として2ちゃんねるを指しているし、しばしこの言葉は「ネタをネタと・・・」と改変されるが嘘とネタは同じではない。また、これらの言葉は嘘を吐いたり、ネタを展開した際に生じた問題を正当化する免罪符とはならない。「嘘ですから」は他者発言の捏造の免罪符にはならないよ:ekken
そもそも、「嘘を嘘と見抜けないと難しい」はソース原理主義を指す言葉であり、2ちゃんねるはソース原理であったはずだ。しかし、昨今は2ちゃんまとめサイトをを中心にソースロンダリングが行われるなど、ソース原理主義など、どこ吹く風という状況だ。

ネタにマジレスかっこ悪いも2ちゃんねる内の流儀にすぎない。2ちゃんねるふいんき(なぜかグーグルIMEパッドでは変換できる)をどこにでも持ち込むべきではない。ローカルルールをネット全体に当てはめるのは井の中の蛙だ。

虚構新聞リテラシーは身につくか

今回の虚構新聞の記事は、虚構新聞であることでしか嘘と判断できる基準がない。虚構新聞やそれを擁護する人々はリテラシーを学べるとしている。あるいは、『虚構新聞』を責めるよりも、自分のネットリテラシーを上げることを考えよう虚構新聞をきっかけにリテラシーを上げよとする意見もある。

一度虚構新聞に騙されれば次から虚構新聞の記事は嘘と判断できるだろうが、虚構新聞のみによって「ネットには嘘の情報もあるから真偽を自分で確かめよう」と考えるだろうか?虚構新聞だけでは情報のソースに当たり真偽を確かめる術などは身につかない。なぜその情報が発信されたか、発信された意図を読み取ろうと考えない。それらが自力でできる人は元からリテラシーが高いのだ。虚構新聞でメディアリテラシーが養われるとか聞くけど、あれで本当にメディアリテラシーが養われた人はいるのだろうか。

虚構新聞で身につくのは、次から虚構新聞の記事と判断できるようになるだけだ。自分は騙されないと思っているほど騙されやすくなる。虚構新聞に思うこと で語られるように属人性によってのみ情報の真偽を判断するのはリテラシーが高いとは言えない。狼少年だから嘘を吐いていると判断するのは危険だ。本当に狼が来るかもしれないのだ。

そもそもリテラシーとは何か。総務省|放送分野におけるメディアリテラシー によると以下の3つを構成要素とする複合的な能力のことである。

  1. メディアを主体的に読み解く能力。
  2. メディアにアクセスし、活用する能力。
  3. メディアを通じコミュニケーションする能力。特に、情報の読み手との相互作用的(インタラクティブ) コミュニケーション能力。

つまり、「ちゃんと読めば分かるだろ」と言う人が、その相手の文章はちゃんと読んでいない問題:ekken虚構新聞に言及したらコメント欄に文盲が湧いて「騙されて悔しいんだろwww」とか云い出した記事まとめ のように、文章を録に読まずに虚構新聞に苦言を呈しているから「虚構新聞に騙されて口惜しいのだ」としコメントするのはメディアを通じコミュニケーションする能力がなく、リテラシーが低い。また、同様に騙された人を揶揄する人々も同様にリテラシーが高いとはいえない。リテラシーが高い人は騙された人がいたならば、恥をかかせず嘘だと気づかせなおかつリテラシーを高めることができる人だ。これが真の情強。そういう人になりたいものです。

虚構新聞社主の認識の甘さ

本当に実害はないのか

インタビューによると虚構新聞はこれまでに、記事にした対象から抗議を受けたことはないという。しかしこれは運が良かっただけではあるまいか。

偽りの情報を混ぜた記事は、一歩間違えるとクレームの嵐となり、自身が大やけどを負う禁断の果実。それでも、UK氏は「おちょくれそうなら、右も左も関係なくおちょくります」と気楽に構えており、事実、クレームの類はあまり受けていないという。

実際に、「被害があった」なんてケースはいまだにないですね。内容がアホらしすぎて、真面目に抗議してこないのかもしれません(笑)。
フィクションばかりを配信する謎のニュースサイト「虚構新聞」 その“真実”に迫る ? 中の人直撃インタビュー ? トレンド:@niftyビジネス

虚構新聞のケースではないが、あるある大辞典の捏造が問題になっていた2007年、The 男爵ディーノ捏造問題、ローカル局でも発覚 なる嘘記事を掲載した。掲載当初「ローカル局」を「佐賀県ローカル局」としたため、佐賀県唯一のローカル局である サガテレビに怒られました という事例があった。「佐賀県ローカル局はない」と釈明していたが、配慮が足りなかったのは事実であろう。

虚構新聞に関しては、ナインティナインが番組内で″ガセネタ″を放送し、話題に なった。虚構新聞である 和式便器の生産終了 318年の歴史に幕 を本当だと思った人がナインティナインのオールナイトニッポンの「リスナーの身の周りで起こったインパクトのある出来事」が採用されるも、番組中にリスナーからガセネタであるメールが届き謝罪している。スタッフが事実確認することなく紹介したことは問題である。しかし、Twitterなどで虚構新聞がデマとして広まる過程は、このオールナイトニッポンの構造と同じである。

嘘やデマが広まる原理

何故チェーンメールのような風説の流布が起きるのか で解かれるように「世の中には馬鹿な人間が3%くらいは存在するから。」なんでしょう。

虚構新聞に限らず、明らかな嘘として発信された情報が真実として拡散されることがしばしば発生する。嘘と知っていると見る気になれない嘘と、嘘と知りつつ見てみたい嘘と では 「韓国が青森ねぶた祭りの起源を主張」はエイプリルフールネタ が広まった例が取り上げられている。チェーンメールやデマは噂が噂を呼ぶ都市伝説みたいなものだろう。噂が広まるスピードが早いのであっという間に広まる。そのかわり、消費スピードも昔と比べると格段に早い。ただし、ネット上の放置されている情報が発掘され再拡散される場合もある。例えば、「虚構新聞」の事を語る前に、まず「東北大学助教授レポート」の件を考えようよ で紹介される 第28回嘘競演(23ページ) は2003年に書かれたネタだが、最近になって転載され本当にあった話として拡散されている。

どんなに嘘であると明記し厳重な注意書きをしても、無視する人や勘違いする人は必ずいる。嘘でない事実が書かれていても誤解する人はいるのだ。リンクが貼られているにも拘わらずリンク先を読まずに、あるいはリンクをクリックしたにも拘らず記事の見出しだけで中身を理解した気になる人もいる。Twitterなど広まりやすいメディアほど人目に触れる機会が多くなり、誤解しやすい人の目にもつく確率が高くなる彼らがコピーを繰り返し拡散する。コピーするだけなら良いが、例えば非公式RTする際に注意書きなどを削るなど改変を行う。つまり情報元や断り書きが消された劣化コピーが量産される。コピーが繰り返されるうちに、情報元へ辿る術が失われデマが広まっていく。(短編まとめ)金環日食にちなんだイラストがNASA撮影の写真として拡散されてしまった経緯 - Togetter があるように、参照元をよく読まない人が情報を書き換えた挙句、誤った情報を拡散するのは日本に限った話ではない。TwitterFacebookTumblrを介せば尚の事広まりやすい。


殆どのデマは、他愛もない噂話にすぎない。たわいのない嘘をつき続けるサイトがWebには必要 かもしれない。しかし、スマイリーキクチ中傷被害事件 - Wikipedia のように長い間実害を被るケースもある。突然、僕は殺人犯にされた - 琥珀色の戯言 にてスマイリーキクチによる同名の本の内容が紹介されている。スマイリーキクチは10年も以上に渡りやってもいないデマにより誹謗中傷を受け続けた。これだけ長く続いたのは、ある種の歪んだ正義感によるものだろうか。


嘘ニュースは根拠がないのでデマである。あるいはデマになりやすい性質を有している。虚構新聞的な嘘サイトに関して で語られるようにネタも誤解されやすい性質を有している。嘘ニュースやネタ書く人、紹介する人、そして感想を書く人も十分に注意して取り扱う必要がある。

かつての閉鎖騒動

虚構新聞を取り巻く状況は開設当時とは変わってしまっている。虚構新聞は変われないのだろうか。

虚構新聞楠木坂コーヒーハウス のコンテンツの一つとして運営されていた嘘ニュースを独立した形式でまとめたサイトであった。2004年8月に閉鎖騒動があり、一旦閉鎖後再スタートしている。その後2008年にに独自ドメイン kyoko-np.net を取得している。

一旦閉鎖のきっけかは、虚構新聞社:ニュース特集:虚構新聞の歴史をたどる に記されているが 2004年7月11日の 「萌え」の起源は平安年間? 『枕草子』から新たな記述発見 が事実として個人ニュースサイトを中心に取り上げられ各サイトが訂正記事を出す事態になり、続く7月16日に現在は削除された「三菱製ロボット、歩行中炎上」への批判が殺到したためである。
問題が大きくなった一因として、虚構新聞の記事が2ちゃんねるや一部のサイトへ転載されたことがある。2004年当時からも見出ししか読まない人、ソース元を確認しない人、転載によりソースが消失することが問題だったことが伺える。また、「三菱製ロボット、歩行中炎上」の記事がネタとしての際どさを超えていた点は今回の騒動と共通している。

虚構新聞は 再スタートする際に転載対策として「これは嘘ニュースです」と見出しの横に背景と同色の文字で隠しメッセージを入れ、また虚構新聞のスタンスを周知させるため各記事に *<必ずお読みください>虚構新聞社より と注意書きへのリンクをはるようになった。しかし、2012年現在と2004年とを比較すると虚構新聞を取り囲む状況は変化している。また、昨今の虚構新聞は発狂トリガーを扱った記事も多く炎上を通り越して、この際、虚構新聞を消し炭にするため、どんどん燃やす 事態も起きかねない。

フィクションばかりを配信する謎のニュースサイト「虚構新聞」 その“真実”に迫る ? 中の人直撃インタビュー によると2004年〜2007年は2ちゃんねるや個人サイトからのアクセスが多かったが、現在はTwitterからのアクセスが増えているようだ。現在多く利用されている携帯電話やスマートフォンからアクセスした場合、隠しメッセージの「これは嘘ニュースです」を確認するのは困難である。また、*<必ずお読みください> も全く目立たつ、読者が必ず読む位置にあるとは言えない。いい加減、虚構新聞はタイトルに虚構新聞だと明記しろ虚構新聞はタイトルに虚構新聞と入れなくていいけど、案内ページは正直に書け などで主張されるように虚構新聞が今後何らかの対策を施さなければ、2004年の閉鎖騒動以上の問題も起きかねない。

まとめにかえて

虚構新聞騒動雑感虚構新聞は誰でもなくインターネットに殺された。 で書かれるように虚構新聞は内輪で楽しむ段階にはない。虚構新聞の社主が言う 「僕と読者との一種のゲームだった」 状況を既に脱している。

橋下徹Twitterなど実在の人物や企業、団体を元に嘘ニュースを掲載し誤解を避ける方法は先ず無い。慎重にフールプルーフを設定しても誤解する人は生じる。人は嘘でなくても誤解するのだ。誤解を避けるのならば嘘ニュースを掲載しないのが一番である。嘘を書きたければそれなりの配慮が必要だ。ジョークサイト問題 で論じられているが、公人であっても実名でしかも顔写真を掲載するのは誤解を招きやすい。実名で他人の評判を貶めるウソ記事を書く虚構新聞の危うさ があり、実害があった場合には起訴される可能性も否めない。

嘘であると明記しておいた方が言い逃れが出来る余地がある。期待放題イノセンス など多くの人が指摘するように隠し文字や虚構新聞のロゴだけでは十分とは言えない。例えば、虚構新聞は商品ではないけども、不当景品類及び不当表示防止法景品表示法)に倣っておけば良いのではないか。*<必ずお読みください>をもっと目立つ、理想は記事見出しの横に配置し、「これは嘘ニュースです」は記事の直後に見えるように書いておけば、「嘘だと書いてあるし注意書きも目立つ位置にある」と主張できるだろう。

もちろん、そんなことを意に介さず 虚構新聞は今後も継続して「虚構」を提供し続けるべきだ虚構新聞のアレ今日知った が言うようにそのまま突っ走っても良いだろう。虚構新聞の件で意見が割れたのは線引きの問題だった ように虚構新聞にたんするスタンスが色々あるのは当たり前。それを受けて、虚構新聞が今後どのような道を選ぶかは社主次第である。

最後に

嘘ニュースに関するあれこれ は2007年に書いた記事。また虚構新聞の閉鎖騒動があったのは2004年だ。8年前ですが、ネットの現状は大きく変わっていない。

インターネットで起きる騒動を見る度に感じるのはTwitterを始めとするインターネット利用者には情報発信者であることに自覚が欠けていること。ツイッターでつぶやくということ - さまざまなめりっと でまとめられるようにツイートするってのは情報を書き残すことなのだ。まとめられて困るようなことを描くべきではない。友達と噂話をするのとは大きく異なるのだ。
Facebookなどの閉じられたSNSであっても一旦情報をアップしたら、その情報は自身の制御できないモノとなり得る。一旦記録された情報を自分が管理できると思い込むのは危険である。仮に手書きのノートであってもだ。何か事件を起こすと容疑者の卒業文集や日記が晒されるではないか。書き残すことと、口頭で述べることは全く違うことである。

また、早急に拡散すべき情報など殆どない。例えば、有名人の訃報など一日も経てばきちんと報道される。一分一秒を争って、真偽定かでない状態で拡散する話題ではない。訃報に限らず、大体のことは一日やそこらで何かしらのアナウンスがある。インターネットの登場でフットワークが軽くなったとはいえ、ウェブサービスの不具合において一時間アナウンスがないとか謝罪がないとかで激怒するのは余裕がなさすぎる。